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第52話 暴力魔の本気~決着

 ヘルバトラーはアルコバレーノを目掛けて突進し、そのまま体当たりされて後方まで飛ばされる。


 周りに障害物がなかったからか背中から衝突はなく、それでもギリギリ立てるくらいだった。


 ヘルバトラーはそれでも容赦なく本気出して殴りかかってくる。


「この程度かぁオラァっ! ちょっと本気出したくらいで弱く感じるぜぇっ!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「千秋! くっ……! 目だけで見るな……。感じるんだ……」


 ゆかりは目だけで追う事をやめ、気配を気で探った。


 素早いヘルバトラーをとらえるには目だけでは無理と判断したのだろう。


 その判断がよかったのか、ゆかりはヘルバトラーをとらえた。


「そこだっ!」


「遅ぇんだよ!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 しかしヘルバトラーはゆかり以上に素早く顔面を殴り、もはやヘルバトラーを止められる者はいなかった。


「ゆかりちゃん!」


「全員まとめて立てないようにしてやるよぉっ!」


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」


 アルコバレーノはヘルバトラーの発した気迫で上まで高く飛ばされ、そのまま急降下して地面に背中を直撃する。


 息も出来ないくらい強く打ち、頭も回らなくなってしまった。


 それでもヘルバトラーは容赦なく一人ずつお腹を蹴り続けた。


 最初にヘルバトラーが危険視していた橙子の腹を蹴り、痛がってる様子を高笑いしながら顔面を踏みつける。


「『雑魚ってよく群れるモンだ』ってデスカーンが言ってたが、本当のようだな。オレら四天王にそんな弱さはねぇ。全員一人で勝てる自信があっからよ」


「うう……」


「って言ってももう聞く余裕もねぇよな。そのまま死ねぇぇぇぇっ!」


 ヘルバトラーは橙子にとどめを刺すために頭を殴ろうとする。


 しかし橙子は限界を越えながらヘルバトラーの右足を掴み、最後の抵抗をする。


「…………っ!」


「なっ……!?」


「全員一人で充分なんだね……。よっぽど自分に自信があるんだね……。別にそれでもボクは構わないよ……。一人でやらなければならない時だってあるし……誰だって一人がいい時もある……。でもそれは自分のしたい事をしながら……他人に依存することなく……それでも他人を見下したりしないでストイックにこなしているんだ……。お前らみたいに……自分さえよければ他人が犠牲になっても構わないって連中の自信なんて……ただの過信であり……思い上がりだ……。みんなはもう戦えなくても……ボクは諦めない……! 絶対に……お前を倒すっ!!」


「うわっ!? 何だこれ!?」


 ヘルバトラーの右足を掴み、橙子は這いつくように起き上がる。


 覚悟を決めて立ち上がると、オレンジ色の光が橙子の胸から光り出す。


 橙子は身体が軽いと感じ、今までの痛みが嘘のようになくなっていくのを感じた。


 手足からはオレンジ色の閃光が光り、どこからともなく不思議な声が聞こえた。


「テメェの覚悟、見せてもらったぜ。さすが俺様の見込んだ女だな!」


「誰……? ボクの事を知っているの……?」


「まぁな、テメェは俺様の遠い子孫だからな。それよりもあいつを倒すんだろ? 少しだけ力を貸してやんよ!」


「遠い子孫……? 何だかわからないけど、ありがとう!」


「あいつは……まさか……!?」


 突然聞こえた不思議な声は荒々しくも、とても活発で元気が湧いてくる男性の声だった。


 そして橙子にとって、はじめて出会ったはずなのに、会ったことがあるのか懐かしい気持ちになった。


 橙子は不思議な声の力を借りてヘルバトラーに突進し、拳に思いきり力を込める。


 ヘルバトラーの腹を目掛けて拳で殴り、ついに本気のヘルバトラーにダメージが通った。


 そのまま橙子は連続で攻撃を重ね、ヘルバトラーの理性を本当になくすことに成功させる。


「テメェ……! よくもこのオレに屈辱を味合わせやがったな! テメェだけはぶっ殺して何も残らねぇようにしてやるっ!」


「ボクは負けない! 自分の夢のために! みんなの元気をもらってボクは前に突き進んでいく!」


「言わせておけば! 甘ったれたことを言ってんじゃあねぇ!」


「甘いのはそっちだよっ!」


「ぐはぁっ……!」


 不思議な声が聞こえてから不思議な力が宿り、まるで自分じゃないような感覚になる。


 スポーツ界でよく聞くゾーンというものがある。


 過去にそのゾーンに晃一郎もなったことあったという話を橙子は思い出す。


 しかしそのゾーンとは違った何かのパワーを感じたのだ。


 もしこれがプラスエネルギーの最高魔力だとしたら、橙子の心の光は凄まじいものになったのだろう。


 「ボクはさっきより、もっともっと強くなっているんだ! お前は自分を完璧と思っているだろうけど、それでは成長は終わってしまう! ボクは完璧じゃないからこそ、たくさん吸収して進化し続ける!」


