第77話 結婚式
7月になり夏らしいイベントが始まり、花火大会やプール開きなどが行われる。
さくらたちそれぞれの高校も夏休みに入り、宿題を早めに終わらせていつもの芸能活動をする。
いつも通りの仕事の毎日を送り、事務所のレッスン室でレッスンをし、事務所のみんなとコミュニケーションを取って過ごす。
そんなある日、社長が事務所の全員を集め重大な発表をするとのことで所属タレントや社員全員が集まる。
「皆さんに集まっていただき、ありがとうございます。ここで私から重大な発表があります」
「なんやろ……? また新たなイベントかいな……?」
「どんな発表何だろうね?」
「ワクワク……」
純子の重大発表に事務所は緊張した空気になる。
すると晃一郎と澄香が純子を挟み、二人は幸せそうに見つめ合っていた。
「なるほどね、専務と秘書さんが関係してるんだね」
「それってどういう……?」
俳優で純子とは古い付き合いの風間祐介は二人の関係に何かを察していた。
どういうことかわからなかったさくらは風間に質問を投げかけるが、それでも構わず純子は発表を続ける。
「こちらの専務の夜月晃一郎と、秘書の水野澄香は……ついに結婚します!」
晃一郎と澄香の結婚発表に最初はざわついたが、徐々に古株たちはホッとしたため息を吐いて拍手を送る。
アルコバレーノだけでなく雪子はキョトンとしていて、妹で新人アイドルである暁子は心から笑顔で拍手をする。
「松本さん、どうして社長の結婚発表に驚かないんですか?」
「ああ、なんせ専務と秘書さんは前からラブラブだからな。でもアルコバレーノとモノクロ団との戦いでなかなか落ち着かなかっただろ? それが今、ようやく落ち着いてきたんで結婚を決めたって事さ。俺たち事務所の古株はもう付き合って10年以上だって聞いてるし、本当に安心しているよ」
「そうだったんですね!」
「ほら、君たちもお祝いしてやれよ。一緒に戦った仲じゃないか」
「はい! 夜月さん! 水野さん! おめでとうございます!」
「みんな、ありがとう! 結婚式は7月末に横浜の教会で行うわ。急な発表でごめんなさい。今日の発表は以上!」
「もう、お兄ちゃんと澄香お姉ちゃん、結婚まで遅いよー! でもおめでとうー!」
何が起こったかわからなかったさくらが同じ事務所の先輩であるPhantomのギタリストの松本ヒデトシに聞き、二人が長い間付き合っていてようやく結婚に踏み切ったことを話す。
晃一郎がが高校3年、澄香が中学1年の時に交際を始め澄香が成人になるまで晃一郎が待っていたということになる。
事務所は祝福ムードで盛り上がり、既に結婚していた灰崎からもお祝いの言葉が届けられた。
結婚式当日になり、学生たちは制服で会場に行く。
澄香の控室ではメイクを担当している美川トレーナーがメイクを担当する。
さくらたちは特別に花嫁控え室に入り、澄香のウエディングドレス姿を直接見る。
「失礼します」
「どうぞ」
「すごい……!」
「綺麗……!」
「本当に花嫁さんになったのですね……!」
「そんなに見つめられると恥ずかしいです……」
「いいえ、あなたは今までで一番美しいわ。本当にご結婚おめでとう」
「社長……ありがとうございます! 晃一郎さんと幸せになってみせます!」
「司会進行は私に任せて。水野さんは花嫁を存分に楽しんでね」
「ありがとうございます」
「さぁみんな、澄香ちゃんの準備がそろそろ終わるわ。席に戻って待っててね♡」
「はい! 美川トレーナーも美しいですよ!」
「やだもう! 赤城さんったらお上手ね♡」
「それじゃあ、本番で会いましょう」
「「「はい!」」」
澄香のウエディングドレス姿を見れたことで結婚式が始まるまで席に着いて待つ。
実はアルコバレーノでサプライズするために、花嫁になる女性の結婚の想いを歌った曲を短い期間で作っていて、それをサプライズライブで初披露する。
結婚式が始まる時間になり、純子が嬉しそうな笑顔で結婚式の開催を宣言する。
