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悪魔の意思

掲載日:2006/10/01

【狂気コンペ】に参加しております(^O^)


エントリー作品群は、 狂気コンペ と記入してサーチをかけてくださると、総てヒットいたします(^O^)


是非やってみてください(^o^)/

少女は機会を窺っている。

自分を酷い目に遭わせたあの女を、更に酷い目に遭わせる機会を。


《許せない……!

人をあんな目に遭わせといて平然と生きてるなんて!》


どうしても許せない。


《あたしを電波で殺してくれたんだ。

貴様も電波で、……死ね!!》







竜美は携帯電話で友人と話している。

電波は三本立っているが、今日はやけにノイズがひどい。

声が遠いとかその類ではなく、カラオケボックスでのハウリングのような、かなり耳に障る間高いノイズだ。

時間に比例して、ノイズが段々ひどくなる。


竜美はこれ以上の通話は不可能であると判断し、

「ごめん、ケータイ壊れたみたい!

なんか、ノイズがひどいんだよね!

もう千秋がなに言ってるのか判んないぐらいだから切るわ!」

と大声でまくしたてて、一方的に切ってしまう。


こころなしか、気分が悪くなってしまった。


考えれば考える程気分は悪くなってくる。

携帯電話の買い換えを考え始めた矢先、突然聴き覚えのない着信メロディーが流れ始めた。

低音域を中心とする、なんとも不気味なメロディーだ。


不快感が更に上昇していく。

周りを見回すと、全ての視線が自分という一点に集中していた。


自分のポケットから携帯電話を取り出すと、不気味な着信メロディーがイルミネーションを点滅させる電話機と共に、近付いて来る。



竜美には、こんな曲を落とした覚えが全くない。

登録している着メロサイトは全て試聴可能だ。

間違ってもこのような、不快感しか与えてくれない曲を落とす筈がない。

百歩譲って落としてしまったとしても、目的の着信メロディーではないのだから、聴きもせずに削除している筈だ。


不気味なことはまだ続いた。

じわりじわりと音量が大きくなっているのだ。


周りの自分を見る目が、かなり険しくなってきている。


携帯電話を開こうとするが、なかなか開かない。

むきになって開こうとするが、全く開かない。

全身全霊を持って開こうとするが、まるで、意思を持っているかのように開かない。

その間にも、音量は大きくなっていく。


《嫌……、嫌!》

「嫌ああぁぁ!」


竜美は携帯電話を道路に投げ捨てた。

アスファルトに激突していくらか砕けた後、自動車にひかれ、砕け散ってしまった。


この日は、竜美にとって厄日なのかもしれない。

携帯電話の破片がいくらか飛んで来たのだ。

物凄い速度で飛んで来る破片を避けきれる訳もなく、ほぼ全てを顔面に浴びてしまった。

おびただしい数の破片を顔に突き刺したまま、後に崩折れていく。







竜美が意識を取り戻したのは、まるで抵抗を感じないフカフカなベッドの上だった。

四方八方、どこを見ても真っ白だ。

余りの生活感の無さに自分の目を疑う。


「病院?」


だが、普通の病院ではなさそうだ。

余りにも、生活臭が無いのだ。


「まさかまさか!

変な実験所に連れ込まれてて、死ぬような人体実験をされるんじゃ……」


そんなことは有り得ないとは解ってはいるのだが、考えてしまうほど今日は、運が悪い。


「目は、大丈夫なんだ」


それは、不幸中の幸いなのかもしれない。

無数のプラスチックの散弾から失明を間逃れたのだ。


顔中に痛みを感じる。

それは、顔に重傷を負っていることを意味している。


「あたしの顔、どうなるのかな」


絶望にも似た感情が心の底から沸き上がってきた。


やり場の無い絶望感に打ちひしがれている所に、病室のドアが開く。

ドアの向こうには、一組の男女が居た。


「森重竜美さんですね?」


女が確認してくる。

そして、こう続けた。


「警視庁捜査一課の岩国です」


手には、開いた警察手帳をかざしている。

確かにそこには【警視庁捜査一課警部岩国皐月】と書かれてあった。

顔写真も紛れもなく本人だ。


《!!

刑事がなんの用なの!?

