第91話 レモニカの町
レモニカの町に着くと西部開拓時代のアメリカのような街並みだった。
町の人々は見た目がガンマンかカウボーイのような服装で、拳銃をみんな所持していた。
中にはアメリカの先住民の服装もいて、人間界では信じられないような光景が映った。
しかし人々は銃を所持していて、少しだけピリピリした空気だった。
「ねぇ、この町って銃が所持されてるけど……撃たれたりしない?」
「確かにそれは不安だな……」
「その時は私に任せて。この拳銃でみんなの事を守るから!」
「千秋さんは頼もしいですね♪」
「それにしても本当に西部開拓時代に来たみたいね」
「はい。他の町みたいに歴史を感じられます」
「さて、そろそろアタシたちの本題にいこうぜ。イエローオーブの在処を探さないと」
「そうね。行きましょう」
レモニカの町で賢者の情報を得るために千秋たちは町の人々に聞き込みを開始する。。
銃を所持しているので奇襲を警戒して念のために変身し、撃たれないように自分を守ろうとした。
しかし長い荒野だったので喉が渇き、目の前に喫茶店があったので入る。
「いらっしゃい、8名様ですね。そこのカウンターに座ってください」
「あ、はい」
「あなたたちはこの町に何かご用でもありますか?」
「えっと……この町には賢者の力が宿っているイエローオーブがあると聞きまして、そのイエローオーブを探しているんです」
「ほう、イエローオーブをお探しと。それでしたらトパーズマウンテンにあるほこらに行くといいよ。そこにイエローオーブが祀ってある。ただあそこの道のりは険しくてね。レモニカ町民じゃないととてもじゃないが山頂まで行くの苦労するよ」
「じゃあここは千秋ちゃんになるのかな?」
「多分そうだろう」
「千秋、無理しないでね」
「うん、わかった! マスター、ミルクおかわりお願いします!」
「はいよ。移動は馬を使うといいよ。うちのでよければ貸したげるよ」
「ありがとうございます!」
喫茶店のマスターに牛乳を頼み、喉の渇きを潤すとイエローオーブのありかの情報を得る。
千秋はマスターの馬を駆りて荒野を走り、トパーズマウンテンに向かって行った。
道のりは乾燥していてサボテンが立っており、まだ開拓されていないところもたくさんあった。
トパーズマウンテンに到着すると、馬は登るのを嫌がって止まる。
千秋はマスターにもらった飼い葉をエサとして与え、ゆっくり休ませるために頭を撫でて落ち着かせる。
馬を止めてトパーズマウンテンに登るとトロッコが退寮に放置されていて、魔法鉱石が溢れるほど入っていた。
山頂にようやく登りつめたところに、木製のほこらが見えくる。
そこにはイエローオーブが黄色く光っていて、千秋は近づいて手に入れようとする。
「よぅ、俺の力を求めて来たのか? 随分命知らずなモンだな」
イエローオーブは突然黄色く光り、だんだん人の形をして姿を現す。
その姿は少し長いボサボサの黄色い髪に咥えたばこをしていて、どこか抜けてそうな顔のスラっとした男性だった。
「その声はもしかして……イエラさん?」
「ああ、俺が賢者のイエラってんだ。そういうアンタは黄瀬千秋だろ? 覚えてるぜ。あれから随分強くなったなあ」
「ありがとうございます。実は……あなたの力を求めてここまで来ました」
「だろうなぁ。あの忌々しい恐怖の大王が今頃復活しやがったしなぁ。確かに俺の力は必要だな。でもその前に、アンタを鍛えないとな」
「鍛えてくれるんですか?」
「でも……タダでとは言わせないぜ? この俺に射撃と格闘術で勝てれば極意を教えてやるよ。そしてイエローオーブも渡して俺の力を受け取ってもらうぜ」
「ご先祖様の試練……受けて立つよ!」
イエラは千秋の心を読んでアンゴル・モアの事情を察し、力を与える前に試練を与えようとする。
