第92話 フォレスタの村
フォレスタの村に着くと、そこには森林が生い茂っていて木製の家がたくさん建っていた。
前回はヘルバトラーと戦うために森から抜けたリーファ草原にみどりたちはいて、フォレスタの村が少しだけ懐かしいとも感じる。
村は森の中にあるエルフの村のようなファンタジーな雰囲気で、同時に南米のアンデス文化も一部ある自然と一体化している村だった。
村人の服装はワンポピース型の服が多く、レモニカの町とは違ったアメリカ先住民のような服装でインカやマヤ、アステカの文化も一部受け継いでいる。
同時にケルト神話に出てきそうな草原もあり、アイルランドのような美しい緑にも包まれている。
「あの草原はケルト神話にも出てきそうな雰囲気でしたね」
「確か葉山さんからケルト民族の名残が多いアイルランドの草原は、美しくて青々としていると聞きました」
「白銀さん、覚えてくださったのですね」
「それにしても……んー! 空気が美味しい!」
「ここなら精神統一も出来そうだな」
「そうね。本当にここは落ち着くわ」
「じゃあ早速、グリーンオーブの手がかりを探そう」
「うん。また手分けしよっか」
グリーンオーブを探すためにみどりはほむらと雪子と共に行動し、フォレスタの村でヴェルデの手がかりを探す。
村人はみどりたちを見かけると木の実や狩猟で獲った動物お肉をもてなす。
もらった食事を済ませて聞き込みを開始すると、若き族長らしき人がみどりたちを見かけると近づいてくる。
「あなたたちが試練を乗り越えようとしているアルコバレーノですね」
「はい、わたくしは葉山みどりと申します」
「赤城ほむらです。それで彼女はアタシたちの後輩の――」
「白銀雪子です」
「あなた方が来ることを予知していました。試練なら村の奥にあるトキワの森にある神殿を探し、そこから新たな知恵を生み出せばヴェルデさまの力を得られます。ですが村の人間は誰も挑戦しようとしません。ヴェルデさまはあまりにも頭がよすぎて、誰もついていけませんでした。そしてあの森は一人でないと入れず、二人以上で入ると必ず今までの関係が壊れてしまうんです」
「それは何故ですか?」
「あの森はいくら歩いても同じ道を辿り、精神的に余裕を失い仲間同士で喧嘩し、二度と修復不可能になるんです。だから一人で行くことを勧めているんです」
「なるほどな。だけどアタシたちはそう簡単に壊れはしねぇよ」
「確かにそうですね。わたくしたちの絆はダイヤモンドよりも硬いのですから」
「だがアタシは試練を突破しちまったし、白銀さんを巻き込むわけにはいかねぇ。『絶対大丈夫だって油断していると痛い目に遭う』ってよく社長にも言われているからな。となれば……みどり、絶対生きて帰って来てくれよ!」
「はい! ほむらさんや白銀さんは待っててください!」
「わかりました。良い結果を信じています」
「ではトキワの森へ案内します。ついて来てください。」
若き族長の男性にみどりはトキワの森へと案内され、みどりは試練を受けることを決意する。
村の中は小鳥の鳴き声や木々の揺れる音、川の流れる音、心地よいそよ風が心を癒し、自然の恵みを受けている印象をみどりは持つ。
トキワの森に着き、ついてきたほむらと雪子にみどりは見送られる。
「じゃあみどり、アタシらは待ってるからな」
「葉山さんのご無事を祈ります」
「はい。いってきます」
見送られたみどりは勇気を出してトキワの森へ入り、自然の恵みを感じながら目へと進んでいった。。
分かれ道に到着すると、みどりは考え込みながら安全策を取って右へと進む。
すると今度は同じ分かれ道になり、次は左へと進んでみる。
ところがどっちを進んでも同じ場所に着いてしまい、これで友人関係が崩壊してしまうのだと痛感する。
「考えましょう……。自然に恵まれた村だとすれば――」
みどりは村の様子を思い出し、自然と一体化するために一旦考えるのをやめてみる。
自然の感触を確かめると神殿からあふれる人口的に作られた隙間風を感じ、仕切り直すために一度全部戻ってみる。
