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第17話 孤高のイケメンと繋がりの証明

「この問題解けるやついるかーー??」


今この教室では、数学の授業が行われている。

丁度昼休み直前の授業だ。


授業中でも朝の出来事について、周りで噂話されているような気がする。



『やらかした~』


上月こうつきさわは、授業そっちのけで今朝の出来事を頭の中で逡巡する。




今思い出してもついつい頭を抱えてしまう。





完全に佐藤 陽光ひかるの注目度・影響力を過小評価していた。





ちょっと1日だけ一緒に登校しただけでは、正直なにも騒動にはならないと考えていた。


まだ、私達は全く恋人同士でもないし。

たまたま通学時に会って、たまたま一緒に登校しただけだろう。

そんな感じに受け取られると安易に思っていた。



しかし、陽光はこう見えてクラスの全員、なんなら学校中の生徒が密かに注目している男だったらしい。


芸能界にいても違和感のない様な容姿にもかかわらず、彼女はおろか女性関係も全く音沙汰がない。

それは、恐らくコミュ症なのが原因の気もするが..


そんなことは関係なく、陽光の女性事情には誰しもが注目を集めていたのだ。




そんな陽光が今日初めて女子生徒と登校した。

相手はこれまで全く関わりが無いように見えていたさわ。


しかも、登校時にさわが陽光のバックを担ぎ上げているし、誰にも心を開かない陽光がさわとだけ親しそうにしている。



そんな姿に、クラス中では朝からザワザワと噂話が絶えない様子だった。


授業間の休み時間に誰と話しても何だか違和感のある様子を見せてくる。

聞きたいことがあるが、聞けない そんな雰囲気を常に相手からさわは感じていた。






今後どうなるだろう...?


クラスの女の子に疎まれる...?

関係を問いただされる...?


わからない...



今思えば、私は学校での陽光をあまり知らなかったことに気付く。


誰と仲が良いのか?

交友関係など殆ど把握していなかった。



そんなことをずっと考えている内に、数学の授業が終わった。



先生が今日何を教えてくれたのか....


全く記憶が無い。


さわは頭が何だかぼんやりとしている中で、昼休みを迎えた。




昼休みが始まった瞬間 近づいている影が見える。




さわは横目でその迫る影を確認する。

あれは、同じクラスの高橋 あやなさんだろう。


髪はツインテールでいつも綺麗にまとめられており、メイクはロリ系に少し地雷系が加わったような..上手くお化粧していることが伝わるそんな顔面だ。

正直言ってとても美しい容姿をしていて、いわゆる美少女高校生と言って過言ではないだろう。


おまけに彼女は、いつも陽光くんの隣に張り付き色目を使っていることで有名であり、学校では大体いつも陽光くんの近くにいる。


そんな彼女は何をしに来るのか..?

さわは頭の中で少し先の未来を想像し、シミュレーションをする。


問いただされる?

質問攻め?

警告?

怒られる?

修羅場になる?




どう考えても悪い未来しか想像できない。

思わず身構えしてしまう。




さわは、これまで全然恋愛経験が無かったため、女子同士のもつれた恋愛トラブルとは無縁だった。

だからこそ、自分がどうなるのか?どう対処すればいいのか?が全く分からないのだ。


想定のできない不安な未来に憂鬱な気持ちになるさわ。


「ねぇ なんで朝 佐藤くんと一緒に登校してたの??」


そんなさわの気持ちとは当然関係なしに、あやなはいきなり話しかけてくる。

眉間にしわが寄っていて、威圧感が感じられる表情をしていた。






「たまたま道で会ったからやけど」


さわも怯む必要はないと堂々とした表情で答える。


嘘だが、2人だけの秘密を隠すためだ。

しょうがない。



「ふーん たまたまにしては、勝手に佐藤くんのバック持ったりしちゃって」


「それは、たまたま辛そうだったから持っただけや」


「佐藤くんは初対面の子とは中々話しも出来ないのに、どうやってもったの?」





痛いところを突かれた。

確かにあの陽光が初対面の女子に頼んでバックを持ってもらうのは、さわでも想像がつかない。




「そ....それは、向こうもそんくらい限界やったんやない」


さわは、2人だけの秘密を守るために何とか必死に弁明する。


そんなさわに嫌気がさしたのか、あやなは大きくため息をついた。

とてもうんざりといった表情だ。



「単刀直入に言うわ あのね...






