第44話 文化祭・中編
リハーサルから1週間が経ち、東光学園も文化祭当日を迎えた。
さくらたちは洗い流すタイプの黒染めをし、目立たない服装で変装をして文化祭を満喫する。
正門前に着いたさくらたちは、それぞれの行きたい展示会へ向かう。
取引を終えた純子と、野球部に呼ばれてきた晃一郎、元アイドルとして取材を受ける澄香も一緒だ。
「それじゃじゃ各自行きたいところに行ってらっしゃい」
「「「はい!」」」
「それじゃあ16時にまたお会いしましょう!」
「さくらちゃんはどこに行くの?」
「私はアイドル研究部と新体操部かな」
「ボクは空手部とヒップホップ部の予定だよ」
「アタシはやっぱ野球部だな。ストラックアウトとバッティングしてくるぜ」
「私はフェンシング部の体験と製菓部でお菓子を見てくるわ」
「私はお笑い部でコントを見てくるね」
「私は茶道部と邦楽部だな。和太鼓部や日本舞踊部も悪くない」
「わたくしは勉学部とフォークソング部を見ていきますね」
「それじゃあみんな、また後で会おうね」
「それじゃあ私たちも文化祭を満喫しましょう」
「はい! 晃一郎さんは野球部にお呼びがかかっているのでしたね」
「甲子園の優勝したときの気持ちを教えてくれって言われたからな。それに女子も野球部ができたみたいだし、妹も中等部から来るらしいから迎えに行ってきます」
「そうね、妹さんのところに行ってあげなさい」
「ありがとうございます」
それぞれ行きたい場所に向かい、ほむらは最初に行きたいところである野球部へ向かう。
噂によれば『春の甲子園が確実』と言われていて、『甲子園でも優勝候補だ』と言われているメンバーばかりとほむらは聞いたことがあった。
ほむらそんなスーパースターの人たちに合うのが楽しみで、鼻歌で横浜ハムスターズ球団歌を鼻歌で歌う。
硬式野球部グラウンドに着いたほむらは、早速野球部のストラックアウトを体験する。
ほむらの順番が回ると、選手たちが声をかけてきた。
「君、中学生? 野球経験は?」
「野球は小学校3年まで軟式で、4年からリトルリーグで硬式やってました」
「ガチだ! 今は野球はやってないの?」
「はい、両親が共働きで兄妹の世話があるので」
「中学生でそこまでファミリーを思うなんて偉いナ。そんなユーにストラックアウトとホームランダービーをしてもらうゾ」
「やってみます!」
ほむらは全力投球で的を狙い、速度は101キロと女子の割に速い球を投げる。
野球部の選手たちは驚いた表情をしていた。
コントロールはブランクがあるせいか、的に5つ当てるのが精いっぱいだった。。
ホームランダービーでは硬式用金属バットで打席に立ち、100キロのマシンからボールを打つ。
最初は芯に当たらず手が痛みと痺れで悩むが、徐々にコツを掴んで当てられるようになった。
そして――
「おらぁっ!」
「Oh! ナイスバッティング! キミは素晴らしいデスネ!」
「ケビンさんに言われると恐縮ですよ。」
「ノンノン、キミは女子硬式野球部でもきっとレギュラーになれマス。」
「ええ、驚いたわ! 私たち女子硬式野球部も男子硬式野球部と毎日一緒に練習しているけど、ここまでの女子はいないもん!」
「あなたは即レギュラーになれるわ! 家庭の事情が落ち着いたらこの学校受験して野球部に来てね!」
「考えておきます! 貴重な体験をありがとうございました!」
硬式野球部の体験コーナーを終え、硬式野球部の歴史を聞く。
この学校では初代理事長で創立者の人が大の野球好きで、野球の教育に熱心で自ら顧問を務め、ここまでの設備になった歴史がある。
今の石黒和明監督は名門なのに結構自由な人で、報告は絶対だがデートや家族旅行など何かプラスになる事情があれば休んでもいいルールがある。
ただ練習はとてもハードで、毎日立てないほど厳しいとのこと。
次にほむらは軽音楽部のロックバンドのライブに行く。
ライブハウスという軽音部の部室や活動拠点を兼ねた場所に行き、ロックなバンドたちに圧倒される。
「盛り上がっていこうぜー!」
「「「いえーーーーーーい!」」」
「今日のライブは俺たち軽音部だけじゃなく、フォークソング部や電子音楽部、ヒップホップ部と多彩なやつらがライブするけど、そいつらの出番も盛り上げてくれよな!」
「「「いえーーーーーーい!」」」
軽音楽部はポップス部門の音楽で、バンドだけでなくへヴィメタル、バラード、アニメソングでも構わないという音楽系部活だ。
音楽系では演歌部という独自の部活もあるが、そこは歌舞伎部や京劇部、邦楽部、和太鼓部も使う和風の設備である演舞場でライブする。