この風を頼りにした法則だと左、右、左、左と進めば神殿に着くはずだとわかったみどりはその通りに進み、自分自身の本能を信てみる。
すると目の前に木造の神殿が建てられていて、グリーンオーブが目の前にあり目的地にようやくたどり着いた。
グリーンオーブが台座に置かれていて、そのグリーンオーブを手に取ろうとする。
グリーンオーブを手に取ろうとした瞬間、オーブが強く光り出し光が人の形へと変わる。
その姿は緑色のサラサラヘアで七三分けのショートヘア、メガネをかけた知的な男性へと姿を変え、みどりに気付くと視線をみどりへと向ける。
「あなたが私の力を欲する者ですね」
「あなたは一体……?」
「申し遅れました。私はヴェルデ、賢者の頭脳と言われた者です。あなたのその魔力は……なるほど、私の末裔は生きていたのですね」
ヴェルデと名乗った男性はみどりを懐かしみ、みどりもヴェルデと名前を聞くと思い出したかのように頭を下げる。
「その声は……! お久しぶりです!」
「またあなたに会えて嬉しいです。あれから随分と成長しましたね。それと――どうやらアンゴル・モアが復活なさったようですね」
「はい、その通りです。アンゴル・モアと戦うために一刻も早くあなたのお力で世界を救いたいのです」
「なるほど、既に4人ほどクリアしているようですね。あなたの目と魂に聞けばわかります」
「そこまでご存知なのですね」
「となれば私の力を欲して当然の事です。ですがタダで渡すわけにはいきませんよ。私の試練を乗り越えられたらグリーンオーブを差し上げましょう」
「感謝いたします、ご先祖さま。では……参りましょう」
ヴェルデの試練が始まり、みどりは弓を構えて矢をつがえる。
矢をつがえる時に体力を消耗するので、一発で当てることが勝負のカギとなる、
ヴェルデとみどりはほぼ同時に矢を放ち、みどりはヴェルデの矢を短剣で斬り落とす。
「ほう、私の矢を短剣で撃ち落とすとは。あなたの頭脳と判断力は大したものですね。」
「弓兵は西暦の時代では接近戦が大の苦手としました。ところがイングランドのある王様が常識を跳ね返す戦法で弓兵でも白兵戦が出来るように訓練なさったそうです」
「人間界の歴史を参考にして取り入れたのですね。素晴らしい学習能力と吸収力です。でも――」
ヴェルデはみどりの知識を褒め称えるも、みどりの放った矢を片手で掴み取り、まるで矢が最初から手元に来ることをわかっていたかのような動きをする。
いとも簡単に読まれてしまったみどりはパニックになり、ヴェルデの知力と強さに固まってしまう。
「そんな……!」
「矢のスピードを計算すればかわす事も可能ですが、素手で止める事も可能ですよ。さてと、このスピードについて来れますか?」
「ロングボウからクロスボウに……!?」
「覚悟なさい!」
「うっ……!」
クロスボウはロングボウと比べて射程距離は落ちるが、真っ直ぐ放った時の威力はロングボウ以上のもので直撃をすれば致命傷を負ってしまう。
みどりは風魔法で素早さを上げ、クロスボウの矢をギリギリのタイミングで避ける。
「ギリギリでかわすとは……。でも逃げてばかりでは頭の整理はできませんよ!」
ヴェルデは容赦なくクロスボウで矢を連射し、あまりの矢のスピードにただ逃げ回るしかなかったみどりは木陰に隠れて一度頭の整理をする。
しかし時間が経つにつれて頭の整理が追いつかなくなり、呼吸も乱れ始める。
「少々パニック状態になったようですね。頭脳と言われる人間たるもの、自分自身の感情をコントロールしなければ他の皆もパニックになり、戦況が大きく変わりますよ。だからといって冷静を装う努力をしたとしても、いずれガタが出始めるでしょう。この不利な状況、あなたならどうしますか? そしていつもの判断力と決定力はどうなさったのでしょうか?」
「はっ……!」
ヴェルデのアドバイスにみどりは閃いたのか、短剣をしまい弓に切り替える。
みどりは戦いの中で何度も知略だけでなく、仲間との絆や成長を見て作戦を変えたりと臨機応変に対応してきた。
その事を思い出したみどりはヴェルデが使っているクロスボウと普通の弓での速さの違いを計算する。