私は、あなたが佐藤くんのストーカーじゃないかと疑っているの」


「は?」



あまりにも、突飛なあやなの発言にさわは呆気にとられる。



周りでこそっと聞き耳を立てていたクラスメイト達も、一気に困惑の表情を見せているようだ。




そんな様子を尻目にあやなは主張を続ける。



「だっておかしい話じゃない


全く遅刻なんてしたこと無かった上月さんがいきなり遅刻して、しかも佐藤くんと登校するなんて

そんな偶然ある?

それに、知らない女子と全く関わりたがらない佐藤くんのバック持ってるだなんて、説明がつかないわ


恐らく、佐藤くんの登校中にストーカーしていたらトラブルになっちゃって、その結果一緒に遅れて登校したってことでしょ」




「違う ストーカーなんかじゃない」


さわは、とにかく必死に否定する。


「あのね 忠告しといてあげる


佐藤くんは、優しいから言わないだろうけど、すごく迷惑だからあなたの行為」


あやなはさわの否定を全く意に介さない。

そして、自分の妄想話を続けていく。


あやなの話は荒唐無稽であるが、どこかリアリティーのある話だった。




そのため、クラスの雰囲気としても一部があやなの言うことを信じ始める様な

そんな嫌な空気が流れ始めていた。




「だから、違うって言ってるやろ

たまたまやって」


当然、隣に住んでいて一緒に登校しているからとはどうしても言えずに何とかごまかそうとするさわ。


「だったら証拠見せなさいよ

あなたが、ストーカーじゃないって証拠」


正直、陽光に私はストーカーじゃないと言ってもらえば話は収まるだろう。


しかし、陽光は目立つのが大の苦手だ。

そのことは分かっている。


だから、そんなことをさせる訳にはいかない。



「なんでこっちがそんなことしないといけないの」


そう何とか必死に反論する。


しかし、あやなだけでなくクラス全体としてもさわがストーカーなんじゃ無いかという疑いの目が広がっている気がする。


さわの交友関係は、浅く広くといった感じであったため、この場面で大きな勇気を持って守ってくれるような大の親友は居なかったようだ。




みんな周りの空気に流されている。


なんとなく味方がいないような気持ちに陥って、段々と息苦しくなる。




そんな中、ふとあやなが目線を下げさわの筆箱をみる。



そこには、陽光からもらったシャーペンがあった。




そのシャープペンシルを完全に見つけてしまったあやな。



「え.....そのシャーペン 佐藤くんのじゃ...」





あやなはあたかも衝撃と言わんばかりに、手の平で口を押さえ驚いた表情をしている。




「こ.....これは..」


さわは、咄嗟に言葉が出なくなる。




それもそのはず、このシャープペンシルは陽光からもらったものである。


期末テストで色々教えてもらったお礼と私達2人で何かを共有したいという思いでくれたシャープペンシル。

2人にとって大事なシャープペンシルだ。






しかし、そんなことを言ってしまえば私達の関係が学校中にばれてしまう。



だから、真実を言うことはできない。






良い言い訳はないだろうか?



考えるが一向に思いつかず硬直するさわ。


そんなさわをあやなは待ってはくれない。



「絶対そうよ!

だってこの部分の傷とか同じ所についてるし


あなた 盗みまでしていたの...

そこまでして佐藤くんに近づきたいわけ?」




あやなは、さわに対してドン引きしているような様子でそう言った。


周りの空気もザワザワとしており、『ひょっとしてさわがやばい奴だったのか...』とさわがストーカーであることを信じてしまっている雰囲気である。




「ち....違う..」


さわは反論するが、小声でいつものような強気さはなく消沈している様子だ。




どうすれば良いか全くわからない。


頭は真っ白



周りは皆敵だらけに感じられ、目からは涙が零れそうだ。










「とりあえずこれは預かっておくから」






そう言って、あやなはさわの筆箱からシャーペンを取り上げる。






「待って ダメ」



それだけはダメだとさわは、シャーペンを取り返したい気持ちはあるが、この状況で身体が動かない。





あーもう疲れた 全てを諦めてしまいたい。





シャーペンも陽光も全て諦めてしまえば、こんな思いはしなくて良いのに...


そんな思いがふと心の中に浮かんだ。




陽光と関わることがこんなに大変だなんて...

こんなに騒ぎになるなんて...

こんなに誰かから攻撃されるなんて...




もううんざりだ。




こんなに問いただされたり

悪者扱いされたり


皆から白い目で見られたり




もう陽光と他人になってしまえば、生活は元通りになるだろう...


丁度数ヶ月前の様に。.







