二面性のデュラハン
「グランデだ!! いるか?」
扉を4回ノックをする。しかし、出てくる気配はない。二人は外出中かと思い、帰ろうと踵を返したときに扉がゆっくりと開いた。
「……だれよ。」
そこに現れたのは漆黒騎士の姿であったが、肝心の頭はクローズヘルムを被っていて素顔は見えない。右脇に抱えられている。所謂、デュラハンだ。鎧全体から冷気のようなものが漂ってくる。
魔族の中でもかなり好きなので、興奮が止まらない。背丈は180センチくらいか女性の声が小さく聞こえた。
「おお! エ―ラいたのか! いきなりだが、紹介したい人物がいるんだ。この俺の隣にいる人間が、今日来たばかりのたつきだ。とってもいい奴なんだよ」
「……そう。その為にわざわざ来たの? 」
めんどくさそうな顔をしている。あまり人と関わるのは苦手なのかもしれない。
「そうだぞ? 彼は役に立つかもしれない」
「たつきです! よろしくお願いします!」
しっかりと深くお辞儀をする。騎士相手なら尚更ビシッとしないとマズそうだ。
「……よろしく」
「じゃ! あとは任せた! 俺はこれから用事があるからたつきを預かってくれ」
「……は?」
「えっ?」
二人の返事は聞こえていないのか、わざと聞こえないふりをしたのか、そのまま自宅へ戻って行ってしまった。てっきりグランデも一緒にお話しをすると思っていたので、いきなり二人きりになるのは大変気まずい。相手が陽気なタイプならまだしも、明らかに俺を同じ陰キャよりのタイプであるからこの状況はよくない。
「……まぁ……上がりなよ」
「失礼します」
室内は書物や服が散乱しており、安心して足を置く場所が見つからない。グランデとは真反対である。
普段食事をしてるであろう、ダイニングテーブルには飲みかけのウイスキーが空瓶も含め沢山放置されていた。
「……座って。なんか持ってる?」
「あっ……はい! グランデが作ってくれた弁当があります」
「なっ……なんだと?!!! あのグランデの手作り料理? ……少し食べさせてくれ」
弁当という単語を聞いた途端、声色が明らかに変わり、先ほどとは違い喜びを感じ取れる。口数も倍以上増えて彼女が、グランデの料理が好きなことがよく分かる。いつの間にかダイニングテーブルに、クローズヘルムが置かれている。タンブラーを用意し大きな氷をいれ飲酒をし始めた。口からでは無く、首から豪快に直接流してる姿はデュラハンらしい。
「いいですよ! こちらどうぞ。グランデの手作りハンバーグです」
「これは、新作か。初めて食べるな……。頂きます。んっ……!? 美味しい」
表情は全くわからないが、声はとても喜んでいる。ハンバーグを食べる時は、ロックを解除してベヴォーを上に押し上げ、口にフォークを突っ込んで咀嚼して食べている。合間に首にウイスキーを流し込んでいる。
「グランデのハンバーグ美味しいですよね。普段から料理してるイメージがあります」
「それは当然だ。彼から聞いてないのか? あいつは魔王軍の料理長だぞ?」
「えっ?? あれ、でも今日家にいますよね?」
「今日は休日だよ? 休みは必要だろう。んっ……相変わらず美味い」
別世界でもしっかり労働基準法なるものが、機能しているのだろうか。有給はあるのかとか気になってしまう。グランデから一切、個人的な事は聞いてなかったのでびっくりした。まさか、あの川で遭遇した巨人が魔王軍の料理長だとは思わない。
(思えば、グランデのキッチン近くにあったエプロンの紋章って魔王軍と関係あるものだったのか。)
タンブラーがジョッキに代わって、ウイスキーの量も増えている。そして、ハンバーグが既に半分無くなっていた。
「そういえば、グランデが言っていたな。役に立つとはどういう意味だ?」
「多分ですが、俺の鑑定スキルですね。相手の長所や魅力が分かるんですよ」
「プライバシー侵害って知っているか?」
「……はい。……って……そんな事言われたって仕方ないじゃん!!! それが俺のスキルだもん!!」
「相手の個人情報を同意なしで、一方的に見られるスキルは初めて聞いたな、そんなスキル本当にあるのか? 悪用厳禁じゃないか? なんらかの刑に処せるかもしれないな」
「鑑定スキルをそこまで悪く言われるの初めてですよ……!? 自分で望んで選択した訳じゃないのに!! 後、さり気なく投獄考えるの止めてくださいね? 来たばっかりなんですよ。」
