第96話 アンゴル・モアとの決戦
全てのオーブを集めエイレーネの力である飛翔の奇跡を使い、羽田空港へと向かう。
戻ってみるとそこにはレインボーランドに行く前よりも黒い雲が浮かび、海は津波の様に荒れ、雷はあちこちに落ちていた。
羽田空港で晃一郎と澄香が待っていて、そこに合流する。
「みんな! 無事に戻ったか!」
「ただいま! 今この世界はどうなってるんですか?」
「アンゴル・モアの影響で悪人たちは好き放題に行動し、自然災害が世界中に襲い掛かり、それが原因で全世界で戦争が勃発しています!」
「そんな……! でも日本軍はどうしてここに?」
「アンゴル・モアの討伐のために唯一戦争をしていないんです! それよりも皆さん、随分とたくましくなりましたね……!」
「今の私たちには、ご先祖様の力もあります。皆の衆はここで待ってください」
「それじゃあみんな……行こう!」
「「「うん!」」」
晃一郎と澄香は世界で起きていることを話し、さくらたちは覚悟を決めてアンゴル・モアに挑むために飛翔の奇跡を使う。
さくらたちが空に向かおうとすると晃一郎がさくらの腕を急に掴む。
「待ってくれみんな! 俺にはみんなほどの魔力はないが、俺のありったけの魔力を受け取ってくれ」
「社長の魔力なら心強いです!」
「私のも受け取ってください! 雨の巫女として、皆さんのお役に立ちたいです!」
「澄香さんもありがとうございます!」
二人のわずかに残った魔力を全部受け取り、魔力が最大となる。
澄香の雨の巫女としての魔力、シロンの王族としての魔力、そして世界中のわずかながら希望を抱いている人々の魔力を受け取り飛翔の奇跡で空高く飛ぶ。
高度が上がるほどマイナスエネルギーのが大きくなり、大型台風以上の風圧がさくらたちを襲う。
それでもエイレーネの力は偉大で、その風から守ってくれたのか恐怖を感じなかった。
「来たなアルコバレーノ。私はお前たちが来るのをわかっていた。見よ、世界中の絶望に染まったこの光景を。これこそ私が望んだ世界、私が創り上げた楽園だ。お前たちが最後の希望であるのならば……その最後の希望を摘み取ろうではないか!」
アンゴル・モアに近づくととてつもないマイナスエネルギーで、近づくものを拒むかのようにピリピリさせる。
そしてさくらたちに気付いたアンゴル・モアはさくらたちを待ち構えていた。
さくらたちは戦闘態勢に入り、ついにアンゴル・モアと戦う。
「何つーマイナスエネルギーだよ……!さすが地獄の大魔女だな……!」
「ボクに任せて! あんなやつをこの拳で!」
「待て橙子! 奴の周りに大きなバリアが張られている! このまま突っ込むのは危険だ!」
「うわっ! 本当だ!」
「このまま何も出来ないのでしょうか……?」
「いいえ、まだ希望はあります! 先輩方、それぞれのオーブに祈りを捧げてください! 私はその間、アンゴル・モアの攻撃から皆さんを守ります!」
「白銀さんって、いつの間にたくましくなったんだ……!」
「みんな! 祈りを込めるよ!」
「「「うん!」」」
雪子はさくらたちの祈りをサポートに回りアンゴル・モアの攻撃からさくらたちを守る。
さくらたちはオーブを手に取り、それぞれの賢者に祈りをささげる。
「小癪な! その前に私がお前たちを葬り去ってやろう!」
「そんな事はさせません! はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
アンゴル・モアの大きな手によって叩き潰されそうになるも、雪子の氷魔法で手を弾き返し、サーベルで風圧を斬りかかる。
そして防ぎきった雪子はさくらたちに合図を送る。
「白銀さん!」
「今です! 早く祈りを!」