「そうかよ……ならこの技で全て水の泡にしてやるぜ! 地獄式……魔封波拳(まふうばけん)!」


「最後は拳になるんだね……いいよ、その挑発乗ったよ! シャイニング――バスターっ!!」


 ヘルバトラーの拳と橙子の拳がぶつかり合い、力の強い方が直撃して倒せるほどの状況になる。


 力はほぼ互角ながら、若干ヘルバトラーの方が有利で、橙子は少しだけ押されてしまう。


「くっ……!」


「橙子ちゃん……!」


「橙子! いけーっ!」


「橙子! そなたは最強の格闘家だ! 己の光を信じるのみだ! 頑張れ!」


「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」


「ぐぎゃあああああああああああああっ――!!」


 橙子の拳から大きな光がヘルバトラーを飲み込み、そのまま身体中に光を浴びさせて焼けていった。


 そのままヘルバトラーは倒れ込み、橙子は様子を見るべく近づいた。


 近づいて見るとヘルバトラーはもはや虫の息で、もう戦える状態ではなかった。


 橙子はゆかりから教わった残心を示し、いつ不意打ちが来るかと身構えた。


 するとヘルバトラーは死にかけの状態で橙子たちに言い残す。


「この最強のオレを倒すとはな……テメェの力を見誤ったオレが弱かったな……。だがな……オレを倒したところで……世界に平和なんざ訪れねぇ……。他の四天王の強さは……こんなモンじゃあ……ねぇ……ぞ……」


 そう言い残してヘルバトラーは灰になって消えていった。


 これによってアルコバレーノは四天王に初勝利し、純子が車いすで近づきながらも立ち上がり、橙子を抱きしめる。


 立つことが出来ない純子は、傷だらけの橙子を庇うように背中から倒れた。


 それでも純子は嬉しそうに涙を流し、橙子の頭を撫でながら全力で褒める。


「柿沢さん……。あなたは私が出来なかったことを、みんなの力を借りて成し遂げたのよ……。その元気さと前進する前向きさを忘れないで、この先の戦いを乗り越えなさい……」


「社長のアドバイスがなかったら、ボクたちは負けていましたよ。あれから本気を出させて、本当に理性をなくすまで追い込めて……頑張りました」


「ええ……。あなたは私の誇りよ」


「ありがとうございます。それより……みんなはもう意識を取り戻しました。早く休める場所へ……」


「そうね、柿沢さんは少し休んでなさい。私があの子たちを……」


 純子は戦いで疲れた橙子を癒すために少しだけ休ませようとする。


 しかし純子の背後から突然レインボーランドの兵士が声をかけてきた。


「その必要はありません。我々レインボーランド兵が彼女たちを城まで運びます」


「うわっ! いつの間に!?」


「もう、いるならちゃんと声をかけなさいよ。ビックリするじゃないの」


「すみません。さっきオレンジ色の強い光があってすぐ向かいました。柿沢さん、あなたはやっぱり伝説の賢者の末裔だったんですね」


「え……?」


「伝説の賢者の末裔……? 私にもわからないのだけれど、どういうことかしら?」


「詳しい事は城で話します。とにかく城まで送りますから休んでてください」


 アルコバレーノは援軍に向かった兵隊に駅まで運んでもらい、汽車で城まで向かった。


 負傷したさくらたちは治療室で回復魔法を浴び、さっきの不思議な力で回復した橙子はご飯を食べる。


 橙子は先ほど感じたオレンジ色の光と不思議な声、そして無限に湧いてくるパワーは何なのか気になりつつ、仲間の事が心配になって治療室へ入る。


 するとみんなはもう元気になっていて、橙子は安心して座り込んでため息をついた。


 四天王も残るは三人、果たして他の三人はどんな戦略で来るのだろうか。


 つづく!

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