第82話 再会
絶望の魔女アンゴル・モアが現れ、アルコバレーノの戦いはまだ続いていく。
その事が世界中でニュースになっていて、東京湾付近は出入り禁止になっている。
アンゴル・モアの事を調べようとレインボーランドに行こうとしたが、移動手段がないので調べようもなく落ち込んでしまった。
そんな時に突然社長室から旅の扉が現れ、白い銀髪の背の高い男の子がやって来た。
「久しぶりだね、みんな」
「え……? 誰ですか……?」
白い髪で背も高く、少しだけ変声期を迎えている男の子はさくらたちとは一度会ったことがあるような態度をとる。
しかしさくらたちには思い当たるようなことがなく、誰なのか思い出せずにいた。
「ああ、しばらく会ってないし背もかなり伸びたから仕方ないか。僕だよ、シロン・ビアンコだよ」
「ええ!? シロンなの!?」
「あんなに小さかったのに!?」
「前の僕は背が小さいのがコンプレックスだったからね。これでもあの時は12歳で、今は13歳になったんだ」
「急に背が伸びたものだから驚いたぞ!」
「こう見るとシロンって、やっぱり王子様らしくカッコいいわね」
「それに声も少し低くなったんじゃねぇか?」
「確かにそうだね!」
男の子の招待は背も伸びて声変わりの途中である成長中のシロンで、あまりの成長ぶりにさくらたちはシロンだと気がつかなかった。
その成長ぶりにさくらたちは純子たちがいる会議室へ慌てて向かった。
会議室に着いて冷静になり、純子たちを呼ぶためにドアをノックする。
「はい?」
「桃井さくらです。黒田純子社長をお呼びください」
「水野さん、代わりに出てくれるかしら?」
「かしこまりました。しばらくお待ちくださいね」
純子はどうしてもはずせない会議で代わりに澄香が会議室から出る。
「皆さんどうしましたか?」
「あ、澄香さん! 実は――」
「澄香さん、お久しぶりです」
澄香の姿を見たシロンは嬉しそうに声をかけ、澄香はキョトンとしてシロンを見る。
しかし当然思い出せずにいて、澄香は思わずシロンだと知らずに尋ねる。
「えっと……どちら様ですか?」
「ふふっ、やっぱり僕って気が付かないんですね」
「えっと……ごめんなさい」
「シロン・ビアンコです」
「えっ……!? 本当にシロンですか!?」
「はい、お久しぶりです」
「わぁ! 大きくなりましたね! それに声も少し大人っぽくなりました!」
「本当にお久しぶりです。その左手の薬指の指輪は……夜月さんとご結婚なさったのですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます! 社長! お客様が来ています!」
「お客様ね。どなたかしら……?」
シロンとの再会に澄香は思わず大喜びをし、成長した姿に感動する。
同時にシロンは澄香の左手の薬指を見て結婚したことを察し、晃一郎路結婚したことをお祝いする。
澄香は大声で純子を呼び、純子もシロンとは知らずに来客と思って会議を抜ける。
「はーい! お客さんいらっしゃい……って……え!? もしかしてシロンなの!?」
「はい、シロン・ビアンコです。お久しぶりです、純子さん」
「本当に久しぶりね! 王国はあれからどうかしら?」
「おかげで復興が進んでいます。モノクロ団に強制された祭壇は取り壊しているところなんです」
「よかった……って喜んでいる場合じゃないわ。実は昨日、武道館に絶望の魔女アンゴル・モアと名乗るとんでもない化け物が現れたの。モノクロ団や高飛車財閥にも関係があって、その事であなたに聞こうと思ったのよ」
「その事で僕も皆さんに伝えに来ました。そして東京湾に絶望の城が空に浮かんでいます。あの城はレインボーランド神話にある絶望の魔女が作り上げた城で、あの城に入るには僕のような光の王族の力と……30年前に行方不明になった雨の巫女による雨乞いによって作られる虹の架け橋を渡らなければならないんです」
「という事は、雨の巫女を探せばいいんですか?」
