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第93話 ネビウスの町

 ネビウスの町のに着き、ラテン系のヨーロッパ風の町並みで。男の子が剣術を学び、女の子は家事を学んでいる。


 海に恵まれている町なので港は海の幸が多く獲れていた。


 西洋でも雰囲気はスペイン、イタリア、フランス、ポルトガルといった国々を合わせたような町で、ゴンドラや凱旋門(がいせんもん)、サグラダ・ファミリアのような建物もあった。


「西洋風のファンタジーの世界みたいだぜ!」


「この魚すごく美味しいよ!」


「剣だけでなく槍も売っているんだね」


「うむ。まさに西洋の地にいるというものだな」


「ここは確かブルーオーブだったわね」


「そうですね青井さん。一刻も早くアンゴル・モアの絶望から救わないといけません」


「白銀さんは本当に海美のことが大好きだな。よっしゃ、聞き込みするぞ!」


 海美はブルーオーブを求めて町人たちに聞き込みを開始する。


 町人は海美を見かけると魚介類を差し入れし、海に恵まれた町なんだと実感する。


 海美が歩いているとちょうど漁から帰ってきた漁師が海美に声をかける。


「あなたたちは確か、レインボーランドを救った救い主じゃないか」


「救い主だなんて大袈裟(おおげさ)ですよ」


「いえいえ、あなたたちに会えただけで恐縮ですよ。しかも5つもオーブを集めただなんて」


「オーブを知っているんですか!?」


「ええ。この町にはブルーオーブがあるサファイオ神殿があるんですが……最近この町を襲った津波で神殿が沈んでしまって。それにその神殿のあった場所に大きな竜巻が発生して誰も近づけなくなったんです。おかげでアズーリンさまの御力を得る事も、神殿を守り抜く事もできません。町のみんなはその事を知ってて、取りに行く人を危険に巻き込みたくないと思って黙ってたんですよ」


「そうでしたか。その竜巻をなくす方法はわかってますか?」


「ひとつだけあるとすれば……アズーリンさまの血を受け継ぐ人間の魔力が必要と学者たちは言ってました。ただアズーリンさまは行方(ゆくえ)が分からなくなって1000年も経ってるから血を受け継ぐ者の情報がないんです。」


「そのアズーリンさんはどんな方でしたか?」


「この町が誇る最高の剣士で、美しい女性ながら剣術では屈強な男でも勝てず、水魔法の使い手だと聞いています。水魔法には二種類あって、騎士になる海水タイプと魔導士や雨の巫女になる淡水タイプとあります。アズーリンさまはどちらも使え、とくに海水を使った水魔法に長けていて伝説のビッグウェーブ・エクスカリバーを所持していました」


「海美ちゃん、それって……!」


「ええ、もしかしたら……。あの、よければ私にその竜巻を消させてくれませんか?」


「無理だ! いくら救い主さまでもそんな危険な事に巻き込みたくないよ。悪い事は言わない、やめてほしい」


「私たちにはどうしてもアズーリンさんのお力が必要なんです。あのアンゴル・モアに対抗するには賢者の力じゃないとダメなんです。それに私たちの帰りや勝利を待っている人が大勢いるんです」