そうだ。陽光くんとの関係はこれっきりにして、関わらないでおこう。


















そんなのは嫌だ。










「返して!」


さわは威勢よく立ち上がり、あなやが手に持つシャーペンを取り返そうとする。





「ちょっ なによ!」




あやなも抵抗する。


そうして、もみくちゃになる2人


さわとあやなは、陽光のシャーペンを奪い合う。


そんなある種の乱闘騒ぎに、周りに居たクラスメイトもヤバいんじゃ無いかと思い始める。


そんなとき。











「返してください」





さわの耳にいつも聞いている優しい声が届いた。




目を向けると、そこにはいつも隣に居た大きな男の子の姿があった。





陽光はあやなが持っていたシャーペンを優しく掴む。


まるで修羅場となっていた教室だったが、陽光が来たことで急に雰囲気が明るくなる。







陽光はシャーペンを大事そうに両手で持ったまま、さわに渡した。





「はい さわさん」


そう言って、優しい表情をしながらさわにシャーペンを手渡す。



さわと陽光の親しそうな雰囲気、そしてナチュラルなさわさん呼びに少しザワザワする教室。







そんな中、あやなが切り込む。



「ひかるくん!


私 上月さんがストーカーじゃないかって疑っているの...

根拠も色々あるわ


ねぇ大丈夫? 

私で良ければ力になるわ」



「さわさんはそんな人じゃありません」






陽光は即座に言い返した。



決して声量は大きくないが、強い気持ちの乗った一言だった。




「さわさんは僕にとって....















とてもとても 大事な人です」


陽光は真剣な表情でそう言い放った。


衝撃の一言に、目の前にいるあやなは動揺を隠せない様子だ。

なんなら、動揺を隠せないのはあやなだけでなく教室中の様だ。



教室中が一気に騒がしくなる。


とその時









「さわさん 手 怪我してる」




陽光が急に私の手を掴み、話はじめた。


「保健室いきましょ」


陽光はさわの手を見ながら、さらにそういう。



「え?」


さわは困惑の表情を見せる。

なぜなら、全く怪我などしていないからだ。



しかし、関係ないと陽光は両手でさわの手を優しく包み廊下に出た。


喧噪な教室を背に、擬似的に手をつないだ2人は廊下をひた歩く。





とにかく人目につかないようにと歩き続ける2人。




中々誰も寄りつかない校舎の端の廊下まで避難することができた。




怪我をしたというのは、どうやら陽光の機転を利かせた嘘だったようだ。




「ふーー 緊張した

すみません...長いトイレに行ってて遅くなっちゃいました」


やっと緊張の糸が切れたのか、陽光は深呼吸をして安堵の言葉を漏らす。




一方さわは、未だにうつむいたままだ。

その表情はどこか悲しいというか、先程の様々な出来事にショックを受けている様子に見える。







「さわさん......

大丈夫ですか....??」




そんなさわの様子に気付いた陽光が、さわに恐る恐る話しかける。




「おう!

さっきはほんと災難やったわーー」


さわは元気そうな表情を陽光に見せる。




バサッ




その瞬間、陽光がさわのことをギュッと抱きしめた。


さわは一瞬ビックリするが、抱き寄せられた陽光の胸の暖かさに心底安堵する。





「無理しなくていいんですよ

悲しい時は悲しんでもいいんです」






陽光は、胸もとにいるさわに優しく話しかける。



そんな一言にさわは、少しビックリしながらもその一言を受け止めた様子だ。

ゆっくりと口を開く






「悲しむこと・辛いと思うことに意味は無いと分かっている

早く立ち直らないと...












でも今だけは、悲しんでもいいかな」


さわは、陽光の胸のシャツを軽く掴みながらそう話す。









「はい


いつでも頼ってください」


そんな陽光の一言を合図に、さわは涙を流し始めた。








「怖かったああ」


そう言いながら泣きじゃくるさわ。


「もう 大丈夫ですよ」


陽光はそう言ってさわの頭を優しく撫でた。


廊下の隅に2人。

その空間はまるで2人しか立ち寄れない絶対領域の様だった。





















「もう大丈夫!

ありがとな!」


あれから数分が経っただろうか

さわは気持ちの整理がついたようで、元気よく陽光に話しかけている。





「でも、ごめんな

私のせいで秘密ばらしちゃって」


「いいですよそんなの

秘密なんかより、さわさんの方がよっぽど大事です」


普通のことのように言い切る陽光。


そんな陽光にいちいち照れくさい思いを抱いてしまうさわ。


「しかしどうしようかこれから...」


色々と私達の関係がバレてしまった。

どうすれば良いだろうか頭を悩ませるさわ。







「もう、いっそのこと

全部話しませんか?」


「え..」


「同じマンションで仲良くなって、一緒に登校していたとか」


「確かにそれがええわ



私どうやら隠し事がめっちゃ苦手やわ

いい言い訳全然思いつかへんかった」


「じゃあそうしましょ!」


「そやな!



