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第64話 モノクロバレーノ

 四天王(してんのう)を倒し結界が解かれ、アルコバレーノはすぐにシロンたちのテレパシーを受けて人間界に戻る。


 旅の扉を通して人間界に戻ると、そこには真っ暗な空で今にも雷が落ちそうな光景だった。


 高い魔力を感じてその場所に向かうと、溝の口駅の南口にあるバスロータリーだった。


 そこにはボロボロになったシロンと、シロンを(かば)う澄香と晃一郎の姿だった。


夜月(やつき)さん! 水野さん!」


「ああ社長……皆さん……。本当に無事だったんですね……!」


「ギリギリ間に合ったと言うべきか……!」


「うう……!」


「シロン!」


 澄香のメガネは割れていて足を引きずり、晃一郎は(ひたい)から出血していた。


 とくにシロンは戦えるので交戦したが、その災いによってやられたのかボロボロで倒れていた。


 ゆかりが意識があるかどうかを確認する。


「まだ息がある……何があったか話せるか?」


「みんな……大変だ……。モノクローヌが……もの凄く強い災いを……作りだしたんだ……!」


「私も少し被弾してしまいまして、足を挫いてしまいました……!」


「俺は何とか大丈夫だが……あの災いはもう目の前にいる……!」


「災いの正体……!」


 災いの正体を見るために晃一郎が指を指す方向に向け、そこにはとてつもなく高い魔力を感じた。


 モノクローヌしかいないはずなのに何故かマイナスエネルギーが同時に7つも感じたのだ。


 不思議に思ったさくらたちはモノクローヌを警戒し、戦闘体勢に入るために変身する。


 その様子が見えたのかモノクローヌは嬉しそうに微笑み、アルコバレーノにさらなる絶望を与えようとする。


「ふっふっふ……。しばらく会わないうちにたくましくなったわね。まさか四天王を全員倒すだなんて、あなたたちは強くなったわ。だけど……心の中にあるもう一人の自分自身に勝てるかしら?」


「もう一人の……自分……?」


 モノクローヌがもう一人の自分と言いだし、さくらたちにはどういうことかわからなかった。


 怯える澄香を晃一郎は庇うようにを抱きしめ、自分が前に出て災いの方を(にら)む。


 するとその災いの正体が今ここでわかった――


「うふふ、私たちが相手になるよ」


「嘘……!?」


「そんな……!」


「何でアタシたちがいるんだ……?」


 モノクローヌの背後から突然現れた災いはアルコバレーノのみんなと同じ姿で、その魔力はとてつもないマイナスエネルギーだった。


 髪形も髪の色も全部一緒ではあるが、服装だけは真っ黒で武器も黒くなっていた。


 目には希望というものがなく、ただ作られた存在なのだろう。


 さくらの偽物はさくらに愛について説得を始める。


「私はね、他人なんかに愛を注ぐより自分だけ愛して自分さえよければそれでいいって思うんだ。それに他人を愛したってね、いずれはみーんな裏切って私を(おとしい)れる者なんだよ? そんなのって裏切りという絶望だよね? だったら最初から愛は他人になんか向けないで自分にだけ向けてればいいんだよ。だから私は……自分のためにあなたたちを殺すよ。さようなら、もう一人のワ・タ・シ♡」


 すると突然、7人の偽物は黒い鏡へ目がけてそれぞれの本物の腹を蹴り飛ばすし、そのまま鏡の中へ押し込まれて散り散りになった。


「みんな!」


「そんな……みんなが自分自身と戦うなんて……!」


「あいつまさか……! おいモノクローヌ! やはり貴様の目的は偽物を作ってあの子たちを絶望に落とすつもりか!?」


「ふっふっふ……さすがかつて私の手先による絶望から這い上がった男ね。あなたのような勘の鋭い人は感心するわ。彼女たちはモノクロバレーノといって、アルコバレーノの心の闇を具現化した作られた存在の偽者よ。あなたの言う通り、あの子たちが自分自身の弱さに負けて絶望する瞬間を世界中に見せつけ、二度と希望など持たないようにするのよ。だからあなたたち4人はここで絶望の瞬間を見守っていなさい」


