表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/110

第65話 乗り越える

 アルコバレーノの心の中の弱さと戦うさくらたちは、自分たちにそんな闇があったことを思い知り、モノクロバレーノと交戦していた。


 自分自身の弱さ、理想と現実のギャップ、そしてモノクロ団に染まったであろうパラレルワールドでの自分自身、そのことに気付きさくらたちはどんなに苦しくても立ち上がる。


 そして自分自身の闇と向き合い、モノクロバレーノにそれぞれ口説く。


「確かに……人はどんなに愛を与えても裏切り……自分だけ愛して他人を落とす人も中にはいるよ……。そんな事は私だってわかってる……。ただ愛するだけ、愛されるだけでは何かを生むどころか……奪う事だってあるよ……。でも私は……私を大切にしてくれる人だけでもいっぱい愛したいっ! 何か理由があって私の事が嫌いだとしても、私はその人にもいいところはあるってわかるんだよ! 自分だけ愛していればそれでいいなんて……そんな事言わないで! あなたは寂しかったんだよね……? 本当は友達が欲しかったんだよね……?」


「何が言いたいの? 私は他人なんかどうでもいい! 私を愛さない人間など消えればいいんだよ!」


「私自身が愛されずに生きていたら、あなたと同じだったかもしれないね……。だったらもう大丈夫だよ? あなたの心の闇を……ここで浄化してあげるから!」


 さくらはピンク色の花吹雪に包まれ、その愛に抱きしめられたら温かい心に負けて泣いてしまいそうな愛情たっぷりの魔力が溢れていた。


 さくらは人とのつながりを大事にしていて与える愛を知っている。


 与えられたからこそ、ただ愛されたいではなく愛されたから自分も人を愛そうという慈愛の心があったから、もう一人の自分自身の心の闇から解放すると決め、もう一度リボンを握って戦った。


「焼き尽くす炎かあ……。確かに人は間違った炎の使い方をしている。そして自然の炎は命を奪う、それは間違いねぇな……」


「だろ? 炎はすべてを破壊するための存在だってやっとわかったかよ!」


「だがな……原始時代に人は火を起こすことを覚え……そこから炎を活かすために発展し……新たな技術として生み出し進化していったんだ! 形だけじゃねぇ……心の炎があるからこそ、人は成功や幸福を自ら掴み取るモンじゃねぇのか? 情熱なくして未来なしってのがポリシーでね。いつでもどんな時でも……前だけ見て突き進んでやるのさ!」


 ほむらは赤い炎に包まれ、近づいた人たちまでやる気になるほど熱い熱気の魔力で溢れていた。


 ほむらはいつも前向きで自分の信じる道を突き進み、厳しい試練も持ち前の負けん気で乗り越えてきた。


 心の炎はさらに熱く燃え上がり、ほむらの槍は大きく燃え上がった。


空元気(からげんき)ね……。昔のボクみたいなことを君は言うんだね……」


「いきなり何? ボクに同情でもする気なのかな?」


「さぁね……。挫折(ざせつ)して元気をなくすのは人間なら誰でもある事だよ……。ボクだって同じさ……。でもね……その苦しい挫折から目を背けてたら、何も解決しないんだ……。ボクは空元気であったとしても……将来の夢のために努力するのをやめない! 空回りして何が悪いんだ! そんなボクでも応援してくれる人がいるから、今までの倍以上に元気が湧いてくるんだ! この一本勝負……絶対に負けないよ!」


 橙子は見た目は活発で男子とも間違われることもあるが、本当は年頃の女の子らしく悩みもいっぱいある。


 それでも応援してくれる人たちや将来なりたい自分のためを思って元気を出し、諦めない心で努力を惜しまないでいる。


 橙子はオレンジ色の光に包まれ、近づくと暗かった気持ちが明るくなり元気が湧いてくる。


 やる気に満ちてきた橙子は素手でもう一人の橙子に突っ込む。


「奪う笑顔って……それって本当に楽しいのかな……? 私は……後で後悔しちゃうな……。だって人の不幸って……もしかしたら自分にも関係あるかもしれない……。そう思うと笑顔になんてなれないな……」


「あははっ、バカすぎて話にもならないな」


「笑いたければ笑っていいよ……。バカだって言われてもいい……。私はみんなで笑顔を共有し……私も心から笑って生きて……最高の人生を送るって決めたんだ! 笑顔は奪うものなんかじゃない! 自然に溢れ出る幸せの象徴なんだ!」


 千秋は黄色い雷が包み込み、感じるだけで自然と笑顔になる優しい雰囲気だった。


 千秋の笑顔への想いは父親譲りで、誰もが笑って平和に過ごせる街づくりを心掛けてきた。


 きっとその笑顔で街の平和を守ってきたのだろう。


 拳銃からは大きな稲妻が溢れ出て、最高の一撃を今にも放ちそうだった。


「何も学ばないのはお互い様のようですね……」


「はて?」


「人は完璧ではないからこそ……完璧に近づくために努力を惜しみません……。もし完璧になってしまわれたら……人は学ぶことをやめてしまします……。あなたのように完璧と思い込み……自分こそ選ばれたエリートと思っていては……もう成長する事はないでしょう! わたくしはもっといろんな事を学び……後世(こうせい)にその知識を与えたいのです!」