「人間界のクロスボウの平均と最速の速さを計算し、この魔法界では大体が3倍の威力と1,7倍の速度となれば――」
「どうやら覚悟はできたみたいですね」
「覚悟は出来ました。ヴェルデさん、あなたを超えて世界を救います!」
「頭の整理もできたようですね。では私も本気を出しましょう!」
ヴェルデは本気を出し、クロスボウとロングボウを使い分けてみどりに攻撃を仕掛ける。
それでもみどりはクロスボウとロングボウのスピードを計算し、人間界との違いを簡単に見分け避け始める。
風魔法使いは風を使って人や物を速くする傾向があることをみどりは見抜き、ヴェルデの矢を避けれるようになったのだ。
「もうクロスボウの軌道と速度は見切りました! はっ!」
さらにみどりはロングボウだけでなく、風魔法を使って自分を素早くし、短剣に切り替えて矢を全部切り落としヴェルデに接近する。
その予測不能な動きにヴェルデも徐々に焦り始め、みどりが逆転し始める。
「この短期間でなぜ……!?」
「わたくしは何故負けたのかという結果論だけでなく、相手のどこが上手だったのか、わたくし自身に足りなかった事やうまくいった事を客観視し、計算と考察を重ねてきました!」
「学びの姿勢で何でも取り入れ、広い範囲で考えるって事ですね! 面白い!」
「甘いです!」
「くっ……!」
みどりはヴェルデがクロスボウで矢を放つ前に短剣を二つとも手元に投げつけ、ヴェルデの両手に短剣が当たりクロスボウをついに手放す。
クロスボウが手元から離れ慌ててロングボウに持ち替え矢を連射するも、みどりを止められる者はもう誰もいなかった。
みどりは投げた短剣の風魔法で回収し、ロングボウに形を変えてヴェルデに感謝を込めて必殺技を放つ。
「学びはいつだって人を成長させるものです! あなたからたくさんの事を学びました! 感謝の気持ちを込めて撃ち込みます! グレートタイフーンアロー!」
「うわぁっ!」
みどりの渾身の一撃はヴェルデに命中し、見事に試練を乗り越え勝利した。
しかしみどりはあまりにも困難な試練の疲れからか立ちくらみが起き、少しだけ座って休む。
すると先ほどまで倒れていたヴェルデが元気そうに起き上がり、武器を置いてみどりに近づき、メガネをクイっと上げて握手を交わす。
「頭がいいというのは、何も賢くて機転が利くだけではありません。過去から学び、現在を知り、そして未来に進む事。それはどんなに学業が苦手な人間でもできる事です。あなたはその学ぶ姿勢がしっかりしていますね。何度苦境に陥っても諦めない精神力と自然との一体化、そして冷静な判断力と経験に基づいた知識と計算力……お見事でした。もう私から教える事は何もありません。グリーンオーブと、私のお力を受け取ってください」
「はい、感謝いたします。」
みどりは見事試練を突破し、ヴェルデに認められてグリーンオーブを手に入れる。
そしてたどってきた道をみどりは今も覚えていて、無事にほむらたちと合流をする。
そこには別行動をしていたさくらたちがいて、みどりも嬉しそうにさくらたちのところへ駆け足で合流する。
グリーンオーブをほむらたちに見せ、試練を突破したことを報告したみどりは次の行先を若き族長に聞く。
「グリーンオーブを手に入れるとは……あなたは相当な頭脳の持ち主なのでしょうね。さすがヴェルデさまが気にかけていた方だ」
「ご案内を感謝いたします。それで……次はどちらへ行けばいいですか?」
「ここから汽車で西に行けばネビウスの町に着きます。あそこは剣術が盛んで、海に囲まれた海の都です。そこから雨の巫女がよく生まれますよ」
「てことはブルーオーブがそこにあるのね。みんな、行きましょう」
「うん! 皆さん、みどりちゃんをありがとうございました!」
「お気をつけてください!」
「次は私の番かしらね……。ご先祖様の試練、突破しなきゃ……」
次の行先はネビウスの町に決まり、海の都と呼ばれるところへ行先が決まる。
海美はブルーオーブと聞いて次は自分だと悟り、決意を新たに出発した。
つづく!