 モノクローヌは余裕の笑みで純子たちの前に仁王立ちし、7つの黒い鏡を目の前に見せつける。


 アルコバレーノはそれぞれの異世界に飛ばされ、偽物たちは容赦なく攻撃を仕掛ける。


 さくらたちはこれから自分自身に打ち勝つために戦う事になったのだ。


 さくらは枯れ果てた花畑の世界にて、偽物のさくらと交戦していた。


「うふふふ、ほらどうしたの? あなたの与える愛はこの程度なの?」


「うっ……! くぅっ……!」


「私はあなたの事を愛しているからあなたには死んでもらいたいの。あなたのような偽善の愛を消すために私たちは作られたの。仲間だの友達だの……そんなくだらないものには執着しない。ただこの世の絶望を与えるためだけに作られた存在。だからぁ……ここで死んで♡」


 偽物のさくらは自分が愛しいがためにさくらを殺そうとし、友達や仲間のことをくだらないと言ってさくらを追い詰める。


 リボンで戦えば一方的に縛られ、杖では遠距離で一気に攻められ、棍棒では力任せに叩かれていた。


 ほむらはオアシスなど存在しない乾ききった砂漠地帯で戦う。


「おらぁっ! もっと熱くなってそのまま焼け焦げて消えろ! アタシの炎は全てを焼き尽くす炎なんだぜ! テメェの生ぬるい炎なんざすべて消してやるよ!」


「くっ……! うがぁっ!」


「この程度のパワーかよ! 雑魚らしくくたばっちまいな!」


 偽物のほむらは強引に槍で叩きつけたり胸部を突き刺そうとし、ほむらを殺すことにためらいはなかった。


 あまりにも力任せで攻め続け、ほむらの心の情熱を消そうと圧倒的な力でねじ伏せようとした。


 橙子は岩山で戦い、素手による格闘戦をしている。


「ねぇ、お前の思う元気ってさ、正直言って何の意味があるの? どうせ頑張ったってトップになれないし、叶わない夢だってあるんだよ。いい加減諦めてそのままボクの手で葬られてくれないかな?」