「そうか……わかった、決して無理はしないでね。竜巻が見える場所はここから東にあるコバルティア港の正面にある。あなたたちにご武運を」


 漁師の情報によってサファイオ神殿があることを知り、海美は決意をしてコバルティア港へと向かう。


 サファイオ神殿は最近沈んでしまい竜巻も発生していて誰も近づこうとしなかった。


 この竜巻を消せばサファイオ神殿には入れると踏んだ海美はコバルティア港に着くとすぐに変身をする。


「ふぅ……。この一撃に全てを込めて……いくわよ!ビッグウェーブ・エクスカリバーッ!」


 剣から放たれた大波は竜巻に直撃し、その竜巻が二つに大きく割れる。


 すると徐々に竜巻の威力が弱まり、海の様子も落ち着きを取り戻していった。


 町人たちは海美の必殺技に驚いて港へ集まり、竜巻が消えた瞬間に拍手をしていた。


 必殺技が通過した場所は海水が干上がり、浅瀬(あさせ)や砂浜の一本道が目の前に現れ、まるでアトランティス大陸の建物みたいな神殿が姿を現す。


 海美は決意を決めて一本道を進んで中に入り、干上がって間もないからか床は海水で濡れていて酸素が薄かった。


 奥に進むほど視界が暗くなり、酸素も薄くなって呼吸が苦しくなってくる。


 最深部に着くと祭壇にブルーオーブが置かれていて、警戒をしながら手に取れるくらい近づく。


「問おう、君は私の力を欲するのか?」


「あなたは……?」


 ブルーオーブを手に取ろうとした瞬間、青い光がまばゆく光りだし、海美の目を眩ませる。


 すると光は人の形になり、次第にロイヤルブルーの髪色で後ろでシニヨン結びをしている凛としたスレンダーな女性騎士となる。


「ほう、私を知らないとは随分時が経ったのだろう。私は水の剣士アズーリンだ。君は随分私と似ているようだな」


「あなたがアズーリンさんですね。私は青井海美です。あなたをずっと探していました」


「なるほど……ではあの時の少女という事か。君の目を見ればわかる。よほど深刻な状況なのだろう。そうなればすぐに私の力が必要だろう。だが――」


「やはりあなたと戦う運命なんですね……。多くは語らないのが騎士道らしいですね」


「理解が早くて助かる。君が私の力を得るのに相応(ふさわ)しいか、試練といこうではないか」


 アズーリンは海美を瞬時に理解し、再会を喜んだ。


 海美もブルーオーブを求めている理由をわかってもらい、アズーリンに嬉しそうに詰め寄る。


 しかしアズーリンは剣を抜き、海美は試練としてアズーリンと対決をすることになった。


 アズーリンは海美の剣さばきを見るために奇襲をしかけ、海美はフェンシングのように弾いて距離を取る。


「私の動きを防ぐとは、君はなかなかの腕前だな」


「みんなを守るために私がやらないといけないもの!」


「なるほど、君の覚悟を聞けて感謝する。だが君のその覚悟では私には勝てない! はぁぁぁぁぁぁっ!」


「うっ……!」


 アズーリンの圧倒的な技のレパートリーに海美は次第に押され始める。


 それでも海美も技のタイプなので防ぎきる。


 しかしギリギリだったので徐々に疲れが目立ち始め、剣だけでは追い付かないので盾を使って攻撃を防ぐ。


「結構ギリギリだったわ……」


「見えない盾か。海に沈む岩のように硬いな。ギリギリのところで防ぐとは、あの時より相当強くなったものだ」


「はぁ……はぁ……!」


「君は敵が急激に強くなったと思えるかい?」


「はい、そうなんです。私たちも強くなっているのですが、敵もまた強くなっているのは同じだって痛感しました」


「なるほど……敵が強くなっただけではないようだな。かと言って君たち自身が弱くなったわけでもない。ということは剣でのパターンが底を尽きたのではないか?」


「それは……」


 海美の成長に感心したアズーリンだが、同時に敵もさらに強くなっていることを察する。


 そして海美は剣術をフェンシングや西洋剣術のみにとらわれていて、片手や両手での剣術までは学んでいなかった。


 海美は指摘されて黙り込み、小さくうなずいてしまうう。


「図星のようだな。何故無限の可能性を有限にしてしまうのだ? 剣士たるもの無限の可能性を捨てず、民の希望になるのだろう。心のどこかで諦めたり自己満足しているのではないのか? ところで君の夢は何だ?」


 アズーリンは突然海美に将来の夢を聞き、海美も急な質問に困惑する。


 しかし今までの試練での話を聞いていた海美は冷静になり、正直に自分の夢を話すことでアドバイスをもらおうとする。


「医者になって……体だけでなく心の病気に苦しむ人々を救いたい。そんな人々の生きるサポートをして、よりよい世の中にしたいです!」


「なんだ、明確な夢があるじゃないか。ではもう答えはわかったな。その無限の可能性を捨てるな。私も魔力をこのオーブに封じられたが人間界で生き延び、君の代まで血を受け継ぐ事ができた。その無限の可能性は(いくさ)でも同じではないか?」


