魔王城に到着!!
「あぁ……エーラさんか……びっくりした。寝起きに首無しの女性はビビる」
隣で寝る裸の美女をもっと見たいが理性で蓋をする。起こさないように、忍び足で歩き出口の方へ向かう。ダイニングテーブルには、大量のウイスキーの空瓶が山のように積まれている。
昨晩は、だいぶ飲んでいたようだ。とりあえず今の現状がバレたら、とんでもないことになりそうだ。慎重に歩いていたが、ある床を踏みしめた途端ギィィと音がなってしまった。
「……誰だ!?」
「おはようございます! エーラさん」
「ああっ……なんだたつきか。何故、こっちを向かない?」
(いっ……いや、さすがに言いづらいな……)
体を起こして向いているのが伝わる。これで正面を一度でも見たら殺されるであろう。今までの人生で一緒に飲んで眠るなんて無かったし、しかも起きたら隣に裸の首無し女性がいるとは思わない。
「お前、もしや……私物を盗んだのか?」
「違います!! 自分の姿見てください」
「ん? あっ……お前どこまで見た? 正直に話せ」
「……綺麗な後ろ姿だけです」
「お前、男にしては誠実だな。合格だ。既に先に起きていたが、触らないとはな」
ガチャガチャと金属の音がする、プレートアーマーを着ているようだ。案外早く着替え終わる。
「ずっと気になっていたが、どこから来たんだ? 死の森は基本的に誰も近づかない」
「エルフ女王に勇者召喚されて、エルフ女王を鑑定して石ころと言ったら死の森へ追放されたよ」
「ふっ……そうか……。度胸あるな、あのエルフ女王は性格が悪かっただろ?」
クスッと笑ったところを俺は逃さなかった。
「すっっごい性格悪かったよ? ゴミスキルって言われたわ!! そういえば、エーラさんにも物凄く悪く言われた気がするな……???」
じっとクローズヘルムの方を見つめる。エーラは恥ずかしいのか、向きを変えた。
「さすが、エルフ女王の国だ。ん? 知らんな。さぁ、魔王城へ行くぞ。一応お前は勇者だからな、魔王へ報告しなければならない」
「いきなり!? 投獄されるの?」
「それは、お前次第だ」
エ―ラさんは、一杯のウイスキーを飲む。身支度を整え、右脇にクローズヘルムを抱える。
黒騎士の姿はいつ見てもカッコイイ。昨晩の醜態が嘘のようだ。外に出て、愛馬のオンブラを召喚する。
オンブラは、私の元へ近寄ってくると「ブルル」と鳴きながら首の末端をこすり付けてくる。それに応えるように、俺も撫でる。昨晩のことで感謝しているのかもしれない。賢い馬だ。
【オンブラとの好感度が上昇したので、鑑定スキルのレベルが上がりました】
「たつきも乗れ。本当は乗せたくないが、オンブラがお前の事を気に入ってるようだ」
(また、鑑定レベルが上がったからあとで確認しよ。……乗馬しなかったらどやって連れていくつもりだったんだろう……。)
オンブラに跨り、俺に手を差し伸べる。その手を掴み一緒に乗る。エーラは両足のふくらはぎでオンブラのお腹を軽くポンと叩き、重心の位置をわずかに進行方向へ向け手綱を緩める。するとオンブラは走り始めた。
途中、エーラさんが「掴まっていろ」と声を掛けられる。お尻を浮かせツーポイントの姿勢をとる。
ふくらはぎでしっかりと腹を締め、拳を前方に送り出す。俺はあまりのスピードで腰が抜けそうになった。必死で、エーラさんの腰を離さないように抱きしめる。
(綺麗な女性と乗馬するって既にデートなはずなのに……。初心者に優しくないスピードなんだよ!!!)
死の森を物凄い勢いで駆け抜けていく、さすがデュラハンの馬であってスピードも体力も全く落ちることを知らない。しがみ付く事で精いっぱいで景色を一切見れていなかった事を悔やむ。
随伴を止めて、肘を軽く後ろに引き拳を固くする。完全に止まる前に脚で推進を加えて、上体をしっかり起こす。最後にオンブラに「ありがとう」と小さく声をかける。
目の前には大きな城が見えている。周囲の木々の影響で余計に魔王城といわんばかりの威圧感がある。
入り口は左右の挟み撃ち塔となっており、門の左右に塔がある。左右から攻撃できる構造となっている。
門は鉄のポートカリスとなっていて、上部のゲートハウスから垂直の溝に沿って上下に動かせるようになっている。門に負けないほど大きいサイズの近衛兵が一人立っている。頭が牛で体は人間のミノタウロスだ。
「総長に敬礼!!」
鉄のポートカリスが「ギギギ」という音と共に上昇していく。
「ご苦労様」
軽く手を挙げる。
「えっ……エーラさんって騎士団総長だったんですか?! 先に言って下さいよ……」
「すまない、言い忘れていた。さぁ、進むぞ」
門を越えゆっくりと進む。道の両側には花や噴水など左右対称に綺麗に配置されている。また、訓練場や鍛冶屋なども見られ、メイドらしき人も数人見える。途中、訓練兵がたちが一斉に動きを止め、「総長に敬礼!!」と大きい声が聞こえる。恥ずかしがっているのか、エーラの歩い方がぎこちない。
少し歩くと城の入り口に到着する。そこにも大きな斧を持ったミノタウロスが門番として立っている。エーラの声と共に門番が玄関を開ける。城の中はとても暗く頭上には、石の肋材が幾度にも交差をし、巨大な植物の枝が絡み合っているようだ。それを支える細い柱の束が、規則正しく奥へと並んでいる。
壁には分厚い石壁が並び、大きく鮮やかなステンドグラスが飾られている。右側には大きなアーチ状の窓が並んでいる。日中は、太陽の光が差し込み、窓枠の形をした影を落とす。
また、鉄製のホルダーに固定されたトーチが等間隔で配置されている。燃える薪の匂いと、石造り特有のひんやりとした湿り気が交わっている。
そしてなによりも、ホールのど真ん中から、赤絨毯が敷かれた幅広の石階段が堂々と鎮座している。
階段の中ほどには広い踊り場があり、そこから左右二手に分かれて上階へと続くY字型の構造となっている。
手すりには、唐草模様が彫り込まれた装飾鉄が施されている。親柱には、グリフォンや獅子の石像が据えれている。
エーラと共にその豪華な階段を上り、左の道へ曲がり正面の長い廊下を渡る。そして、一番奥の重厚的で大きな扉の前に着いた。
「たつき、ここが魔王様のお部屋よ」
ここまで読んで下さりありがとうございます!
エーラとの乗馬デートが台無しになってしまいましたが、その分いい思い出を作れたのでいいでしょ。
エーラさんは服を脱ぐという概念がないので、実際は意識すれば脱ぐ事も着る事が出来ます。
魔王城の内装にえらく時間を取られました。石ころエルフの時もこれくらい緻密に書けばよかったです。
次で魔王様と対面です!女性なのか男性なのか異形なのか楽しみにしてください!