「おう! 赤き炎よ――心の情熱を熱く燃やし、前に突き進む力を与えたまえ!」
「オレンジの光よ――溢れる元気で向上し、無限の可能性を与えたまえ!」
「黄色い稲妻よ――どんな時も負けない笑顔で、人々に希望を与えたまえ!」
「緑の風よ――癒しのオーラと、知性溢れる心地よさを与えたまえ!」
「青い海よ――厳しくとも優しい波で、温かい心を与えたまえ!」
「紫の闇よ――底に落ちても這い上がる勇気で、導きを与えたまえ!」
「咲き誇るピンクの花よ――万物に喜びの愛で、平和の楽園を与えたまえ! 希望を導く七色の光! 輝け!」
「「「アルコバレーノ!」」」
さくらたちはオーブに祈りを捧げ、アルコバレーノのスローガンを高らかに唱える。
次第に七色の光は強く輝き、オーブが懐から出てきてアンゴル・モアの周りを囲う。
すると光は賢者たちの姿へと変わり、今まで以上のプラスエネルギーでバリアを破壊した。
「愛する私たちの子孫の皆さん、私たちに出来るのはここまでの様です。もう皆さんは私たち賢者の力を超えています。私たちにも出来なかったアンゴル・モアの討伐を、先祖である七使徒が遺した最後の希望を皆さんに託します。私たちが愛したこの世界を……皆さんの手で守ってください。私たちは、遠い天国でご先祖様の七使徒たちと共に、この天から見守ります」
ローザを中心に7人の賢者たちはさくらたちにこの世界を託され、さくらたちは決意を新たにアンゴル・モアに挑む。
雪子は賢者たちを見るのは初めてで、威厳さと美しさに魅了されていった。
「あの方々が先輩方のご先祖さま……!」
「やっぱりご先祖様は凄いなぁ……!」
「我が子どもたちよ、私の元へ旅立ちの時です」
「エイレーネさま。ただいまそちらへ向かいます」
エイレーネの優しい声に導かれた賢者は天高く昇っていき、さくらに最後の力を与えていった。
雪子が防ぎきれなかったダメージや疲労も雪子を含めて回復していた。
アンゴル・モアはバリアを破られてもなお、余裕の笑みを浮かべているようだ。
「ほう、我がバリアを破るほどのプラスエネルギーがあるとはな。人間も大した生命力と魔力なものよ。しかし無駄な事だ……私の力の前では誰も私には勝てぬ。さぁ来いアルコバレーノ。闇と絶望の世界を私から救ってみせよ」
「ご先祖様の願い……絶対に叶える! みんな! いくよ!」
「よっしゃあ! いくぜ!」
「ボクだって! ほむらに続くよ!」
「いざ、参る!」
ほむらは一番槍として特攻し、橙子は三節棍で様子を見ながらダメージを負わせ、ゆかりの手裏剣は一段と大きく素早くなり、さらにダメージが通るようにる。
みどりと千秋は拳銃や弓矢で遠距離攻撃を仕掛け、雪子と海美はリーチを守りながら刀剣による攻撃をする。
さくらはバトン型の棍棒で近距離と距離を詰め、アンゴル・モアが攻撃を仕掛ければリボンに変更してリーチを取って攻撃する。
アンゴル・モアは痛くも痒くもない表情で腕を横に薙ぎ払い吹き飛ばす。
「まだまだ弱い……ふんっ!」
「きゃっ!」
「みんな! 大丈夫!?」
「海美ちゃん!」
「危ないところだったね……!」
「さくらさんも!」
「ご無事で何よりです!」
「白銀さんも防御魔法を覚えていたのか!」
「これは皆さん心強いですね!」
「よーし、みんなで力を合わせていくぞ!」
雪子は氷のミラーシールドで反射、さくらはリボンによる渦の盾で吸収、海美の左手から現れた青い鋼鉄の盾で防御をする。
ほむらは先頭にいて間に合わなかったが、それでも槍を前で回して攻撃を防ぎ気合と根性で鼓舞をする。
さくらたちはアンゴル・モアの圧倒的な力を前にしても絶望することなく挑み続ける。
つづく!




