プロローグ
僕の名前は日向 誠也。17歳。大学まで飛び級で卒業済み。僕が来たのは、この喫茶店。ここのコーヒーが僕のお気に入りだ。僕はこう見えてもお金持ちの発明家である。もともと金持ちの家系に生まれ、お金には困らなかったが、今では自分の稼いだ金でやりくりしている。まあ話はそれたが、自分の金で毎朝この喫茶店にコーヒーを飲みにくるのだ。
「いつもの・・・」
そういえば通じるのがこの喫茶店。「あいよ」と気前よく出してくれるのがここのオーナー。今池。ヒゲが濃くて凄くダンディーな人。年齢は45歳。性格もすこし変わった人なだけで、それをのぞけば、いい人なのだが、恋愛ができない可哀想な人でもある。
ガララガッシャーンッ
朝から食器の割れる音がなり響いた。「すいません。いそいで片づけます・・・」
そういってドジを踏んでいるのは、喫茶店のアルバイトさん、柊 楓くん。19歳。大学生。クールで笑顔は少なく、寡黙な性格ではあるが、真面目で良い(?)人。
オーナーもだまって見過ごすことが出来ずに声をかけた。「楓?どうした?」
「いえ、手がすべっただけです。すみません。以後気をつけます。」
「珍しいですね・・・アイツ・・・」
そういって厨房から顔をのぞかせたのは、杉原 龍海。20歳。この喫茶店の専属パティシエ。
「どうも様子が変だが、お客様の前で騒がせるわけにいかないだろう・・・後で俺から聞いておこう。」
そう促したのはオーナーの今池。
そうやって話し呆けている彼らに僕は「職人が厨房を離れてどうするつもりだ。龍海」と叱った。
「あ、誠也さん 来ていたんですね。それもそうですね。持ち場に戻ります。」
龍海はそういうと自分の持ち場へと戻って行った。
「それじゃ、僕もそろそろ帰る。金ここに置いておく。つりはいらん。」
「気ぃ使わせて悪いな誠也・・・」
「別に、気など使ってないさ。」
そういって僕は店をでた。
僕が店を出た後、龍海は再び顔を覗かせていると
「全く・・・」
オーナーの溜め息が聞こえてきた。「どうしたんですか?」
龍海は尋ねると「食器代金まで支払っていきやがった。」
そう答えたオーナーは少し苦笑いだった。
そんなやり取りがあったことも知らず、何も知らず、ただ僕は晴れた空をみて、帰路についたのである。