あたし、殺されかけたってことなの!?》


「実はですね、あなたの投げ捨てた携帯電話をひいた車が、それが原因でハンドルを取られて、人が大勢いた歩道に突っ込む死亡事故を起こしてしまったんですよ。

ドライバー及び、ひかれた通行人五人は即死でした。


誠にお気の毒だとは思いますが、過失至死傷罪で貴方の身柄を警察病院へ確保させていただきました」


「そんな!

そんなそんな……」


「残念ですが……、これが事実です。

回復を待って、取り調べを行うことになりますので、宜しくお願いします」


刑事達は、一方的にそう告げると、病室を去っていった。







訳が解らない。

なぜこのようなことになってしまったのか。


「ケータイだ……。

全部ケータイが悪いんだ……」


それに気付いた竜美は、八つ当たりしようとポケットに手を入れた。


そこには、携帯電話の手応えがあった。


「!!

いやああああぁぁ!!!」


耳を塞ぎ、激しく頭を振って髪を振り乱したところで意識が、……飛んだ。










意識を取り戻したとき、竜美はベッドの上に居た。


いつもの、全く変わり映えもない、自室のベッドだ。

いつも通りに整然とした、いつも通りの家具の配置の部屋である。

それは、平和な朝の訪れを示すものだった……筈だった。


枕元には、携帯電話。

それもまた、見慣れた光景だ。

目覚まし替わりに置いてある、言わば【定位置】だ。


「大丈夫。

顔の痛みもないし、間違い無く夢だったんだから!」


携帯電話を手に取って開くと、メールの着信を告げていた。

開いてみると、画像が一件添付されているだけで、本文は、無い。


《怪しい。

なに、このメールは……》


削除することにした。

夢の中とはいえ、怪しい挙動を示した携帯電話だ。

見ないに越したことはない。

コマンドを呼び出して、削除を選ぶ。


《!?

拒否!?》


いくら削除をクリックしてもエラー音を発てるだけで全く消える気配がない。

それどころか、夢では開かなかった電話が、今度は閉じなくなってしまっている。


「なによなによ!?」


見たくもなかったが、どうしても液晶画面に目が行ってしまう。

まるで何かに操られているかのように自分の意思を無視して画面を凝視してしまうのだ。


「見たくない!

こんなの見たくないのに!!」


カーソルは、勝手に動き始める。


「やめて!」


まず、コマンドを消し


「開かないで!」


添付ファイルに合わさって


「お願い……」


……それを開いた。


「やめてぇぇぇ!!」


そこにあったもの……。

それは、見慣れている筈の人物だった。

それなのに、服装でしかそれを認識できない。

それほど、変わり果てていた。


その写メールは、この部屋で、カーテンレールから首を吊った……


……自分。



「うわぁああぁあぁ!!!!」



竜美はまた、意識を飛ばした。







竜美の意識は、もう戻ってくることは無かった。

ただ、ベッドに座っているだけ。

ただ、鼓動を維持して呼吸をしているだけ。







少女は竜美を中心としたグループ仕打ちによって自宅のカーテンレールから首を吊って、既に死亡し、霊体と化していた。


彼女が受けた仕打ちはとても陰湿で、凄惨な物だった。


私生活の盗聴と盗撮。

その被害は、彼女が自宅で過ごす全ての時間、つまり、着替、入浴、排泄に至るまで全ての言動に及んでいた。


更には、それらの録音テープや、盗撮映像を、インターネットの裏オークションサイトで販売されてしまったのである。


渋谷で芸能事務所からのスカウトを受けたことがあるほどの美少女の盗撮映像には、とんでもない額の大金が動いたらしい。


《ふん!

