第95話 飛翔の奇跡
全てのオーブを集め終え、エイレーネの力を得るためにさくらたちはシロンの待つレインボーランドへと戻る。
レインボーランドに到着すると、駅から出たところでシロンが待っていた。
「みんな、よく賢者にも認められ、全てのオーを集めてくれた。こうなるのはきっと何かの運命だと僕は思う。雪子は。エイレーネさまを祀る聖歌を歌うために代々王家に伝わる歌姫のドレスに着替えてもらうよ」
「わかりました、では着替えてきます」
「更衣室なら兵のみんなが用意しているからそこでよろしくね。ではさくらたちには愛と平和の女神・エイレーネさまの御力を得る儀式の説明をするね」
「ついに神様の力を借りるんだね……!」
「あのアンゴル・モアを倒すために女神様の力が必要だからね」
「何だか緊張してきた……!」
「そう委縮する事はないさ。エイレーネさまは慈悲深くて心が温かく、とても優しい方だと聞いた。君たちはオーブの力と君たち自身の魔力、プラスエネルギーを天に捧げるんだ」
「アタシたちは何をすればいいんだ?」
「みんなが集めたカラーオーブを順番通りにこの小さな祭壇に置き、神を呼びよせるように祈りを捧げるんだ。心の中に闇があったとしても、その闇を排除しようとしてはいけない。闇をもコントロールして支配し、自分のものにするんだ。心の魔力で最も難しい事だが、君たちなら出来るって信じている」
シロンはさくらたちにわかりやすいように儀式の説明をする。
さくらたちはそれぞれの色のオーブを手に取り、いつでも儀式を始める準備が出来た。
「シロン王子、雪子さまの準備が出来ました!」
「わかった、早速だが彼女を呼んでほしい」
「ははっ!」
雪子の準備も整い儀式の始まりが近づいてくる。
雪子は恥ずかしがりながらさくらたちの前でお披露目をする。
雪子は純白ながら氷を連想させる青とのグラデーションドレス姿で、さくらたちを一瞬で魅了した。
「皆さん、お待たせしました」
「お姫様みたい……!」
「やはり細氷の歌姫の名はダテじゃないな」
「とっても素敵ですよ♪」
「ありがとうございます。何だか恥ずかしいです…」
「雪子、聖歌の歌は覚えているかな?」
「はい。いつもお母さまが歌っていました」
「その曲は愛と平和の神で全能なる主の御力で人々の心を癒し、マイナスエネルギーを振り払う聖歌なんだ。プラスエネルギーの高い人がその聖歌を歌うと、アンゴル・モアを弱らせるだけでなく、人々のマイナスエネルギーを一瞬で浄化させることが出来るんだ。君の身近なところで似たような体験はあったかい?」
「はい。お母さまがこの歌を歌うと近くにいる不良たちは更生し、犯罪者たちは泣きながら反省して自首し、泣いていた子どもたちも泣き止み、さらに負の感情を持ったすれ違いの人々も心が晴れて街が平和になったと聞きました」
「姉上には歌で平和を築く力があったからね。その血を受け継いでいる君ならエイレーネさまを呼ぶことも出来るはずだ。信じているよ」
「恐縮ですが、わかりました。私の歌で平和を築けるならお任せください」
さくらたちは七色のカラーオーブを祭壇に順番通りに置き、天に向かって祈りを捧げる。
雪子は覚悟を決めた顔つきで祭壇に上がり、シロンが集めた聖歌合唱団と共に聖歌を歌う。
その歌声は聞くものの心に響き、疲れとストレスがなくなっていった。
雪子のソロパートになると合唱団も驚きのあまりに瞬き一つもせず見守っていた。
歌詞を日本語に訳すと『愛と知恵、勇気、情熱、平和、優しさ、助け合い、思いやりなど人間にとって天国的なエネルギーを謳い、心の中に闇という魔物がいる、だけどその魔物と一体化し、コントロールして支配した時、新たな光は見えてくる。
闇を排除するのではなく、自分のものにして糧にし、新しい光を生み出すという歌詞だ。
雪子の歌に反応するようにカラーオーブは光りだし、七色の光は天へ昇っていった。
「私はエイレーネ。私を呼んだのはあなたたちですね?」
「あなたがエイレーネさま……!」
カラーオーブが天に昇ると七色の光がまばゆく光り、神殿にいる全員の目を眩ませた。
光が落ち着くとそこには七色の光に包まれた絵画にもよく描かれている優しそうな金髪のロングヘアの女神で、声も優しくて癒されるようだった。
シロンもエイレーネを見るのは初めてで、あまりの優しい雰囲気に委縮するだけだった。
「すごい……! 心が浄化されるみたいね……!」
「何だか何もかもがポカポカする……」
「はい、あなたの御力が必要なんです。このままだと私たちだけでなく、全ての命が奪われてしまうのです。だから――」
「大丈夫です。あなたたちの心にアンゴル・モアが浮かんでいます。話さなくても私にはわかります。あなたたちのプラスエネルギーは本物です。いかなるマイナスエネルギーをも浄化させ、そしてあなたたち自身の闇を越えていった。そんなあなたたちに力を与えます。私が手に入れた『飛翔の奇跡』を受け取ってください。その力は楽園にいるかのように空を自由に飛び回れる力があります。ただ魔力の消費が激しく、使い果たせばしばらくは眠ってしまいます。使い道を謝らないでくださいね。さぁ、私の力を誇り高き魔法少女に与えたまえ」
エイレーネはさくらたちに飛翔の奇跡を授け、魔力を使うが空を飛べる魔法が使えるようになる。
さくらたちは身体中が軽くなり、本当に宙に浮いているような感覚になった。
「ではアルコバレーノの皆さん、飛翔の奇跡の使い方は魔力を集中させ、宙に浮かぶことをイメージするのです」
「わかりました。では――っ!?」
「最初は戸惑うかもしれませんが、時期に慣れてくると思います。この力でアンゴル・モアを討伐し、世界を真の平和に導いてください。私は天国であなたたちのご活躍を見守っていますね――」
飛翔の奇跡を試したさくらは急に宙に浮いたことに驚き、背中には白い翼が生えていたことにほむらたちはビックリする。
まだ慣れていないので力を使いこなせないが、練習をすることで使いこなせると言い残してエイレーネは天国へ還っていった。
「ありがとうございます……! 愛と平和の女神、エイレーネさま……!」
「あの方が僕のご先祖さまで愛と平和の女神・エイレーネさま……!」
「シロンさん……私も何だか懐かしさを感じました……!」
「神って本当にいたんだな……!」
「うん……。難しい事は言えないけど……ボクたちにも希望を与えられた気がする…!」
「それじゃあみんな、ボクたちも飛翔の奇跡を試してみよう! 一刻も早くモノにしてアンゴル・モアの野望を止めないと!」
「うん! 世界中から笑顔を奪うなんてさせないもん!」
「ああ! ここまで来たら全力で止めるぜ!」
「そうとわかればすぐに特訓をしましょう! 私たちの希望のためにも!」
「あのっ! 私も試してもいいでしょうか……?」
「もちろんです! 白銀さんのお力も必要ですから!」
「協力に感謝する! 白銀がいれば心強いからな!」
「よーし! みんなで特訓してアンゴル・モアを倒すぞ!」
「「「おー!」」」
エイレーネの飛翔の奇跡に慣れるために一晩で特訓し、ついに飛翔の奇跡に慣れてきたさくらたちは人間界へ戻る。
シロンによって旅の扉で羽田空港まで送られ、さくらたちアルコバレーノは最終決戦に挑むのだった。
つづく!