ほむらは他にもチアリーディング部のダンス、マーチング部のマーチング、食事はラーメンとアップルパイを食べ、約束の16時になったので正門前に集合する。
「ほむら遅いよー!」
「悪いな、食うのに夢中だったぜ! それでみんなはどこに行ったんだ?」
「私は最初はアイドル部のシベリアムーンのライブを見に行ったよ。ロシア人留学生とその人と前から交流がある日本人のデュエットだったよ。他にも新体操部と製菓部、漫画アニメ部のアニメを見てたんだ」
「アタシは野球部のストラックアウトにホームランダービー、チア部のダンス、軽音楽部のロックなライブ、マーチング部の演奏を見てたぜ。それと美味い飯をたくさん食ったぜ」
「ボクはヒップホップ部でラップバトルを見て、司会者MCのアドリブによって飛び入り参加してバトルしてそのまま優勝しちゃった。他にもストリートダンス部のダンス、ラグビー部のハカも見たよ」
「私は漫才部のお笑いコントを見てたくさん笑ったよ。他にもミュージカル部の演技、合気道部の護身術講座、落語部の落語、電子音楽部のテクノやEDMを聴いてビックリしちゃった」
「わたくしは勉学部とクイズ部で問題を解いたり、フォークソング部で弾き語りや古き良きフォークソングを聴いて和みました。他にも弦楽部の演奏とアーチェリー部の体験で弓道との違いを感じました」
「私はフェンシング部のフルーレ講座を受け、製菓部でビスケットを一緒に作ったわ。衣服部のコーディネートやファッションモデル部のファッションショーも見ていい刺激にもなったし、演劇部の演技も参考になったわ」
「私は演歌部で演歌を聴き、邦楽部で琴や三味線、尺八、篠笛を堪能した。日本舞踊部や茶道部による和の伝統を感じることも出来た。歌舞伎部の演舞も普通は男性のみだが、ここは女性もいて新鮮であった。ファッションモデル部の着物部門も海美と一緒に見たぞ」
「後は社長たちだね」
「私たちはそうね、ジャズ演奏部のライブとゲーム制作部の体験版ゲーム、それと漫画部とアニメ制作部の漫画即売会とアニメ鑑賞、衣服部の衣装展示会だったわ」
「アイドル研究部のみんなが凄くきらめいていました。おそらくプロデビューすればいいライバルになりますね。それにコスプレ部によるレベルの高いコスプレには驚きましたよ」
それぞれ行った場所の話をし、それぞれの楽しかったことを話し合って盛り上がっていた。
しかし晃一郎はまだ帰って来ず、さくらたちは心配そうに澄香に聞いてみる。
「そういえば夜月さんは?」
「確かに遅いですね……」
「ふふっ、晃一郎さんなら学園を見学に来ていた妹さんに会いに行ってますよ」
「確かボクたちと同い年の妹ですよね?」
「ええ。名前は夜月暁子。赤城さんなら知ってるんじゃないかしら?」
「はい、中学女子野球の日本代表のエースで、しかも現役スクールアイドルの二刀流です。そんなすごい妹を持ってるなんて、夜月さん何者なんだ?」
晃一郎の家族はスポーツの名家とも言われていて、妹の暁子はアイドルと野球選手の二刀流をしている子が妹だと聞いてほむらは驚いた。
二刀流を仕事にするのは生半可なことではないことをほむらはよく知っているので、晃一郎がいかに優秀な指導者なのかがわかってきた。
そんな妹の曉子の見学のために案内するという事で、来年はこの学校を受けるだろう。
文化祭の一日目が終わる時間になり、ようやく晃一郎が戻ってきて純子が解散を仕切る。
「遅くなりました!」
「いいのよ。それよりも妹さんが元気かしら?」
「はい、妹はここの中等部ですが、高等部に進学するそうです。同時に『アイドルとしてもデビューしたいからお兄ちゃんがスカウトしてくれないかなー』って言ってくるんですよ。あの向上心の高さは俺でも驚きますよ」
「さすが暁子ちゃんですね」
「そうね、でも野球を中途半端にしないでちゃんと二刀流をやり遂げるって条件ならスカウトしてもいいわね」
「そうっすね。伝えておきます」
「それじゃあみんな、今日はここで解散にしましょう。明日に備えて体調と心を整えるようにね」
「「「はい!」」」
この文化祭のゲストはアルコバレーノの他に、さくらの母である桃井花恋と叔母である桃井花音も参加する。
さくらは明日の事で張り切っていて、ほむらたちも負けてられないなと思った。
さくらたちは夜月暁子はどんな子なのか気になり始める。
おそらく二刀流を真面目にやっているとなれば、相当な実力だろうとさくらたちは楽しみと好奇心でいっぱいになった。
そして翌日を迎え、東光学園文化祭二日目が訪れた。
つづく!




