第50話 罠
アルコバレーノはレインボーランドことモノクロ帝国にたどり着き、レインボーランドの様子を見に行く。
すると大勢の人々が、ムチで叩かれながら労働を強いられている光景だった。
人型の魔物が国民を威圧し、国民は苦しそうな表情で助けを求めていた。
「ひどい……! どうしてこんな事を……!」
「こんなのあんまりだよ……!」
「許せぬ……モノクローヌめ!」
「絶対に助けましょう……。そのために四天王を倒しましょう……!」
「レインボーランドの方々のために負けられませんね……!」
「10年前より酷いわね……。このままだとみんな死んじゃうわ……!」
「10年前より……!? こんなに胸が張り裂けそうなのははじめてだよ……!」
「こんな事ってありかよ……!」
この光景にさくらたちは胸が苦しくなり、シロンの言っていたことを思い出しながら涙を流す。
町の人々の表情は暗く、ただ黙々と労働をするだけだった。
モノクロ団のアジトはどこにあるのかがわからないので、王国の王さまに会いに行くことになった。
王宮の城に向かう途中、空から黒くて禍々しく強い魔力を感じたので上を見上げた。
するとそこには猛スピードで空を飛ぶモノクローヌの姿があった。
「あれは……!? モノクローヌ!」
「ふっふっふ……。私の罠にハマるなんてまだまだ未熟ね。私はあなたたちの世界に行き、日本中からマイナスエネルギーを溜め込みに行く。あなたたちは四天王を全員倒さないと解除できない結界に閉じ込めたわ。四天王を倒すまでこの世界には出られない。でも心配しないで、あなたたちの世界には手は出さないわ。四天王との相手をして絶望しなさい。ただし……もしあなたたちが倒れたならば、容赦なく世界を絶望の黒に染めるわ、覚悟しなさい」
「やられた! やっぱり罠だったんだ!」
「でもどっちみち四天王を倒さないとモノクローヌは倒せないよ!?」
「確かにな……。いずれにしても相手にせねばならぬ。」
「だったら四天王を全員倒そう! ボクたちが負けたら、世界が黒く染まっちゃう!」
「はい! わたくしたちは魔法少女として四天王と戦います!」
「今は王さまに会いましょう」
モノクローヌの策略にハマったアルコバレーノはレインボーランドに取り残され、モノクローヌによって決壊を張られて元の世界に帰れなくなる。
普段は人間界と繋がれるテレパシーも届かなくなり、もう後には引けない状況に追い込まれた。
王宮の城に着いたアルコバレーノは王さまに会うために城を散策する。
すると一人の兵士が槍を構え、アルコバレーノに穂先を向けた。
「怪しい奴らめ! そこで止まれ!」
「きゃっ! この人たちは!?」
「わからないけど、きっとモノクロ団の手先かもしれないわ」
「モノクロ団だと……!? 貴様らこそモノクロ団の手先ではないのか!?」
兵士はさくらたちをモノクロ団の手先と勘違いしてしまい、警戒しながら槍で突き刺そうとする。
その様子を見た純子が車いすから起き上がり、倒れながら兵士の人を説得する。
「ちょっと待って! うっ……!」
「社長! 無理しないでください!」
「いいの! それよりも覚えてるかしら? 私よ、黒田純子よ! 魔法少女候補をここに連れてきたの!」
「黒田純子……? はっ……!? もしや黒田様!? お久しぶりです! お元気そうで何よりです!」
「思い出してくれたのね。あなたはもう兵士長になったのね。今から王さまに挨拶に行こうと思ってたの。玉座に案内してくれるかしら?」
「わかりました! 先ほどの皆様への無礼をお詫び申し上げます!」
「大丈夫です」
「よかった……! おっと、では王さまの部屋に案内いたします!」
兵士長は純子に敬礼をし、すぐに王さまのところへと案内した。
不思議と兵士長は純子を見つけると、さきほどとは違った穏やかな表情になり、10年間のレインボーランドの事を話す。
モノクロ団が10年間封印されても人型の魔物は存在し続け、国民に労働を強いられていた。
その労働の目的は一体何なのかはまだわかっていなくて、それでも国民の何人かは心が壊れてしまっていた。
シロンはそれを見かねて古文書を見つけ、人間界へと旅立ったと兵士長は語る。
王さまの部屋に着き、ついにレインボーランドの王さまとご対面をする。
「国王陛下、黒田純子様が帰還しました! そしてシロン王子がおっしゃった魔法少女が見つかりました!」
「何と……!? すぐに入れさせなさい。私が話をしよう」
「ははっ!」
さくらたちは王さまの部屋に入り、王さまによって歓迎される。
シロンの父である王さまの姿は美しい銀髪で、紳士的でダンディーなヒゲを口の上に生やしていた。
装飾は派手ではなく、王冠もボロボロではあるが、威厳と優しさであふれる王さまだった。