なにが

「あんたはいい金になるから、大っっ嫌いだけど友達でいてやったんだ」

よ!》


それは、全てが露見したときに、竜美が少女に対して放った言葉。


凄惨な仕打ちを受けた上に、親友だと信じて疑わなかった者の口から投げ付けられた言葉の暴力に対する当て付けとして、家に呼び付けていた竜美の目の前で首を吊った。

予め、準備をしておいたのだ。


竜美は、狂ったように暴れて悶え苦しんでいる少女を助けようともせずに、走ってその場から逃げ出した。


「……、死ね!」


これは、少女が最期の力を振り絞って残した親友だった者に対しての遺言。









霊体となった後、まずやったことは、電波を含む電気全般を操る術を身に付ける訓練だった。


霊体は、対象を良くも悪くも強く思うことで、その周囲の状況を自在に操ることが出来る。


それが、【守護する】ということや、【祟る】ということに繋がるのだ。

少女の場合は、勿論【祟る】だった。


《あたしを電波で殺してくれたんだ。

貴様も電波で……、死ね!!》


この時点で少女は、電気を操るどころか、電気と同化する術を身に付けていた。


竜美の学校からの帰り道で待ち伏せていると、都合のいいことに、竜美は、電話中だった。

少女はあっさり電波と同化して、竜美の携帯電話に侵入することに成功した。


《殺してやる!》


ここで少女は、究極に気味の悪いオリジナル着信メロディーを作成し、登録。

これを対象として五分後にタイマーをセットした。


《おっと、音量調節を壊しておかないとね》


全ての準備を整えてから、少女は竜美の耳から脳内に侵入した。


《さあ、いたぶってやるかぁ!》


少女の頭にはそれしかない。


人間という生命体は、常に体内に発生している【生体電流】というものを用いて脳からの指令を体の各部分に伝えている。

少女が竜美を自由に操れる資格は、間違い無くあるのだ。


《たっぷり苦しめてあげるね》


脳内に侵入し最初にしたことは、耳鳴りを起こす事だった。

案の定竜美は、計画に沿った行動を取っている。


《あたしが誘導してるとも知らずに……。

ほんと馬鹿だわ。

こんな馬鹿の陰謀にも気付けなかったなんて……、情けない》


悔しさが込み上げてくる。

少女の竜美に対する恨みが……、増した。


竜美が自爆してくれたお陰で、タイマーが正常に作動してくれた。


場所は天下の往来。

初めは申し訳程度だった音量が、リミッターを破壊されたことにより、そのスピーカーが持つ限界出力までジワジワと上がっていく。


神経に障る旋律なだけに、周囲からは自分がそこに存在すること自体が犯罪であるかのような、怒りに満ち満ちた視線が飛んで来る。


この瞬間、竜美の脳波が極端に乱れ始めたのを感じ取った。


《やだなに!?

もう気が狂っちゃうの!?


もっとイジメてあげたいのに!!》


不満だ。

この程度で許すことの出来る女ではない。

余りの不満で、自分の気が狂ってしまいそうだ。


少し経って、竜美が着信メロディーを切ろうとしだしたため、加える力に関する信号に対して妨害を入れた。

苛立ち、焦り、恐怖。

様々な感情が竜美の脳内に飛び交っている。


《きゃはははは!!

慌てろ!

怯えろ!

そして、死ね!!》


次の瞬間、竜美は想定外の行動をとる。

車道に向かって携帯電話をを投げ付けてしまったのだ。

これは予想外だ

どうなってしまうのか想像もつかない。


《あーもう!

これからがいいとこだったのに!

