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マスクオブデスティニー

最近の世の中は物騒である。

その例に漏れず、少年少女らの近所でも事件や事故は起こっている。とはいえ、周りは森に囲まれているため、正確には彼らの街というのが正解である。

そして彼らの周りで起こっている事件事故には、全て黒幕というものがおり、事件事故の元をたどって行くと、その黒幕にたどり着くのであった。しかしその事件事故は、新聞の小さな枠で紹介される程度のもので、ニュースや世間を騒がせるような事件にはなっていないのが現状であった。

これは、そんな黒幕のお話。




「ヴァーカがっ! ぬぁーにを抜かしとんじゃボケがっ!」

「す、すみません、親分!」

「まぁまぁ。抑えて抑えて」


薄暗い部屋の中にある円卓の周りに三人の人影がある。

一人は、椅子から立ち上がって怒鳴り散らしている、鬼の面をつけた背の低いお子様、


「誰がお子様じゃ!」


あ、すんません。子供様、


「お姉さまじゃろが!」


……お姉さま。

そしてさっきからヘコヘコと頭を下げている、パーカーにマスケラと呼ばれるヴェネチアのパーティとかで使われていた面をつけた男。もうすでに土下座の域に達している。

それをシーパンにTシャツ、頭にシルクハットをかぶり、顔にホワイトマスクをつけた男が、親分と呼ばれた子とマスケラの男とのやりとりを見てケラケラと笑っている。

ホワイトマスクの男になだめられて少し怒りが落ち着いたのか、椅子に座って腕組みをする親分。


「第一、これだけやってなんの成果もないってどういうことじゃ! なんのためにやってるかわかっとるんか!? あぁん!?」


しかし声量は変わらない模様。


「すんません! こっちも結構必死でやってるんですけど、どうしてもどっかで途絶えちゃうんスよ」

「途絶えちゃうんなら何とかせぇやボケがっ!」

「わかってますわかってます!」

「同じ単語を二回繰り返すと、急に信頼性とかが激減するんだってさ」

「わかってますぅー!」


そんなコントを繰り広げているこの三人組だが、こう見えても立派な悪の組織である。自称『マスクオブデスティニー』。わーかっこいいー。

彼らは、例の少年少女らの持っている面を狙っている組織である。

かくかくじかじかで、少年少女らが面を所有しているという情報を掴んだ彼らは、小さな事件を引き起こしては少年少女らをおびき出し、その面を奪い取ろうと企んでいるが、成功した試しは一回もない。というよりも、奪い取るどころか接触出来た試しもない。


「まぁ仕方ないとして、もっとお面を使ったら良いじゃろ。お面を使えば、接触できる回数も増えるじゃろが」

「それはそうなんスけど、でも予算が……」

「……」

「だよねー」


ケタケタと笑うホワイトマスクの男。

その組織、現在資金不足である。

準備は万端なのであるが、資金繰りには手間取っている。

というのも、親分とホワイトマスクの男は実の兄妹であり、兄から借金という形で親分がお金を借りている。それが今のこの組織を支えているのである。


「とにかくだ。今度からはもう少し本腰を据えていくようにせい。わかったか!」

「へ、へい!」

「あ、今お金の話ごまかしたでしょ」


ホワイトマスクのツッコミはスルーされ、これで話し合いは終了となった。

そして椅子からスッと立ち上がった親分は、スタスタとマスケラの面の男の前までやってきた。

マスケラの面の男は、その場に膝まづき、土下座の要領で片頬を床へと押し付けた。

親分は片足を履いていたスニーカーから取り出すと、そのままマスケラの男のもう片方の頬へと乗せて、グリグリと踏みつけた。


「ほら、これがええんじゃろ? 気持ちええか? このド変態めっ!!」

「ぎゅぅ……ありがじょうごじゃいますぅ……」


今にもとろけてしまいそうなニヤケ顔で、ヨダレを垂らしながら踏まれているマスケラの男。もちろん面をつけているので顔は見えないが、雰囲気とか声とかでわかるってもんですよ。

親分が口ではそう言いつつも、鬼の面の奥で心底気持ち悪そうな顔で、ケタケタと笑っているホワイトマスクの男に向かって一言。


「兄ちゃん、気持ち悪い」

「人件費削減だよー、親分ー」

「うへぇ……」

「うへへへへぇ」


マスケラの男は、これを報酬として一緒に協力してくれている。ド変態である。

こんな変態を要する組織であるが、こう見えても立派な少年少女の敵である。

これから幾度となく目の前に立ちはだかる敵ではある。

頑張れマスクオブデスティニー! 

頑張れ少年少女たち!



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