第8話 孤高のイケメンと同居決定
孤高のイケメンとのデート(?)第二編!
一段と深まる2人の距離...
画面に流れるエンドロール
映画が終わった。
私、上月さわと佐藤 陽光は2人ならんで座りスクリーンを見ている。
とある2人の高校生がある出来事から仲良くなり、付き合い始める。
最高の思い出を作り続ける2人だが、女主人公が不治の病であることがわかり...
そんな内容の映画だった。
この2時間 最高の時間だった。
久しぶりに見る映画はとても面白いしとても感動的で、心が満足感で一杯だった。
さらに、隣には陽光くんがいる。
誰かと 友達と見る映画というものもとてもいいものだ。
そんな彼は、今隣で号泣している。
そういえばこの前も泣いていた様な...
涙もろい人なのかな?
陽光くんは繊細で人の気持ちをとてもよく考える人だ。
それ故、スクリーン上のキャラクターに共感してしまい、悲しい気持ちになっているのだろう。
私はどちらかと言うと客観的に一歩引いた目線で観てしまい、あまりキャラクターに共感できない。
だからこそ、陽光くんの人の気持ちに寄り添い、涙を流せる人間性を素直に尊敬する。
また、陽光くんの新たな一面が覗けた気がする。
また、陽光くんについて深く知れた気がする。
気づけば隣にいるその美しすぎる横顔にずっと見とれてしまっていた。
シャープで美しい曲線を描く横顔のライン。
髪型が自然に整っていて、耳の形すらかっこいい。
その頬は、美白でスベスベ。それでいてとても柔らかそう。
今すぐにでも触ってみたい。
「どうしました。上月さん...」
陽光くんが、キョトンとした様子でこちらに尋ねてくる。
それもそのはずいつの間にか、私の指が陽光くんの左頬に食い込んでいたのだ。
無意識のうちに私の指が勝手に陽光くんの頬まで動いていた。
指に暖かくて気持ちの良い感触が伝わってくる。
陽光くんの言葉を受けて、急いで指を引いた。
「ご..ごめん あれなんで私の指触れてたんやろ」
「なんでやろって、上月さんのことだから上月さんしか分かりませんよ」
陽光くんがいつもの優しくて柔らかな笑顔を向けながら、そういった。
何というかとても器の大きな人だなと思った。
それでいて、優しくてかっこいい。
そんな隣に座るイケメンに、つい本気で照れてしまうさわ。
幸い映画のため照明が消されており、頬が真っ赤なことには気づかれてはないようだ。
ただ、映画はもう既にエンドロールの終わり際を迎え、すぐにも照明がついてしまうだろう。
「ちょっとごめん.. と..トイレ行ってくるわ」
『自分が照れていることを陽光に知られるのは恥ずかしすぎる..』と、さわはシアターを飛び出しトイレに急いで向かった。
そのようなさわの気持ちを知らない陽光は、そんな後ろ姿を不思議そうな表情で眺めていた。
「ふぅーー落ち着いた...」
トイレにこもること7分。
さわのほほも静まり、気持ちも安定した。
陽光くんを急に置いてけぼりにしてしまったことに軽い罪悪感を覚えながら、トイレを出るとすぐそこに人だかりが出来ていた。
「なんやろあれ」
近づき目を凝らしてみる。
どうやら一人の男の子が、多くの女子に囲まれている様だった。
「滅茶苦茶かっこいいですね!」
「どこの学校なんですか??」
「この後時間空いてます?」
女子から質問攻めに遭っている様子だ。
一方真ん中に居る男子は、不自然な動きをしていた。
「え...いや...えーっと」
といいながら、手のひらで後頭部をかき、その手が下に降りてきて首を少し触る。
手のひらを後頭部から首のあたりで不自然に動かし続けている。
その目は泳ぎつつどこに視線を置いていいか分からない様子だ。
この挙動不審。コミュ症の陽光くんである。
さわは、そのようないつもの様子に少しだけ安心感を覚えつつ、なんだか困ってそうだなと思った。