イエラは二挺拳銃として両手で銃を取り、千秋と銃撃戦か格闘戦をする
イエラは二挺拳銃なのですぐにフルコックにし、素早く連発して千秋をけん制する。
千秋は拳銃は一つしかないので連射では不利だが、鍛え抜いた動体視力で弾丸を簡単に避ける。
拳銃でイエラの二挺拳銃を弾き飛ばし、イエラの懐に入ったのでマスケット銃で一撃必殺を放とうとした。
「射撃については使い分けしてるのか。一撃必殺のマスケットに連射のピストル……大した頭脳を持ってるなぁ。俺は二挺拳銃が本業だから攻略されたのは悔しいが……銃がないからって弱いわけじゃねぇぜ!」
「きゃあっ!」
イエラは油断したかのように見えて実は計算していて、千秋が懐に入るのを読んでいた。
千秋の格闘術もイエラは簡単に防ぎ、同時に投げ技で千秋を赤子のように投げ飛ばす。
「これって……軍人や警察の人が身に付ける格闘術……!?」
「ほう、よくわかったな。一応俺は軍人であり保安官だったからな。自己防衛は出来て当たり前なんだよ。アンタは何だ? 随分勝利を急いでるな。何も守れずに負けるのが怖いか?」
「別にそんな……。私はただ……世界中のみんなの平和と笑顔を守れれば……。私自身の笑顔も守れないと……他の人を笑顔になんてできないのなんてわかってます……」
千秋は警察の格闘術を学んでいたが、魔法少女での戦いのために軍人の格闘術も学んでいた。
イエラの格闘術はまさに軍人の格闘術で、千秋がイエラに勝てるはずもなかった。
そのせいで千秋は負けることが怖くなり、動きが鈍くなってしまう。
「なるほどな。俺の質問にわざわざ答えてくれて感謝するぜ。だけどよぉ、あんたの心を見ればわかる。昔泣き虫で臆病だったな」
「どうしてその事を……!? あなたには話したことがないのに……!?」
「やっぱりな。目を見ればわかるさ。まあ別に弱いことが悪いことじゃないし、他人の痛みがわかる優しいやつは大体よく泣くモンさ。それほど心が強いんだろうぜ。だけど……そんなに弱い自分が嫌いか?」
「それは……」
イエラは千秋の心を読み、かつて泣き虫で弱かった千秋の過去を言い当てる。
千秋は必死に弱かった自分を否定し、指摘されたことに泣きそうになった。
イエラは言いすぎたかなと思ったのかテンガロンハットをくいっと動かし、タバコを吸ってから軽くため息を吐く。
「俺だって今じゃあこんなにいい加減だけどよ、昔はよく逃げてばっかりだったんだぜ?」
「そんな……!」
「だがその弱さも自分自身の一部って事さ。弱さをいつまでも認めずにいると、人は強さばかりに目が行って何も守れない。それに弱さを認めないと虚勢を張って他人の足を引っ張ろうとする。人によっては弱さを認めた上にそのまま落ちぶれるがな」
「弱さを……認める……」
「弱さの認め方次第ってやつだな。それに防御ってのは強さや固さより、むしろ弱さと脆さにある。その弱さと脆さを活かして自分自身を鍛え、最終的には強い防御が生まれるんだぜ? さて、そんな俺の話を聞いたわけだが、アンタはどうする? 俺を倒して世界をどうしたいんだ?」
「私は……あなたに勝って……アンゴル・モアを倒す! 私は前の戦いで強くなったつもりだった……。だから昔の自分が弱く感じ、いつの間にか過去を否定していたんだ……。でもそれも私自身だって思うと、泣き虫で臆病だった時代も懐かしいな……。だからこそ……みんなの笑顔が眩しく、私自身の笑顔でみんなも同じように感じるんだね!」
イエラは自分にも弱かった時代があったと話し、弱いことは悪いことではなく、強いことに奢ったり弱いことを言い訳に逃げて何もしないことがダメなんだと説く。
千秋は守ることとは強さだけでなく弱さを認めることと学び、コツを掴んだのか涙を拭いて立ち上がった。
「ようやく自分の弱さを受け入れたようだな。それで? 一体何を守るんだ?」
