残念な転移デビュー!
「やっぱり、エルフのような綺麗さよりもアラクネのようなフォルムが大好きだな。エルフの気品溢れる姿も良いけど、人間の下半身が蜘蛛って素敵すぎる。もふもふしたい。なんなら壁ドンされてみたい。」
自室でアニメ鑑賞が私の趣味みたいなものだ。今見ているものは、魔物が沢山出てきて嬉しい。人間が多いのは嫌いではないが、やっぱり魔族ぽいフォルムが好き。
魔族の中で特に好きなのは、アラクネ、メデューサ、デュラハンだ。メデューサは私が蛇好きなので、いっぱい愛でたい。頭撫でながら、蛇も撫でられるなんて一石二鳥。
デュラハンは、ビジュアルが既に好きすぎるが、一緒に馬に跨って乗馬をしたいなとか願望がある。バイクである必要はない。
アニメ内で魔族は敵になりがちだけど、最近は魔族と人間側が逆転してるのもあって個人的に好きだ。魔族だからといって悪い訳ではない、むしろ良い奴も多い。しっかり対話して確かめるべきだと思う。
アニメを鑑賞しながら、ゆったりとしていると突然自分の真下が揺れている事に気づいた。地震が来たかと思いスマホを開き、地震速報を開いたら特に何も情報はなかった。
「おかしいな……。こんなに揺れているのに、地震速報に情報がないなんてある? しかも、部屋全体が揺れている流石に避難しようとしたら足が動かないし。ヤバいなこれ……。あれ? ん? 下に謎の魔法陣らしきものがあるんだけど!!! ここにきて俺も、もしかして異世界転移できるのか!?」
眩しい光に包まれて周囲が見えなくなり、フローリングの感触が無くなっていく。これが閃光弾食らった兵士の気持ちかと思いながら目を開ける。当たりは真っ白で何も見えない。簡単に言うなら雲の中に包まれているような感覚である。
遠くから誰かが歩いてくる事に気づいた。姿は人間のようであるが背中に大きな白い翼、頭上に天使の輪が浮いている。服は真っ白で、よくみる天使と似たような姿であった。
「あ! いたいた! 探したよ~中々見つからないからさ焦ったよ。じゃ早速だけど、転移させるから大人しくいてね?」
天使のような格好した女性は、片手にソフトクリームを持ち、時々食べながら聞いてきた。
「いやいや! 待って下さいよ。俺何も分からないから今の状況教えてくれる?」
焦ってる割にゆっくり歩いてきて、吞気にソフトクリームを食べている姿はあまりにも正反対で疑わしい。現状なにも把握出来ていないので、どっかに飛ばされる前に情報が欲しかった。
「君はね、勇者として召喚されるらしいよ。私はそれの手伝いでここにいるの」
「えっ? 勇者? 異世界転移だと思ったけど、勇者とは荷が重いな……。あなたは、天使? 神様? どっち?」
「流石、アニメ観ているだけあって納得が早いね。神かな? 転移や転生の手伝いしてるよ。最近は特にあっち国で戦争が多いから捌くのが大変でさぁー。ごめんね、愚痴が出ちゃった」
「やっぱり神様なんですね。私は無宗教ですが、存在は信じています。大丈夫ですよ! 気にしないで下さい。一つ質問なのですが、やっぱり勇者として転移する場合なにか特別な能力を授かるというのが、定番ですがそれは今回にも反映される?」
「そうだね。今回にも適用されるよ。でも私には能力を選択できないから、使えない雑魚スキルでも許してね!ニコッ」
「神様が選択できないなら、責めたって意味がないですもんね。じゃお願いします! 神様に会えて良かったです。ありがとうございます!」
「よし! じゃ新しい世界で頑張ってね。汝に幸あれ。」
神様に手を振られながら、再び視界が光に包まれる。
「いや、なんで森やねん!!!!」
目を開けると目の前は森である。普通なら王様か女王様が目の前にいて「おお! 勇者が誕生したぞ!」とか、せめて周囲に人がいて「召喚に成功したぞ!」と言いながら周囲の人達が和気藹藹をしてるイメージがあったのだが、周囲に誰もいない。地面に手の平を何度も叩きながらショックを受ける。
「初めての異世界転移デビューが森の中だなんて嫌だよ!? しかも俺は勇者だぞ? こんなことあってたまるか! でも、転移後直ぐにゴブリンとかに殺されるのは勘弁なので、ゆっくりできそうな所へ移動しようか。」
少し歩き進めると、馬が駆けているような音が聞こえた。襲歩くらいだろうか必死さが伝わる。馬は複数いるようで、人間の声も聞こえる。
「勇者はどこだ! この辺りか? どうだ見つけたか?」
どうやら俺を捜している声のようだ。まぁ、勇者だからな! 当然ではある。
「ここだ! 勇者は俺だ!!! ついさっき、ここに転移してきた。」
大声を出してなんとか気づいてもらえた。これでやっと玉座の前に着いて王様と話せるのだなと思いながらにやけていた。
「お前が勇者だな? たしかにこの世界では見ないダサい服装だな。よし、女王様の城へ連れていけ。」
「ダサい服装言うな!! アニメコラボ限定Tシャツだぞ?! 朝何時に出て待ってたと思ってる!!」
「ハッ!」
二人係で捕縛される。まるで重たい荷物を運ぶように担がれ、所謂馬車の荷物の置き場に置かれる。捕虜とか経験ないけど、多分こんな気持ちなんだろうとしみじみと感じた。
(何かがおかしい……。普通はもう少し労わっても良くないか? 勇者を連行っておかしいでしょ!! だって勇者だよ? 世界を救う存在なのに扱いが存外酷い。人生初めての異世界転移終わったかも。)
「扱い酷くないですか? 念のためにもう一度聞きますけど、俺は勇者ですよね? 犯罪者ではない?」
「そうだお前は勇者だ。それ以外に答えることはない」
(もうこれは流れに任せよう……。抵抗した所で何もできやしないさ。どの兵士も対応が冷たいから、会話もこれ以上出来ないだろうな。)
そのまま、どこかに連行されていく。俺はただ景色を見ることしかできなかった。前世は、悪行を重ねていた訳でもないのになんだか泣けてくる。せめて、玉座に座っている人が魔族で胸が豊満でスタイル抜群で角が生えて大きな翼だったらいいなと思いながら。胸の上で手を組み目を瞑るのであった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。ほのぼのとした雰囲気でやりたいと思ってます。
思ってたより文字数が多くなりましたが、まぁ少ないよりマシです。
あらすじ通り、次で女王様と対面します。楽しんでくれたら嬉しいです




