第7話 笑顔の大切さ
魔法少女になった千秋は拳銃を構え、魔物になった男の子を助けようとする。
それでも魔物は心から絶望しており、千秋の笑顔にイライラしていた。
「お前やっぱムカつく! ここでお前を殺してやる!」
「させないよ! 私は絶対にあなたに笑顔を思い出してもらうんだから!」
「うわっ!」
千秋は突然襲い掛かった魔物を背負い投げでカウンターし、拳銃でお腹に三発当てる。
拳銃から出た弾丸はすべて電気で出来ていて、全部で六発あって弾がなくなればプラスエネルギーでチャージできる仕組みだった。
千秋は父と共に警察の訓練で柔道と合気道を学び、鍛えた護身術を取り入れた格闘戦を主に使用し、離れては素早くフルコックにして銃を撃つ。
「光速六連発!」
「うぐぅっ!」
千秋の射撃の腕は千秋の父も認めるほどで、拳銃の扱いに離れている様子だった。
全弾撃ってはチャージし、近づかれたら格闘戦に持ち込むなど臨機応変な戦い方で魔物を弱らせていく。
「千秋ちゃん……覚醒したんだ……!」
「さくらさんっ! 大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫……」
さくらは意識を取り戻し、千秋の覚醒を見て安心したのか気を失い、みどりによって安全な場所へと運ばれた。
その様子を見た千秋は安心したのか、心置きなく戦いに集中できるようになる。
千秋はついに拳銃を宙に舞いながら技を放ち、魔物の動きを止める。
「ライジングショット!」
「うっ……!」
千秋が技を使うと、魔物は痺れて動きが止まる。
西部劇の早撃ちや連射で魔物が弱ってくる。
「千秋ちゃん今よ! 必殺技を放って!」
「うんっ! あなたの笑顔を私は見てみたい! だから……もう一度笑顔を思い出して! サンダーブレイカー!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
チャンスの場面で海未は必殺技を撃つように促し、千秋は拳銃をホルスターにしまって必殺技を放とうとする。
拳銃をしまって銃を構えをするとかつてアメリカで南北戦争があった時の銃であるパーカッションロック式のライフルドマスケット銃が現れ、魔物は大きな電撃に命中する。
普段の小回りの利いた連発系は拳銃、一撃必殺の時はライフルドマスケット銃になるという使い分ける系だった。
魔物は元の茶髪のウルフカットショートヘアの男の子に戻り、千秋は辛そうに足が震えてる男の子の元に走って向かった。
「大丈夫……? 足、痛くない……?」
「触るな! 何で俺に笑顔を思い出してほしいなんて言うんだよ! そんな表情したって、残酷な現実の前では無意味なのわかってんのか……?」
千秋が助けようとするも男の子は千秋の手を払い、千秋を受け入れることができなかった。
きれいごとだと言われて千秋は泣きそうになるが堪え、男の子を説得するよう試みる。
「綺麗事だってわかってるよ。ずっと治らないかもって不安の中で戦い、怖かったんだよね……? 気づいてあげられなくてごめんね……。でもね、お父さんはいつも言ってたの。『笑顔を忘れた人に、いい明日は訪れない』って。『笑顔を忘れると、明日も悪い事が起こるって思えるようになっちゃうから』って。面白いときや楽しい時、嬉しい時にはみんな笑うでしょ? 人に感情があるのはストレス発散にもなるし、明るくしていればきっと幸せは待たなくてもやってくるんだよ?」
「……」
「それに実は私、小さい頃は嫌な事があればすぐ泣くほど泣き虫で、引っ込み思案だったからいじめられるくらい弱かったんだ。だからお父さんは笑顔の大切さを私にたくさん教えてくれた。街の人たちに心の温かさを教えてもらった。だから私もいつまでも泣き虫なままじゃなく、笑顔になってみんなも笑ってくれるような存在になりたいって思うようになったの」
「お前も大変だったんだな……。だからって俺のために泣かなくてもいいだろ……ほら、涙拭けよ」
「うん……」
千秋は男の子に受け入れてもらおうと自分の話をして心を開かせ、笑顔によって自分はたくさん救われたことを話す。