ほんとに馬鹿な奴は、気を付けてないとなにしだすか判んないよ!!》


ここから先は、成り行きに委せるより他にない。


《お願いだから只で済まないでよ!?》


心の底から不幸な出来事を期待する。

自分がこの女を操って、大量虐殺や食人などを行い極刑にもっていく手もあるが、あまり無関係な者を巻き込みすぎるのも考え物だ。

それに、少女の目的はもっと別な場所にある。


携帯電話はアスファルトに激突していくらか砕け、自動車にひかれて完全に砕けた。


運は少女を見放してはいなかった。

砕けた破片が竜美に向かって飛んで来たのだ。


《どうせなら顔だ!》


女の顔。

しかも、確実に可愛い部類に入る、渋谷で、自分に続いてスカウトを受けた顔。

思えばこのときだ。

少女が、

「興味ありませんから」

と断った後に竜美が、

「じゃあ、君でもいいや……」

という言葉から始まるスカウトを受けたとき。

ここから、盗聴、盗撮地獄が始まったような気がする。

少女はこのときの竜美の気持に若干の同情を覚えつつも、生体電流をいじって、避けに入っていた竜美の顔が破片が来るだろう位置に来たときに、動きを止めた。


《砕けろぉぉぉ!!!》


少女の望み通り、竜美の顔は砕けた。


実は竜美の顔が砕けた時、少女は竜美の脳内には居なかった。

カーステレオの電気を頼りに、携帯電話をひいた自動車に憑衣していたのである。


その状況に於いて、ハンドル操作を誤らせるのは簡単なことだった。

どこかのガラスなり、バックミラーなり、サイドミラーなりに映り込んでしまえばいいのだ。


《ごめんなさいね。

悪いけど、あたしのために……、死んで!!》


試しにフロントガラスに映り込んでみると、

「あぁああぁぁあ!」

という抑揚が支離滅裂な悲鳴をあげて、ドライバーの女性はあらぬ方向へとハンドルを切り始めた。


数秒後、自動車は、人が群れ生す歩道へ突っ込み、塀に激突して爆発炎上。

ドライバーの女性を含む六人が少女の復讐のための人柱となった。


少女はまた、失神している竜美の脳内ヘと戻る。







竜美の周りには、様々なサイレンの音が入り乱れていた。


目を閉じたままであるため、視覚による確認は出来ないが、どうやら、救急車、パトカー、消防車といった面子がそれぞれ複数でやってきているようだった。


「大丈夫ですか!?」


激しく体が揺れる。


今後の展開が楽しみになってきた。







一度病院に着いたが、今まで聞いていた声とは違う声が割って入り、警察病院がどうのと告げて、また移動し始めたようだ。


どうやら、先程の事故に対して何らかの罪に問われ、竜美の身柄が警察に確保されたらしい。

予定外のイレギュラーに見舞われたが、段々と、軌道が修正されていく。


暫くして、少女の視界に光と景色が戻った。

竜美が意識を取り戻したらしい。

脳の活動が活発さを取り戻していく。


程無くして刑事が現れ、

「過失至死傷で警察病院に拘束した」

「もうじき取り調べさせてもらう」という旨を一方的に告げて、病室を去っていく。


《よしよしよしよし!》


うまく理想の展開に持って行けそうだ。


《さぁ、殺すぞぉ!》


計画は順調に進んでいる。










竜美は明らかにど動揺し、そして、怯えていた。

余りにもひどい動揺のため、【自分が壊して、ありもしない携帯電話】に八つ当たりしようとポケットをまさぐり始めている。


《くたばれーーっっ!!》


少女は、竜美の触覚をいじり、携帯電話を触っている感覚を右手に伝える……。



「いやああああぁぁ!!」



竜美は、恐怖の余り……、失神した。


仕上げは、自分の死に様をこの女にくれてやること。

ただし、実際にくれてやったのでは効果が無い。


《あたしが受けた苦しみと屈辱はこんなもんじゃない!》


もっといたぶり、もっと屈辱を与えてやりたいのだ。


少女はまた、竜美の神経を……、いじる。







「うわぁああぁあぁ!!!!」







《あたしの目的は、あたしを死に追いやった連中に、精神的な【死】を与えてやること。


ふふふ……。


この女はこの後どんな結末を辿るのかしらね?


残りまだ三人も居ることだし、こいつはこれぐらいにして、早く他の連中を殺しに行かなくちゃね……。


どんな風に狂わせてやろうかなぁ。


楽しみだなぁ》


目的を果たした少女は満足げな笑みを湛える。



《あは……。

あはは……。

きゃははははぁ!!》


狂ったような笑い声をあげ、少女は次なる獲物のもとへ、向かっていく。


少女の復讐は、まだ始まったばかりだ……。




END

いまいち狂って無い気もしましたが、少女には、出来るだけナチュラルに狂って頂きました(^_^;)


最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました(^o^)/


ではでは(^o^)/

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり現代人の必需品であるケータイを題材にされると怖いですね(>_<) テンポが良くて表現も良かったです。アダルトなケンシロウさんは僕と違い、文章落ち着いてますね☆ ーーで・す・が! 後…
[一言] 読ませて頂きました。 初めの方から惹き付けられ、どっぷりと物語の中に入り込んでいました。 復讐、霊など興味深い設定の上に、ひしひしと伝わってくる少女の感情描写がとても素晴らしかったです。 実…
[一言] いや〜復習劇ってのもいいですね〜。私、実はこういう系統が好きなんですよ。(その割、自分自身では書けないが・・・) もう少し風景描写がほしい・・・かな?
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