「はい。その雨の巫女の特徴は代々青い髪をしていて、そして目があまり見えないと聞きました。本来なら雨の巫女の一族でないと本領は発揮しないのですが、子孫が行方不明になった時のために、僕が臨時で雨の巫女の代わりになることもできます。ただ臨時で雨の巫女になるには、雨の祭壇がある雨の神殿で神に認められなければなりません。僕も認められましたが、やはり直系の方でないと本領は発揮されませんでした」
「そうなのね。となればその祭壇に案内できるかしら?」
「わかりました。それからアルコバレーノのみんなもついて来てほしい」
「心得た」
雨の巫女という存在を聞かされ、シロンは代わりになることもできるが、やはり直系でないと本領が発揮できないということで雨の巫女を探しつつも雨の神殿へ案内する。
シロンはアルコバレーノたちを連れていくために旅の扉を召喚し、中に入ってもう一度レインボーランドへ向かう。
レインボーランドに着くと前よりも立派に復興した王国の姿があり、忙しそうにしながら幸せそうな笑顔で過ごしていた。
シロンは雨の神殿まで歩いて案内し、険しい山道を登っていった。
山頂にたどり着くと古代ギリシャのパルテノン神殿のような神殿が建っていた。
中央にマヤ文明風のピラミッド状の祭壇があり、その階段を登って中心部に集まる。
「この祭壇の中心部で雨の巫女が雨乞いの祈りを捧げ、光の王族である僕が光のサーベルを天にかざして晴れさせて空に大きな虹を描く儀式をする。それが成功すれば絶望の城の中に入る道である虹の架け橋が出来るはずなんだ。神話の本にはそう書いてあったけど、それが真実ならアンゴル・モアを倒せるはずだ」
「ずっと気になっていたのですが、アンゴル・モアとはどんな方なのですか?」
「人々の負の感情、マイナスエネルギーから生まれた大魔女で、生まれた時から地獄を支配する絶望の魔女。それが地上である王国に現れ、絶望の世界へと落とそうとした。そんな時に救世主であり、愛と平和の女神あるエイレーネが再び地獄に封印し、永遠の平和のために7人の使徒を生み出し、そのまま姿を消していった。そしてそのエイレーネの末裔は僕たち王族であると言い伝えられている。それがレインボーランドの神話なんだ」
「なるほどな。シロンは神様の子孫で、その封印されたアンゴル・モアが現れ、神話の再現ってわけか」
「なってほしくなかったけど、そういう事さ。雨の巫女の今までの特徴からすると……」
レインボーランドに伝わる神話を話したシロンは、この儀式が成功すればアンゴル・モアが待ち構えている絶望の城へ行ける虹の架け橋を作ることができると説明する。
雨の巫女の今までの特徴を考えた結果、その特徴をとらえているのが澄香で、全員で澄香の方をジッと見つめる。
「え……? 皆さんどうして私の事を見てるのですか……?」
「青い髪であまり目が見えないとすれば、澄香さんが一番当てはまると思います」
「それに水野さんがお祈りしてから、あの子たちを潤した雨が降ったわね。水野さん、一度試してみる価値があると思うの。あなたの力、世界の平和のために役立ててもらえるかしら?」
「社長、私なんかでいいんですか……?」
「あなたじゃないとダメなの。私からのお願いよ」
「私たちからもお願いします!」
「……わかりました。シロン、儀式の手順を教えてください」
「わかりました。まず澄香さんはこのローブを着て、真ん中に刺さっている雨雲の杖を手に持ち、天に掲げて雨乞いのお祈りをしてください。雨が降ったら僕がこの光のサーベルで切っ先を天に掲げ、太陽光を呼びます。それが成功すれば、きっと大きな虹が架かるはずです」
「わかりました! 私、やってみます!」
「あなたならできるって信じてるわ!」
「はいっ!(何ででしょう…?この儀式ははじめて行うはずなのにどこか懐かしくて、祈りの言葉まで覚えています……。とにかく世界のために祈りましょう。光を与えし天よ……大地と人々の心を潤す癒しの雨水で、乾ききったこの世界に恵みの雨を与えたまえ……)」
澄香は最初は戸惑ってためらいそうになったが、世界平和のために一肌脱ぐ気持ちで儀式を行う決意をする。