そしてかつて千秋はすぐに泣きだすほどの泣き虫で、いじめられていたことも話した。
大変だった千秋の幼少期の話を聞いて男の子は千秋の涙を拭こうとハンカチを渡す。
「あれ……? お兄ちゃん…?」
「あっ……立てた……? それに痛みや痺れが前よりも……」
男の子は涙を拭くために無意識に車いすから立ち上がり、少し離れている千秋のところまで無意識に歩いていた。
そのことに気付いた千秋は驚き、男の子も自分の足がもう治っていることに気が付く。
「やっと勇気出して歩く努力をしたんだね……。私の涙を拭くために……! 嬉しい……!」
「また泣いちゃって。俺まで泣きそうじゃないか……。でも……ありがとう。これでリハビリしても大丈夫ってわかったし、笑顔を思い出したよ。確かに治らない怪我や病気もあるけど、諦めたら治る可能性もなくなるよな。俺、もう一度サッカーがしたい、だから頑張るよ!」
「ありがとう……お兄ちゃん……♪」
「さっきからそう呼ぶのやめろよ、恥ずかしい」
千秋はすっかり男の子に懐き、呼び方について照れた男の子は嬉し涙を流しながらもツンツンした態度で千秋の涙を拭いた。
澄香によって病院の安全は確認され、ライブの続きを再開する。
男の子は病院の先生や看護師、同じ病室の患者に謝って明るい雰囲気になり始める。
ライブは成功し翌日を迎えると、もうライブの事がニュースになっている。
「千秋! テレビを見て! 昨日の私たちのライブがテレビに映ってるよ!」
「本当に!?」
橙子が大声で千秋を呼び、社長室のテレビの前に急いで向かう。
テレビには病院の様子が映っていて、海美が美しい白雪色の髪をした女の子と共同ライブをしていること、みどりが精神が不安定な患者さんにおまじないをしていること、ほむらが小さな子どもたちに懐かれていたことも映っていた。
そして患者のインタビューが映し出される。
「三星会長、今回見たアイドルの印象はいかがでしたか?」
「うむ、笑顔が眩しいくらい素敵で可愛らしい子じゃったの。あの子は将来希望のアイドルになれそうじゃ。我が社のCMに出演してもらおうと社長や企画部に相談をし終えたところじゃよ。我が三星自動車の新車のCMイメージソングを歌ってテレビに出る姿が楽しみじゃわい」
千秋を励ましたおじいさんは実は大企業の三星自動車の会長で、世界中に自動車を売り出している三星自動車のCMオファーがインタビューで映し出された。
そんな大物に認めてもらった千秋は少し照れくさそうにし、同じお金持ちのみどりからも羨ましがられた。
「千秋ちゃん、見ているかい? 俺はこの通りまだ走るのは難しい状態だ。だが地道なリハビリで少しずつ歩けるようになったし、痛みもあれから嘘のようになくなっている。君の言う通り、笑顔でいればいい明日が待っているのかもしれないね。俺はまだ高校一年生だからまだ二年残っている。焦らず確実に治して、またサッカーが出来るようになるまで頑張るよ!」
テレビを見続けていると今度は千秋に助けられた男の子が映り、男の子の顔はとても眩しい笑顔で、私まで笑顔になるほど明るかった。
話によると名前は近藤翔也、サッカーの名門である日ノ本大学付属湘南高校の一年生だ。
近藤は横浜では有名なエースストライカーで、その兄は川崎フロンターズや日本代表で活躍している若きエースストライカー近藤裕也選手だ。
千秋の父が川崎フロンターズのファンで、千秋もよくサッカーの試合を観に行って応援したりしていた。
不思議な縁もある中で、千秋は笑顔の大切さを改めて知る。
世の中には確かに理不尽な事や治らないと言われている怪我や病気、精神的な傷も中にはある。
辛すぎる中で無理した笑顔でいたら、それは偽りの笑顔なので心の中ではモヤモヤするし、何よりも偽り続けることでいつか心が壊れ、自分を追い詰めることもある。
それでも前向きに戦い、心からの笑顔でいれば幸せな明日はやってくる可能性はゼロじゃない。
無理したて顔だったり、笑顔を忘れてしまうと、出来ることも出来なくなってしまう事がある。
だからこそ他人だけでなく、自分の本当の笑顔も守りたい、と思う千秋だった。
つづく!