「私は……あなたを越えて世界の平和と私自身の夢のために、アンゴル・モアの絶望から守りたい! 絶対勝てない相手でも、自分自身に弱みが出たとしても、全部受け入れて落ち込まず、前に進む!」
「やっべー……余計な事を言っちまったなぁ。あんたを覚醒させちまったよ。だがこれでお互い銃がないわけだ。逃げるなら今のうちだ。俺は強いぜ?」
「それでも負けない! 弱い自分は嫌いだったけど……それでも泣き虫だった過去は戻らない! あなたの言葉で目が覚めたよ! いくら前より強くなっても、今でも弱いところがあったことは変わらないけど……私はあなたを越えてみせる!」
吹っ切れた千秋は終始イエラを圧倒し、さっきまで臆病だった千秋はもうどこにもいなかった。
イエラは二挺の拳銃を取りに行き、もう一度銃撃戦を始める。
しかし千秋は動体視力を活かしてもう一度イエラの懐に入り、イエラの投げ技を軽々と弾いて投げ飛ばす。
「弱さを克服するには、弱さを認めた上でどうするかだってあなたから学んだ! そんなあなたに感謝を込めて、強くなった私自身を見てください! スマイルサンダーブレイカーッ!!」
「うわぁっ!」
千秋の全力の魔力はイエラの全身に命中し、弾丸と同時に大きな雷がイエラを下した。
千秋は当然高度な魔法を使ったので疲れ果て、マスケットを杖にして座り込む。
しかし倒れたはずのイエラはヒョイっと立ち上がり、千秋に近づいてテンガロンハットを頭にかぶせる
「アンタ、やればできんじゃん。防御は何も固くて強く、絶対に防がなければならないわけじゃない。いくら強くなっても、弱かった過去は変えられないし、泣き虫で臆病でも結局自分自身なんだよ。だがその心の弱さを知っている限り、その弱い人間たちの心がわかるようになるし、苦しんでいる人間たちに親身になれる。あんたの大好きな笑顔ってのは強さと弱さの紙一重にあるのさ。そこから強い防御ってのが出来るのさ。その気持ち、忘れるなよ? さぁイエローオーブを受け取りな。そして俺が必要になったらいつでも呼んでくれよな」
「はい! ありがとうございます!」
イエラによって防御の心得を教わり、心の強さと優しさは同じことだと学んだ。
それによって試練は合格し、イエローオーブを手にすることとなった。
馬のいるところに戻ってレモニカの町へ向かい、ウキウキしながら走っていった。
そしてついにさくらたちが待つ喫茶店に戻り、鼻歌を歌いながらドアを開ける。
「ただいま!」
「おかえりなさい!」
「千秋、イエローオーブはどうだ?」
「この通りだよ!」
「黄瀬さんすごいです! 試練突破おめでとうございます!」
「えへへ……ありがとう白銀さん!」
イエローオーブをさくらたちに見せつけ、千秋たちはレモニカの町を後にしようとする。
しかしいつも通り次の行先が決まっておらず、どうしようか迷った所にマスターが声をかける。
「君たち、もう行くのかい?」
「はい、次のオーブを探しているので」
「そしたらここから西の端までになるが、雪国のホワイタの町を経由してフォレスタの村に行くといいよ。ヴェルデさまのグリーンオーブがあるはずだから」
「ありがとうございます! じゃあみんな、行こっか!」
「この町はいくつも行き先があるんだ。間違ってここから南にあるジャングル地帯のブラウニーの村、ここから北にある港町のグレイドの町、南に行きすぎて海が広がる南国のブラックリンの町に行かないでね。そこにはオーブはないからね」
「はい! ありがとうございます!」
千秋たちはホワイタの町を経由してフォレスタの村に行先が決まり、何通りもある汽車の経路を確認して向かう。
疲れ果てた千秋はぐっすり眠り、グリーンオーブがあるということでみどりは心の準備をする。
つづく!