シロンに説明を受けた澄香は教会の修道服風の水色のローブ衣装に着替え、雨雲の杖を引き抜いて祭壇の中心部でお祈りを捧げる。
最初はまだ杖にも反応がなく空も晴れていて、澄香の祈りは届かなかったと思われた。
するとだんだん空に雨雲がかかり、ポツンと小さい雨粒が降ってきた。
さくらたちはモノクローヌとの戦いの時に感じた雨と同じ感じがし、懐かしくも安心した。
そして雨は次第に降りだし、乾いた大地と草木に潤いが出てくる。
シロンは鞘から光のサーベルを取り出し、天に高く掲げて呪文を唱えた。
「これならいける! 万物の希望たる太陽よ! 恵みの雨で潤った大地と人々の心に……暖かい日の光を与えたまえ!」
シロンが光のサーベルを天に捧げると雨雲の真ん中から割れ始め、徐々に太陽が姿を現した。
隙間から太陽の光が降り注ぎ、雨雲の杖と光のサーベルが大きな反応を見せた。
雨雲と太陽が合わさって雨水に光が屈折し、空から大きな7色の虹が架かった。
「やった……! 成功した……!」
「はぁ……はぁ……!」
「水野さんっ!」
「澄香さん! 大丈夫ですか!?」
「やりました……。これが……雨の巫女……ですか……?」
「水野さん! あなたも私を越える立派な事をしたのよ! 自分を誇らしく思いましょう!」
「はい……」
「みんな! アンゴル・モアの城に入りこみ、私たちの力でアンゴル・モアを討伐しましょう!」
「「「おー!」」」
(そう言えばお母さんも不思議な力でいつも大事な時に雨が降っていたと聞きました。もしかして私のお母さんって……後でシロンや皆さんにお話でもしましょう)
(やはり澄香さんは雨の巫女の子孫なのかもしれない。澄香さんに母親はどんな方だったのか聞いてみよう)
澄香は慣れない儀式で疲れ果て、純子に抱きかかえられて隣で休む。
澄香は雨の巫女として認められ、絶望の城に入る条件が揃った。
「皆さん、お騒がせしました。もう大丈夫です」
「よかった……。水野さん、晃一郎くんから聞いたのだけど、あなたの母親の名前って確か水野梅雨里さんだったわね。幼い時に事故で亡くしたって言ってたけど……」
「はい、確かに過去にお話ししました」
「水野梅雨里……? もしかして前の名前は『ツユリ・レーゲン』って名前じゃなかったですか?」
「どうしてそれを……!?」
「やっぱり……! 行方不明になっていた先代の雨の巫女は目が見えないせいでよく迷子になっていて、それで人間界に迷い込んだんだ。これも何かの運命かもしれないね……」
「かもしれませんね。実はお母さんは人間界に迷った時にお父さんがお母さんに一目惚れして、プロポーズの末に結ばれて私が生まれました。お父さんから聞いたのですが、当時3歳だった私をさらおうとする触手が地獄から現れ、お母さんは命と引き換えに私を守って触手を消しました。おそらくアンゴル・モアが人間界に入りこもうとし、雨の巫女の子孫になった私をさらって、永遠に平和が来ないようにしようとしたのかもしれません。」
「それでもあなたは梅雨里さんが目の前で殺されたにも関わらず、前向きで明るく振る舞ってきたじゃない」
「主人と出会ってなかったら、きっと私は今でも根暗で何もできなかったと思います。主人には感謝していますよ」
澄香の辛い過去の話を聞き、アンゴル・モアは過去に何度も世界を絶望に染めようと動いていたことがわかり、さくらたちはより気を引き締めていく。
澄香は晃一郎と出会えたことで立ち直り、自分なりの道を進んでいって今があると感謝した。
レインボーランドから事務所に戻ると、純子に一通のメッセージが届く。
それは雪子と晃一郎が明日帰ってくることだ。
雪子たちが帰ってくることに安心していると、突然純子は体調を崩しトイレへ移動する。
「ごめんなさい……ちょっと体調がすぐれないからトイレへ行ってくるわね……」
「わかりました、お待ちしています」
純子はトイレで嘔吐をし、澄香に介抱される。
澄香は車を運転し、純子は近くの病院へ運ばれた。
診断の結果、純子にとって大きく運命が変わる。
つづく!