「そんな事……あるもんか! ボクは――」


「口答えならあの世でしなよ!」


「ぐはぁっ!」


「やっぱりお前の言う元気ってものは無駄なものだね。さっさと」


 偽物の橙子は元気を出すことが無駄なことだと諦めた表情で橙子を殴り続ける。


 橙子が根性を見せても、それをあざ笑うかのように叩き潰していた。


 千秋はグランドキャニオンのような荒野で銃撃戦をしていて、千秋は偽物の千秋の銃に被弾していた。


「うう……!」


「あはははははっ! 誰かを痛めつけるって最高に笑顔になるね! ねぇ、あなたもそう思うでしょ? 『他人の不幸は自分にとって最高の笑顔だ』って言ってみてよ!」


「きゃあぁぁぁぁっ!」


「あははははっ! そう、その悲鳴だーいすき♪ もっと絶望した顔で私を笑顔にしてよ!」


 偽物の千秋は千秋をいじめることに喜びを感じていて、絶望に陥れることで笑顔になれるサディストぶりを見せていた。


 その表情を見て千秋は悲しくなり、今にも泣きそうな顔で銃撃戦を続ける。


 それでも偽物の千秋は残酷な表情で笑いながら千秋をいじめていた。


 みどりは黒い霧が発生している草原で戦い、みどりの体には既に数本の矢が刺さっていた。


「ここまでお強いとは……!」


「人は愚かな下等生物ですね。何を学んでも同じ事を繰り返す。だから人は悪に走り、時には争い憎み合うものです。そんな事に目を背けるあなたは、学習能力に欠けますね。」


「うう……!」


「はぁ……わたくしとしては残念です。あなたにはもう少し教育が必要なようですね」


 偽物のみどりは人間の愚かな姿勢を嘆き、そしてみどりに対しても何も学んでいたんと見下して憐れんでいた。


 みどりは短剣で挑むも偽物の方が素早く、両腕は切り傷でいっぱいだった。


 それでもみどりは持ち前の成長力と頭脳で突破しようと試行錯誤(しこうさくご)する。


 海美は海辺の砂浜で戦い、体の数か所に剣で斬られた跡が残っていた。


「ああ、私ってなんて優しいのかしら。あなたのような弱者をここで殺して楽にさせる。こんな慈愛にあふれた優しさは他にあるかしら?」


「くっ……! どうしてそんな……!」


「そろそろ楽にしてあげるから、抵抗しないで地獄に堕ちなさい!」


「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」


 偽物の海美は圧倒的な剣術で海美を追い詰め、そして死なせることが最大の優しさだと誘惑してきた。


 海美は医学を勉強していて、延命のせいで余計な苦しみを味わうことについて考えていたので、その結果、偽物の海美が現れたんだと思い知ったのだ。


 海美は自分の弱さを痛感しながら戦い続けた。


 ゆかりは竹林の中で斬り合っていて、偽物のゆかりによって身動きが取れずにいた。


「貴様の勇気はここで受け継ぐ。だから安心して息を引き取るがいい。悪に走る道こそ勇気、悪の道を繰り返すのが世の伝統だ。そして悪を崇拝(すうはい)することこそ運命なのだ!」


「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!」


「ふっ、私の方が貴様より何枚も上手(うわて)のようだな」


 偽物のゆかりは悪に走ることこそが勇気であり正義だとゆかりを挑発した。


 ゆかりはそのような邪道に走った覚えはなく、もし弱い自分が偽物を作り出しているのなら何か心に闇があるのではないかと推測した。


 遠距離での手裏剣(しゅりけん)もむなしくかわされ、心理戦を制した方が勝利を呼ぶ状況だった。


 その様子に耐え切れなくなった純子はモノクローヌに野望を聞く。


「モノクローヌ! どうしてこの世界を……レインボーランドを支配しようと思ったの!? それにあなたは私のことをあの時、探していたわね! どうして私の命を狙ったの!?」


「黒田純子……10年前にあるお方からモノクロ族の裏切り者があなたと聞いてね、あなたを放っておくわけにはいかなかったの。あなたのようなモノクロ族の裏切り者を葬れば、あのお方もお喜びになられるのだから。あのお方の野望のために、私はあなたを殺そうとしたのよ。だけどあなたはその野望に抵抗し、私たちに立ち向かった。そしてこの世界で封印され、10年間も動けなかった。だけどあなたさえ不自由にすれば、もう抵抗する者はいないって思ったわ。そして封印が解かれた時にあのお方から『憎き7人の賢者の末裔(まつえい)があの世界にいる』と聞かされ、もう一度この世界を征服しに来たわ。封印されている間にもレインボーランドはある目的のために魔物によって奴隷として扱い、少しずつ目的を達成しつつあるわ。まぁもっとも、あなたたちに目的を話したところで理解できないでしょうから話しても無駄ね」


「そう……だったらあなたに勝ち目はないわ。あの子たちはまだ諦めていない、何度も立ち上がる度に強くなり、世界中に希望を与えるために舞い上がる魔法少女よ。あの子たちを侮らないでちょうだい!」


 純子は心の中にある自分自身と向き合うためにに心理学を勉強させていた。


 前から純子はさくらたちから『理想と現実のギャップに悩んでいる』と相談され、何度もカウンセリングを受けている。


 心の奥に潜む闇と戦う時が来たら、さくらたちはそれをいずれは乗り越えなければならないと純子もわかっていて、あえて芸能界ではあまり学ばない心理学を勉強させていたのだ。


 そしてその結果がもうすぐ現れようとしていた。


 つづく!

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