「確かにそうですね。それに……これ以上時間をかけられないわ」


 アズーリンの言葉に励まされた海美は剣術の無限の可能性を信じ、進化した西洋剣術をはじめて実践する。


 アズーリンは海美の急成長に感心し、無限の可能性を海美に託せるかどうかを試すために全力を出そうとする。


「ほう……君も多くは語らない上に、覚悟は出来上がったようだな」


「多く語っても理解されなければ意味はないですからね……。あなたのアドバイスは私も参考になりました。だからこそ……あなたを超えてみせます!」


 海美は完全に吹っ切れたのか、アズーリンの剣術に対してはじき返し、徐々に自分なりの剣術でアズーリンから形勢逆転させる。


 しかしアズーリンもただでは負けない剣士で、海美が疲れたタイミングで切っ先を海美の首元に突き刺そうとする。


「残念だったな! これで終わりだ!」


「いいえ! まだよ!」


「なっ……!?」


「盾は守るだけのものじゃないわ! こうやってカウンターで体勢を崩したり、体当たりや殴打で攻撃も出来るのよ!」


「くっ……! この短期間でここまでの可能性を……!」


 海美はアズーリンに剣を手元から弾かれるも、左手で盾を召喚しては盾で体当たりをしたり叩いたりしてアズーリンの予想を超える攻撃をする。


「ここから私のターンよ!」


「しまった! 剣を取らせてしまった!」


 そしてアズーリンが遠く離れたタイミングで海美は足元に落ちた剣を拾い、ありったけの魔力を剣に込める。


 アズーリンも完全に体勢を崩していて、海美が必殺技を放つのにベストなタイミングとなる。


「あなたに教わった無限の可能性を背負い、将来の私の役に立てるよう、ここで決めるわ! ビッグウェーブ・エクスカリバー!」


「くぅっ……!」


 盾を活かした攻撃と剣での防御という逆転の発想をするようになった海美は、新たな剣術を身に付けたことに喜ぶ。


 しかし海美も全力を出していたので疲れ果ててしまい、少しだけしゃがみこんで休憩する。


 するとアズーリンは急に元気に立ち上がり、海美に近づいて手を差し伸べる。


「君の戦略と心は見事だった。私も盾を使うのだが、ここまで使いこなせることはできなかった。どうやら君は私を既に超えているのだな。最後に君に会えて本当によかった。私の教えも伝えることができたし思い残すことはもうない。約束してほしい、君たちの手で我々賢者の成し遂げられなかったアンゴル・モアの討伐(とうばつ)に成功してほしい」


「はい、約束します。あなたの教えを守り、世界を救ってみせます」


「では私の力とブルーオーブを受け取るのだ。私の力が必要な時、祈りを込めて私を思うといい。ではまた会う日まで」


 アズーリンの試練を突破した海美はブルーオーブを手に取り、ついにアズーリンに認められた。


 少し休憩してから海美は神殿を後にし、海美の必殺技で駆けつけたさくらたちと合流する。


「海美、試練はどうだったんだ?」


「ええ、認められたわ!」


「さっすが海美ちゃん!」


「何だか海美さん、騎士らしい顔つきになりましたね♪」


「ふふっ、そうかしら?」


「さすが憧れの青井さんです! 私も剣術、頑張ります!」


「白銀さんならきっとできるわ。その時は頼りにしてるわ、王女さま」


 海美たちは試練突破を喜び、とくに雪子は嬉しそうに涙ぐんでいた。


 さくらは試練を突破していないのは自分だけだと自覚し、少しだけ焦っていた。


 喜びを分かち合っているとさっきの漁師が声をかける。


「あの津波や竜巻に勝った上に試練を超えるとは……君たちなら本当に世界を救えるかもしれないね」


「漁師さんもありがとうございました。おかげでブルーオーブを手に入れました」


「いいんだよ。オーブは今何個持ってるんだい?」


「6つあります」


「じゃあ最後のオーブの在処を伝えるよ。最後のオーブは今まで町や村を歩いてきただろう? その今まで訪れた場所の真ん中にロゼリアの町があるんだ。汽車に乗らなくても行ける距離で、歩いたほうが近いかな。そこにピンクオーブがある、ただそこの試練は最も厳しく過酷と聞いた。どうかご無事でアンゴル・モアを倒してください!」


「はい、あなたたちの分まで頑張ります!」


 最後の行先がロゼリアの町に決まり、汽車ではなく徒歩で向かうことになった。


 さくらは今までの試練を考えて今度は自分の番だと覚悟を決め、ロゼリアの町へさくらたちは向かうのでした。


 つづく!

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