幕間
「あのお嬢さん、財布落としましたよ」
体格のいいお兄さんが笑顔で話しかけてきた。ちょっと威圧されて怖いけど、なんとなくやさしそうな雰囲気の笑顔の人だ。
「ありがとうございます。私ったらドジで財布とかすぐ落としちゃうんですよね」
「そうなんですか? 気をつけたほうがいいですよ、最近いろいろ物騒ですからね」
「そうですよね、気をつけないと。宇宙海賊なんて恐ろしい人たちもいますしね」
「最近は物騒になってきてますよね。じゃあ気をつけて帰ってくださいね。女の夜道はそれだけで危険ですよ?」
「もう、脅さないでくださいよ!」
やっぱりやさしい人のようだった。人を見た目で判断するのはよくないわね。気をつけないと。
そんなことを考えていると、濡れたアスファルトに足を滑らせてしまった。さっきまで少し降っていた雨のせいだろう。
「きゃああああああああああああああああああ」
年甲斐もなく、みっともない叫びを上げてしまう。
「だから気をつけてくださいって言ったでしょ……まったくあぶなっかしい人だなぁ」
笑いながら、さっきの男の人が手を差し伸べてくれる。これは恋の予感かしら。
ちょうどお店から男の人の連れの人たちが出てきる。手を握っているところを見られてしまった。
「なんだ広ちゃんナンパかぁ?」
「夜中にナンパなんて職務怠慢でありますなぁ」
男の人が酔った友人たちにからかわれている。なんだろう、恥ずかしいな。
誠実そうな人だし、あんがいかわいい人かも。
話を聞くと職業は警察官だそだ。今日は仕事仲間との飲み会だそうで、よく見れば彼も少し赤くなっている。それがお酒だけじゃなければうれしいかな。なんてちょっと気が早いかしら。
そうして男の人たちと話しこんでいると、突然雨が降ってきた。でもにおいがきつい。
それは、雨ではなく灯油だった。
そして――
幕間 完