しかし、どうやって助けるか...と頭を悩ませるが、すぐに名案が浮かんだ。
そして、即行動に移す。
相変わらず、女の子に囲まれている陽光。
その女の子は、見た目で判断するのも良くないが見るからにチャラい。
遊び慣れていてメイクやファッションもバチバチの、肉食系女子。
陽光とは真逆だ。
そんな天敵に囲まれては、どうすることも出来ない。
どうやら本気で困っているようだ。
「連絡先教えてください~」
「彼女とか居るんですか??」
とうとうプライベートに深く切り込んだことまで、聞かれ始めた。
「居るよ!ここに!」
急にそのような声が響きわたる。
陽光はふと声のする方に視線を向ける。
そうするとさっきまで、不安に思っていた表情が一気に安心した表情に変わる。
声の方向には、女子の集団をかき分け陽光に近づこうとするさわの姿があった。
陽光のとなりまで来たさわは、いきなり陽光の腕を掴む。
急な行動に驚く陽光。
どうやらさわの作戦としてはこうだ。
この女子達は最終陽光と付き合うことを目的にしてる。
ゆえに、彼女がいると分かると退散するのではないかというものだ。
そんなさわの作戦を全く知らない陽光はあまりに急なさわの行動にあっけにとられている。
その目は正しく点になっている様子だ。
「な!」
さわは、陽光にアイコンタクトで『話を合わせろ!!』と必死に訴えかける。
「そうなんです..すいません」
陽光もさわの意図を理解したのか、必死に周りを囲んでいる女子に返答する。
一瞬、沈黙の時間が流れる。
「なーーんだ そういうことなら早くいってよ」
女子達も急な出来事に理解が追いついて居ないようだったが、陽光とさわを交互に観ながら二人がそういう関係であると勘違いしてくれたようだ。
さっきまで陽光に向けていたキラキラとした目は一瞬にして曇り、速攻その場から立ち去っていく。
どうやら作戦は成功したようだ。
やっと包囲から解放された陽光。
そっと胸を撫で下ろす。
「おまたせ!
邪魔せん方が良かった?
かわいい女の子に囲まれてたもんな」
「もーからかわないでください
危うく食べられるとこでした
ありがとうございます」
「食われるってやんや
てか急に彼女のフリとかしてごめんなー」
「いえいえ、最初はこの人急にどうしたんだと思いましたけど、名案でしたよあれ」
そのように冗談を交わしながら楽しそうに語らう2人。
「ねーーーあのおんな正直微妙じゃね」
そこにさっきまで陽光の周りを囲んでいた女子達の声が聞こえる。
2人に聞こえるよう明らかに大きな声で話しているようだ。
「それな!
明らかに釣り合ってないよね あの2人」
「B専ってやつだよきっと
それかママ活」
「あっ きっとそれだ!
お金払って付き合ってもらってるんでしょ かわいそうな女」
先程去って行った女の子達の笑い声が聞こえる。
明らかに悪意を持ち、2人を攻撃するために話している。
きっと先程の腹いせであろう。
先程の楽しい雰囲気がぶち壊しだ。
陽光の顔が、一瞬にして青ざめる。
さわのことを心配しつつもこんな時にどう話しかけていいか分からない..そんな表情だ。
2人の間に居心地の悪い雰囲気が流れる。
「私は全然気にしてないで!」
さわが、沈黙を破る。
「別に知らん私の人生に関係ないやつらに何言われても、なんとも思わんわ!」
下を向いている陽光の背中を叩きながら、そうたくましく言い切るさわ。
「しかし、どぎつい奴らやったなー
あんな人も世の中おるんやなー」
さわは、全く何もなかった。何も気にしていない様子でそう語る。
「....か.....ぃぃ..........です」
陽光が何かを呟く。
「えっ ごめん なんて言った?」
「いえ.. かっこいいですね 上月さんはやっぱり
僕なんかあんなこと言われたら、1週間は立ち直れないです..」
「そんな大げさなー」
「いえいえ、全然大げさじゃないです...