「ただいまより、虹ヶ丘エンターテイメント専務の夜月晃一郎と、同事務所社長秘書の水野澄香の、結婚式を始めます。まずは花嫁、花婿の入場です。皆さん、拍手でお出迎えください」
純子のアナウンスでウエディング姿の二人が入場し、会場では温かい拍手で出迎える。
結婚式の参加者にはシャイニーズ事務所の会長のシャイニー北原。
天才音楽家で東光学園高等部の音楽教師である滝川留美。
千秋がかつて助けた川崎フロンティアーズの選手の遠藤裕也。
国会議員を務めていてみどりの父である葉山森三議員。
佐久間大道具の代表取締役兼社長でずっと大道具でお世話になっている佐久間総一郎。
千秋の父で高津警察署勤務の黄瀬正義巡査長などすごい人たちが集まっていた。
中には晃一郎の幼なじみの女性、苦楽を共にしている事務所の社会人野球部のチームメイトたち、かつて甲子園を制した高校のチームメイト、同じ寮で暮らした同級生たちも駆けつけてくれた。
ウエディングケーキをカットしたり、指輪を交換したりと結婚式を進め、最後に結婚式の花形であるブーケトスをする。
澄香が涙ぐんでブーケトスをし、高々とブーケを上に投げた。
「いきますよ! せーのっ!」
「「「はいっ!」」」
「きゃっ!?」
「おや? さくらがブーケを受け取ったよ!」
「さくらちゃんのお相手は健太くんかしら?」
「えへへ~、さくらちゃんいいね!」
「彼とはまだそんな関係じゃないよっ!」
「ん? まだって言った?」
「そう照れなくてもよいではないか」
「そうですよ、今はアイドルも恋愛が自由になったのですから♪」
「もうアタシらだけにでも白状しろよなー!」
「みんな酷いよぉ!」
結婚式を終えて二次会に参加し、先ほどカットしたウエディングケーキを山分けして食べる。
純子は後で食べる事を考えて本物のケーキをお願いしていて、サプライズ好きな純子らしさが溢れていた。
そしてアルコバレーノは二次会のサプライズで新曲を披露する。
「「「夜月さん! 水野さん! ご結婚――おめでとうございます!」」」
「皆さん……! 私……皆さんに感動させられてばかりで……幸せですっ!」
「それが彼女たちのアイドル道なんだよ。俺たちも負けてられないな」
「本当に二人ともおめでとう。これからは二人で苦楽を乗り越え、幸せになるのよ?」
「「はい!」」
「夜月ー! おめでとうなー! 監督として鼻が高いよ!」
「監督、ありがとうございます」
「またうちの高校に遊びに来いよ!」
「うす」
「晃ちゃん、おめでとう。私も必ず幸せになってみせるね」
「ああ、瑞樹も彼氏と上手くいってるみたいだな。幸せになれよな、それが幼なじみとしての頼みだ」
「うん!」
「夜月ー! お前が一番遅い結婚だったな! 池上荘の同級生として嬉しい……って痛いわ黒崎!」
「彼女のために待ってあげたんだから遅いとか言うな!」
「まあ河西のことは置いといて、本当におめでとう。また寮のみんなで集まれるよう俺たちは待ってるぞ、夜月専務」
「悪いな郷田、なかなか顔出せなくて。河西や黒崎もありがとな」
「へへっ!」
「おう」
晃一郎と澄香は遅れて誓いのキスをし、結婚式は終わりを告げる。
さくらたちは晃一郎の高校の友達や恩師と話をし、甲子園での活躍を嬉しそうに話していた。
結婚式には参加できなかったが、晃一郎にはアメリカでプロアメフト選手として活躍している兄と、プロハンドボール選手としてデンマークで活躍中の弟がいて夜月家のことは彼らが継ぐため、澄香の姓である水野家に婿入りする。
さらにかつては上条だった健太も義理とはいえ裁判で勝ち取って弟になり、夜月家はしばらく安泰となりそうだ。
晃一郎は今後は水野晃一郎となり、『水野さん』と今まで呼んでいたさくらたちは困惑しないよう、澄香を『澄香さん』と呼ぶようになった。
こうして小学校の学年合同遠足から出会い、澄香が中学生になるまで交際を待ち、そして成人になるまで待ってくれた晃一郎と澄香は晴れて夫婦となり、新たな生活をスタートするのだった。
つづく!




