第47話 紅白歌合戦・前編
クリスマスパーティを終えたアルコバレーノは、紅白歌合戦に向けてライブの準備をする。
その前にリハーサルをすることになり、NHTの本社に向かった。
NHT本社に着くと、そこには厳重な警備の中で歓迎される。
リハーサルの楽屋に入ると、今売れているガールズバンド、生徒会役員が迎える。
「あなた方がアルコバレーノさんですね。はじめまして、生徒会役員ボーカルの天草文乃です」
「ベースでリーダーの一条あずさです」
「ギターの津田貴美です」
「ドラムの萩原鈴音です」
「お会いできて嬉しいです! よろしくお願いします!」
ほむらが嬉しそうに握手し、生徒会役員というガールズバンドがものすごい影響力であることをさくらたちは知った。
さくらたちは恐縮ながら魔法少女の噂を少しだけ教えられる。
それでもさくらたちは噂に驕ることなく、ただみんなを守りたい一心で戦っているだけだと照れくさく答える。
それでも天草たちは立派な仕事だと褒め、アルコバレーノを誇りだと言った。
そんな楽しかった空気も、ある人物によって凍りつくことになる。
「あら皆さんごきげんよう。相変わらず馴れ合いをしているのね。弱い者ほどよく群れるとはこの事ですわ」
「そういや紅白に出るんだったな……! 高飛車きらら!」
「落ち着いて赤城さん。彼女をまともに相手すると何されるかわからないから……」
「下民はおとなしくわたくしに従えばよろしいのですのよ。ではまたお会いしましょう」
きららは嫌味を言うだけ言って楽屋を後にし、ほむらは悔しそうに下を向く。
きららの態度に楽屋は暗い空気になり、橙子は怒りの表情をし、千秋は悲しそうにつぶやく。
「相変わらず態度が悪いね……!」
「あの子って本当の笑顔を知ってるのかな……?」
ほむらと橙子、ゆかりはきららの態度に怒りが湧き、生徒会役員の天草がなだめる。
「彼女は高飛車財閥の一人娘で、もし逆らえば社会的制裁を加えられるのよ」
「父親はたった一代で世界企業のトップにさせ、逆らう企業や人物には制裁と共に自分の配下に置いて残虐な扱いをすることで有名なの。政府も外国も逆らえないから恐れられているんだ」
「だからってあんまりだよ……!」
「今は私たちに出来る事をしよう。アルコバレーノはこんな事で屈したりしないのだからな」
「ええ、ゆかりちゃんの言う通りよ。生徒会役員さんもお気をつけてください」
「ご心配かけてすみません。私たちもそう簡単に負けないわ。じゃあリハーサルに行きましょう。」
生徒会役員と一緒にリハーサルに向かうと、純子が一人で車椅子でさくらたちに近づき、伝えたいことがあると言ってさくらたちに伝える。
「あ、いたいた。みんな、ちょっと聞いてちょうだい。大道具を設営した会社の社長さんがあなたたちに会いたがっていたわ」
「誰だろう……? リハーサルに行ってみよう」
大道具会社の社長が『アルコバレーノに会いたがっていた』と聞き、不思議に思ったさくらたちはリハーサル会場のNHTホールへ向かう。
まだ設営は全て終わっていなかったが、それでも準備が進んでいて今にも終わりそうな雰囲気だった。
さくらたちに気付いたタオルを頭に巻いた男性が歩み寄ってくる。
「アルコバレーノさんですね。お久しぶりです、サクマ大道具代表取締役社長の佐久間総一郎です」
「えっと、桃井さくらです」
さくらはいきなり佐久間に声をかけられ、久しぶりだと聞いてどういうことかわからなかった。
すると佐久間に気付いたほむらと海美、みどりが嬉しそうに声をかけた
「まぁ、佐久間さん。お元気そうで何よりです♪」
「あれから会社を立ち上げたんですね。おめでとうございます」
「アタシたちのライブのサポートまでしてくれてありがとうございます! 紅白での歌う姿も見てくださいね!」
「もちろんだよ。君たちの活躍を見ていると私も頑張ろうって気持ちになるからね。リハーサル頑張ってね」
佐久間の応援を背にリハーサルに入り、最初の特攻隊長としてPhantomが先頭を仕切り、次々と多くのアーティストがリハーサルをこなす。
アルコバレーノの出番が近づくと緊張で声が震え、いつもの発声が出来なくなっていた。
順番が回ってリハーサルの出番になると、Saturnの天ノ川龍馬が肩を叩いて励ました。
「客がいない方が逆に緊張する気持ちはわかる。だがお前たちはもう一流になったんだから誇りを持って挑め。それだけだ、頑張れよ」
その言葉に励まされたさくらたちは『もうみんなと同じ一流のアーティストになったんだ』と自覚し、誇らしい気持ちと同時にやる気になった。
不思議と緊張は解け、いつもの発声と体操で最高の状態に仕上がる。
するとSaturnのメンバーから握手を求められ、それぞれ自己紹介をする。
「いいパフォーマンスだったよ子ネコちゃんたち。僕は鬼龍院岳斗、一応最年長だけどカッコよくキメるのがポリシーだから見ていてね☆ って痛いよ龍馬」
「相変わらずチャラチャラナンパしやがって。すまないな、こいつ女の子になるとすぐ口説くんだよ。だから30代にもなって独身なんだ。俺は23歳でこいつは最年少でお前らと同じ15歳の――」
「御子柴翔でーす! 同い年が活躍するなんてすごいね! 僕も負けてられないね!」
「俺たちSaturnは年齢差こそあるが、その壁を超えたシャイニーズの将来エースになるユニットだ。先輩たちに負けねぇ最高のユニットになる。そのために紅白は白組として負けねぇ」
「ええ、私たちも紅組として負けません」
海美が珍しく熱くなっていて、紅組の皆も後に続くように笑顔で火花を散らす。
あれから交流として数々の先輩方とお話をする。
さくらはSBY48の同時期にデビューしたミューズナイツの一人である前田あかりとアイドル談話をする。
ほむらはPhantomと共にロックバンドを牽引したR’zとロック談話をする。
橙子はSaturnにダンスのコツを教わり、アクロバットな動きにキレが増した。
千秋はDJ☆AIKOとテクノの作曲のコツを聞き、自分たちで曲を作るために学んでいた。
みどりはフォークシンガーの武田直人とギターの講習を受け、弾き語りの実力を上げていった。
海美は生徒会役員とガールズバンドとしての活動を聞き、信頼し合える仲間の素晴らしさを教わった。
そしてゆかりは演歌歌手の大和田大五郎にこぶしのコツを教わっていると、京都でローカルアイドルをしている月光花と再会し、和の伝統的な発声法を学び合った。
きららはというとリハーサルを終えると姿を消し、怪しい動きをしていたが無視することにした。
リハーサルを終えたアルコバレーノはそのまま近くの喫茶店でお茶をし、今後の活動についてとそれぞれのプライベートの話をする。
そして翌日、ついに紅白歌合戦の時が来た。
つづく!