 荒んだ心に癒しを与える緑色の風がみどりを包み込み、弓矢から上品ながら激しい風が舞っていた。


 みどりはエリートの家系ながら(おご)ることなく、自己投資や他人にも教えられる多彩な知識で将来に活かしたいと思っている。


 だからこそ人を導くエリートになるという、将来の夢のためにいつも勉強と学習を続けていた。


「他人を苦しめてから楽にさせるのが優しさね……。もしかしたら他人に疲れた弱い私自身かもしれないわね……」


「何を言うのかしら?」


「人は優しさに付け込んで悪さをしたり……自分勝手になったりする……。だから痛めつけるのもある意味優しさだと開き直る……。でもそれは自分だけに優しくしているだけのサディストね……。だからって自己犠牲で自分が滅ぶようなマゾヒストでもダメ……。そんな事で絶望に陥れて楽しいかしら? 私は決してそうは思わない! 人に優しくして……『ありがとう』って感謝されるとね、心までホッとするの。あなたにもその温かくなる心を教えてあげるわ!」


 海美の身体から青い海水が包み込み、剣の切っ先には優しくも激しい渦を巻いていた。


 海美は人に優しくする理由は『見返りよりも感謝されることに人の温かさを感じるのが好き』と言っていて、『それを決して弱さではなく、それは心の強さでもある』と純子たちにいつも言っている。


 その優しさは甘えでも弱さでもなく、人を前に進ませる心強さと温かさだと純子たちは思った。


「貴様は私が悪の道に走るほど落ちぶれていると思うのか……?」


「まだやる気か……? 往生際の悪いやつめ」


「だが残念だったな……。私はいかなる悪事や誘惑……そして煩悩に打ち勝つために……日々修行をしているのだ……。悪に走るのが勇気だと……? それは己自身への甘えと……弱さに溺れただけに過ぎぬ! 本当の勇気とは……その煩悩(ぼんのう)と弱さを克服するために耐え忍び、過去の己自身を越えていく事こそ真の勇気だ! 貴様の正体は……その葛藤(かっとう)に悩む私自身だろう! ならば……過去の己自身を乗り越えてみせる!」


 ゆかりの身体には紫色の霧が包み込み、刀には一見暗くて怖い闇だけど、どこか前を向かせてくれる勇気に溢れていた。


 ゆかりはいつも鍛練を欠かさず、自分自身の弱さを知ってもなお負けずに乗り越えてきた。


 みんなはそれぞれ武器を手に取り、ありったけの魔力で必殺技を唱えた。


「これで終わりだよ! モノクロハリケーン!」


「もういいんだよ……? あなたの寂しい気持ちは私が受け止めるから! いくよ! ウルトララブ&ピースハリケーンッ!!」


「燃えて消しクズになれ! モノクロインパクト!」


「アタシは特攻隊長の赤城ほむらだ! そう簡単に燃え尽きたりしねぇ! アトミックファイヤーインパクトッ!!」


「この一撃で葬ってやる! モノクロバスター!」


「未来のために……みんなの応援を背負ってボクは絶対に負けない! ビッグバンシャイニングバスターッ!!」


「いい加減にさようなら! モノクロブレイカー!」


「私とみんなの笑顔のために! もう負けて泣かないって決めたもん! スマイルサンダーブレイカーッ!!」


「あの世で敗北を学びなさい! モノクロアロー!」


「弱いわたくし自身への敗北では何も学べません! 乗り越えてこそ新たな学習だと思います! グレートタイフーンアローッ!!」


「死を覚悟なさい! モノクロビッグウェーブ!」


「残念ね……。今の私ではあなたを助けられないなんて……。救えなくてごめんなさい! ビッグウェーブエクスカリバーッ!!」


「さらばだ! 邪気妖刀斬(じゃきようとうざん)!」


「貴様の弱さを見切った! もう既に私は私を越えたのだ! (しん)邪気退散斬(じゃきたいさんざん)っ!!」


「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」


 モノクロバレーノたちは進化した必殺技に直撃し、おぞましくも悲しそうな悲鳴を上げて消滅していった。


 同時に作られた存在とはいえ、消滅する寸前に笑顔と涙を浮かべていた。


 アルコバレーノのプラスエネルギーは絶望に染まった心を希望に満ち溢れさせてくれる不思議な魔法だった。


 それも心のない作られた存在だとしても、心を変えてくれるその魔力の大きさに純子たちは感動した。


 さくらたちは弱い自分自身を乗り越え成長し、晃一郎たちは涙を流して誇りに思った。


 鏡からさくらたちが戻り純子たちはすぐに駆け寄る。


「おかえりなさい!」


「「ただいま!」」


「私は過去の自分自身に負けた事が恥ずかしいわ……。あなたたちはよく乗り越えたわ!」


「社長たちの応援のおかげですよ。本当にありがとうございました」


「君たちの心の成長はどこまでするんだろうね……。僕もその瞬間を見届けられて嬉しいよ……」


 アルコバレーノが全員強くなって戻ってくると、純子たちは安心と同時に成長を喜んだ。


 ここまでプラスエネルギーが強く育つと、本当に世界を救ってくれる魔法少女になるだろう。


 シロンも傷だらけながらアルコバレーノを祝福する。


 するとモノクローヌはまた不敵な笑みを浮かべる。


「ふっふっふ……。よく自分自身に打ち勝ったわ。だけど……そこからのし上がっても一気に落とされたらどうなるかしら? さぁ出て来い! 人間共のマイナスエネルギーから生まれた魔物たちよ!」


 モノクローヌはこの世界でマイナスエネルギーをずっと溜めこみ、モノクロバレーノが破られたときのために大勢の魔物をあらかじめ作っていた。


 さくらたちは疲れながら第二戦を始め、絶望の魔物たちに立ち向かった。


 つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