しかしあれや...

まさかひかるからそんな提案が出るなんて...」


「もー僕をなんだと思ってるんですか!





あ...でもクラスメイトへの説明はさわさんがお願いします

僕だと上手く話せる気しないんで...」


「なんやそれ笑」



そんないつも通りコミュ症な陽光の姿に、さわは平常心を取り戻し安心感を得る。







その後、さわはいつもの調子でさらっとクラスメイトに陽光との関係を説明した。


同じマンションに住んでいること

それをきっかけに少し前から仲良くなったこと

時々 一緒に登校していることなど

半同居状態で時々一緒に出かけるとか告白されたことがあるとかは流石に言えなかったが、それ以外は誤解が無いように説明したつもりだ。



ごく一部のクラスメイトを除いて殆どの人は、2人の様々なことに驚いてはいるものの納得しているようだ。

元々さわはクラスからの人望が厚かったことも相まって、一件落着といった様子だ。


あやなも一応謝ってくれた。

まあ、私達が変な隠し事をしたせいでこうなった。


そのため、私も少し申しわけない気持ちを抱きながらその謝罪を受け取った。











ここは帰り道。




いつも通りに授業を受け、2人は相変わらず学校から少し離れた場所で待ち合わせをし一緒に帰っていた。


「怒濤の1日でしたね」


「ほんとやわ」




横並びで歩きながら会話をする2人。


「しかし今日のひかる




ほんとにかっこよかった」




「え...」


さわの急な発言に思わず動揺する陽光。




「ひかるってああやって人の前に立つの苦手やし、目立つような行動するの嫌なタイプやん


なのにさっきあんな大勢の前声上げてくれたやん

私守るために


めっちゃ勇気いることやりきってて




しぬほどかっこよかった」


さわは、頬を赤らめながらも真剣な表情でそう言い放つ。


「本当にありがとう」


さわは立ち止まり、そう言って深々と頭を下げた。







「いやいや そんな大げさですよ

頭をあげてください」


陽光は慌ててそう返す。




そう言われ頭を上げるさわ。

と...そこには顔を真っ赤にして照れた表情をした陽光がいた。



2人の間に微妙な空気が流れる。




目の前にいるかっこいい人の一言でその沈黙は破られる。



「ほ...惚れました?」


「ん...?」


「僕に惚れてくれました?」


あまりに突飛な質問に一瞬呆気にとられるさわ。

しかしすぐ真面目な表情に戻りながら、真剣な視線で陽光の質問に答える。





「うん」


恥ずかしそうな表情をしながらも確かにうなずきながらそう言った。






「やっとか」


陽光はそう言いながら、天を見上げる。





続けて


「さわさんとの約束でしたもんね

僕がさわさんを惚れさせるって






あれから僕はそこのことばかり考えていたんで」



陽光は視線をさわの方に戻し、少しはにかみながらそう話した。









「ほんとにかっこよかった」


そんな陽光に対して、さわは真剣な目でそう言い放つ。







「これからも..





もっと沢山 惚れてください」


陽光は恥ずかしそうにしながらも満面の笑顔を私の方に向けてくれた。






そんな陽光の優しい笑顔をみて、さわの心にはふとある気持ちが自然に湧いてきた。





『ああ.... この人とずっと繋がっていたい』





その時さわは瞬時にあることに気づく。


『そうか!





繋がっていることを証明するために、人って付き合うんだ!』






さわは、今 この瞬間 生まれて初めて付き合うこと、そして恋人になることの意味を理解した。






それから、隣の陽光くんを見てある思いが湧いてくる。



目の前にいてくれているこの人と...





この一緒にいて楽しい人と

この優し過ぎるほど優しい人と

このちょっとお茶目でかわいい人と

この時々ガチでドキドキさせてくれる人と

この唇が柔らかくて気持ちいい人と

この近寄るたび安心する匂いがする人と

このここぞという場面では最高にかっこいい人と

このいつもは少し頼りないけど困った時は必ず助けてくれる人と

このハグするだけで安心して何もかも忘れさせてくれる人と

この一緒に目標に向かって頑張れる人と

この自分の弱点と向き合いとても尊敬出来る人と





この大事な人と




繋がっている証明が欲しいと思った





つまり









恋人になりたいと








そう確信したのだ。


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