自分でも自覚をしていた。そんな事百も承知である。当たり前のことを言われ、うっかり声を大きくしてしまった。多分先ほどから、飲んでいた水が実はお酒が入っていたらしい。異世界転移されて、追放され投獄されるなんて嫌だ。
さっきよりもエーラさんの流し込むペースが異常に早くなっていく。水を飲むかのように首にウイスキーをストレートで流し込み。火照ってきたのか、クローズヘルムを外して素顔が見えている。
石ころエルフも美人であったが、それに劣らないくらい美人である。金髪というよりもミルクティーベージュぽく、髪の毛長さは肩くらいである。顔は少し朱色に染まっている。
(いつみても、飲み方が絵面がホラー過ぎるんだよな……。)
「なら、お前の個人情報ラクラク悪用スキルで私を鑑定してみろ! 私が誰にも言った事がない情報を発言したら投獄はしない」
【鑑定結果:デュラハン 名:カヴァリエ―ラ】
【魅力:酒豪の世話焼きお姉さん。】
【長所:責任感が強い。酔うと別人のようにハキハキと元気になる。】
【悩み:愛馬のオンブラの様子が最近おかしく心配している。】
「ふふっ。分かってしまいましたよ。 カヴァリエーラさん愛馬を飼っていますね?」
「デュラハンなら当然のことだろう! それがどうした?」
「……愛馬のオンブラが最近様子がおかしいですよね?」
「なっ……!!??? そうなんだよ!! 少し前からずっとオンブラちゃんの様子がおかしいんだよ。私のオンブラちゃんが……。うぅ……。ぐすん」
肩を掴まれて前後に振られて酔いそうになる。カヴァリエーラさんの顔が悲しげな表情になっている。
かなり困っているらしい。愛馬に鑑定スキルを使えばわかるかもしれない。
「愛馬をここに呼んでくれれば、スキルで原因がわかるかもしれないです」
「なるほど!! その手があったか! じゃたつきクン!よろしく頼む」
(カヴァリエーラさんさっきまで、個人情報ラクラク悪用スキルって言ってたくせに、調子いいな全く。
急にクン呼びになってるし、理性なくなってきたな。)
「オンブラおいで~未知の病が治るかもしれないよ~」
カヴァリエ―ラの後ろから音もなく大きい馬が出てきた。漆黒の毛並みで体格はずっしりとして、赤い瞳が特徴的。首はない。カヴァリエ―ラは愛馬を優しく撫でている。
【鑑定結果:コシュ・ボハ 名:オンブラ】
【魅力:漆黒の毛並みと赤い瞳。】
【長所:凄まじい速さで移動できる。】
【悩み:最近、気持ちよく走れない。蹄の裏が気になる。】
「カヴァリエ―ラさん!! 原因分かりましたよ!! 多分ですが、裏掘りと削蹄をさぼっていたからですね。」
「オンブラ……!! そこは普通の馬と一緒だったのか……。そういえば今まで一度もしなかったな。
よし!! 折角だから今やろうか。ちょっと外でやってくるから待ってて~」
おぼつかない足取りで愛馬と一緒に家を出ていく。「気づかなくてごめんなー」とか「これからは、また一緒に走ろうな」など優しい声掛けが聞こえる。しばらくするとカヴァリエーラさんが出てきた。
「たつきクンありがとう!!! たつきは命の恩人だ~! この恩は必ず返すよ」
正面から片腕で強く抱き付かれ、身動きが全く取れない。プレートアーマーが痛い。もう片方の腕で頭を持っている。頭は私の方を向いていて初めて、面と向かって会話している。とっても嬉しそうな顔で、少しだけ涙が出ている。相当感謝されているようだ。
「たつきクンお前は本当に良い奴だな~! ヨシヨシ~魔王にも紹介したいな!! これからはエーラと呼んでいいぞ? オンブラも凄く喜んでいた。ほら! もっと飲め!!!」
嬉しさがエンジンとなったのか、ジョッキに継がずそのまま瓶から直接流し込み始めた。いきなりガシガシと頭を撫でられながら、抱き締められる。もう幸せ過ぎる。酒臭い事を除けば。
(これが夢に見た魔族ライフ......!!!)
「それはよかったです! いや、ちょっと……これ以上は……」
【カヴァリエ―ラとの好感度が上昇したので、鑑定スキルの経験値を得ました】
その後二人で酒に溺れたらしく、気付いたら昼になっていた。どうやらベッドの上にいるらしい。重たい瞼を少しずつ開けながら横を見ると、何故か首のない裸の女性が隣で寝ていたのだ。
「……えっ?? ……こわ!?」
ここまで読んで下さりありがとうございます!デュラハンカッコイイですよね。
どこから酒を飲むのか、兜はどれにするか悩みました。
さぁ、隣にいる裸の女性は誰でしょうか! エーラでも別の女性でも大変ですね! ファイト!
次は魔王城に向かいます!