王さまはさくらたちの目を見ると、すぐに自己紹介をし始めた。
「君たちがアルコバレーノだね、まっすぐで美しい目をしているよ。私がレインボーランド国王のビアンコ100世だ。黒田くんにとってはそうだね、シロガネ王妃の弟だよ。いつもシロンがお世話になっているね。」
「はじめまして、私は――」
「よい、名はもうシロンから聞いているぞ。シロンからレインボーランドの伝説は聞いているかね?」
「いいえ、シロンはただ『魔法少女になってモノクロ団を倒して』と言われただけです」
「私もはじめて聞いたわ。シロガネさんは何も教えてくれなかったもの」
「無理もない、王家でも詳しく知る人は少ないのだから。だがシロンは昔から読書が好きでね、たまたまみつけた古文書……君たちのご先祖様が遺した日記を読んで君たちを探していたんだ。レインボーランドにまつわる伝説は1000年も前になる」
「それでその伝説とは……?」
「それは――1000年前にレインボーランドと。モノクロ団の前身であるモノクロ族との戦争で、7人の賢者による活躍で戦争に勝利し、王国の窮地を救った話だ。ここまでが王家に伝わっている話だ。シロンはその日記を読んでからか私にこう言って旅立ったのだ。賢者の末裔が別の世界にいるのなら僕は探しに行く、そして彼女たちを魔法戦士としてこの国を救うと」
「魔法戦士……? ボクたちは魔法少女って言われましたが……?」
「人間界の事も勉強し、最も馴染みの深いであろう魔法少女という言い回しをしたのだろう。そしてもうすぐ伝説は本当になるかもしれん。どうかモノクロ団四天王を倒し、この国を救ってほしい。私からのお願いだ……これ以上国民に苦しい思いはしてほしくない……! この通りだ……!」
王さまは深々と涙を流しながら頭を下げ、国民のみんなを救いたい一心でさくらたちにお願いをする。
さくらたちはもう心を決めていて、言葉を交わさなくてもモノクロ団の野望を止める決心があった。
さくらはアルコバレーノを代表して王さまに決意を表す。
「私たちはシロンや皆さんの想いを背負ってここまで来ました。だから私たちはもう覚悟は出来ています。だから王様は顔を上げて私たちを信じてください。必ずモノクロ団の野望を止めてみせます」
「ありがとう……! では早速おもてなしをしよう。モノクローヌによって閉じ込められてるんだったね、結界が解けるまで泊まるといい」
「ハッハッハ! その前にテメェら全員地獄に落としてやるよ!」
「その声はまさか……! ヘルバトラー!!」
橙子が血相を変えて辺りを睨みつけ、いつでも戦闘に入れる体勢にする。
すると黒い炎が浮き上がってきて、フードを被った筋肉質な少女の姿があった。
橙子たちは緊急事態に警戒していると、ヘルバトラーは宣戦布告として告げる。
「とりあえず今すぐにリーファ草原に来な! オレと殺し合いの戦争をしようじゃあねぇか! もし逃げたなら国民をも全員皆殺しにしてやるからな! さっさとオレのとこに死にに来な!」
「待て! くっ……消えちゃったか!」
「どうしよう……。罠かもしれないけどモノクロ団四天王が自ら戦うって……!」
「行くしかなさそうね。どの道戦わないと元の世界に帰れないもの」
「うん! 笑顔を守るために四天王をやっつけよう!」
魔法少女として強い気持ちで戦うと決めると、純子も勢いよく声を出す。
「私も一緒にいいかしら? モノクロ団四天王の事なら私が知っているから少しは役に立てるかもしれないわ。戦えないしアドバイスしか出来ないけど……」
「何言ってるんですか! 社長がいれば百人力ですよ! 社長の言葉でアタシらはやる気になるんですから!」
「そうですよ、わたくしたちを今まで支えてくださったのは社長です。四天王の弱点がお分かりなら心強いです」
「みんな……ありがとう。ビアンコ国王、私たちはリーファ草原に向かいます」
「では汽車を手配しよう。レインボーランド号でフォレスタ村駅がある、そこから少し歩けばリーファ草原だ。どうか無事に戻ってきてほしい」
ヘルバトラーとの決戦が始まり、レインボーランド号に乗ってフォレスタ村に向かう。
汽車で数10分が経ち、ようやくフォレスタ村に着いた。
村から反対の方面に歩くと、そこには広い草原が目の前にあった。
草原に着くとヘルバトラーが仁王立ちをしていて、とてつもない魔力で威嚇していた。
「本当に来たようだな! 逃げなかったことは褒めてやるぜ! しかし殺し合うのにこの服装は邪魔だな……鬱陶しいから外すぜ!」
ヘルバトラーがフードやローブを脱ぎだし、真の姿を現す。
その姿は橙子たちだけでなく、純子も驚く姿だった。
四天王とのはじめての戦いに、橙子たちに緊張が走った。
つづく!