さわさんがそんなひどいことを言っているのに、僕は何も言い返せなくて..何も出来なくて...悔しいです
さわさんは、ほんとにすごくて優しくてかっこよくて最高の人なのに...
あんなこといわれて..」
陽光は背中を丸めて悲しそうな顔をしながら、そう話す。
「全然いいって、気にしてないから」
さわがそう言っても陽光はさっきなんで失礼なことを言う奴らに言い返せなかったのか、それをずっと悔いているようだ。
「今も... 傷ついているのは上月さんのはずなのに.... 逆に僕が励まされる形になっちゃって...
いつも上月さんに助けられていて.... 僕は何も返せていない...
不甲斐ないです....」
落ち込み続ける陽光。
見かねたさわが、口を開く。
「そこまで落ち込んでくれて逆に嬉しいなー なんか
私のことをそこまで考えてくれているやろ
人から思われるって幸せな気持ちや
大体、今日も佐藤くんから誘ってくれて、そのおかげで一緒に映画みれてめっちゃ面白かったし幸せやったよ
それも、全部佐藤くんのおかげじゃん」
さわはすこし照れながらも真っ直ぐな瞳でそう言う。
「いえいえ... 僕が来てほしいっていう頼みを聞いてもらったんです...」
陽光は、さわの真っ直ぐな気持ちに少し頬を赤らめながらも嬉しそうな表情でそう語る。
「私は単純に誘ってくれて嬉しかったで!
ただ、一つ不満なのは、さっきから佐藤くんが悲しそうな顔している所かなーー」
さわは、陽光の顔をのぞき込むようにして話す。
そんなさわに対して陽光も少し控えめな笑顔で返す。
その表情から、さっきまであった悲壮感が徐々になくなっていく。
しばらくして、2人は映画館を出るために歩き始めた。
「上月さん」
「ん? なんや?」
陽光くんが急に話しかけてきた。
「何かして欲しいことありません??」
陽光は、さわにそう尋ねる。
陽光のあまりにも急な提案。
さわも不意打ちを食らった気分だ。
「いやーお返しとかは全然大丈夫よ
そもそも助けたって、そんな大層なことしてないし
てかよく考えたら、部屋掃除してもらったり、看病してもらったり、色々やってもらって
あれ、私の方が佐藤くんに沢山借りがあるじゃん」
「全然そんなことないです。
僕の方が大きな借りがあります。
それに、何かしないと僕の気が済みません。
大体この前の、部屋の掃除とかご飯作りって迷惑じゃなかったですか??」
「全く! 滅茶苦茶ありがたかったし、すごく嬉しかったで
冗談抜きで」
「じゃあそれをやらせてください」
陽光のあまりにも急で予想外の提案に、さわの中での時間が止まる。
「え? どういくこと?」
さわは、つい聞き返す。
「毎日、上月さんに料理作らせてもらったり、部屋の掃除とかさせてください」
陽光はそう言い放つ。
大きく整った目は、真剣そのものだ。
「いやいや、そんな迷惑かけられへんよ」
「いや、これは僕がやりたいんです
それに上月さんは嫌じゃないんですよね?」
「そりゃやってくれるならありがたいけど...」
「だったら、問題ないんじゃないですか...?」
「うん... 確かになぁ...」
学校一のイケメンが毎日私のために、料理や掃除をしに来てくれる。
そんなことはありえないはずの提案につい納得してしまうさわ。
普通なら、同居なんて嫌がるものだ。
ましてや、異性となんて。
それなのに。
さわも陽光も、なぜかそこに迷いはなかった。
――私は、恋愛をしないって決めている。
そのはずなのに。
絶対に恋してはいけない、孤高のイケメンとの同居生活が、
こうして始まってしまった。
孤高のイケメンと同居決定!!
絶対に惚れてはいけない同居生活が始まる...




