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第42話 ドリームランド・後編

 それぞれの行きたいアトラクションをほぼ行き、残りはみどりとさくらのみになる。


 夕食を済ませたアルコバレーノは、エレキトリカルパレードが行われる時間になり、一旦アトラクション巡りをやめる。


 みどりの行きたいアトラクションはというと、意外なものだった。


「みどりって行きたいアトラクションはどこ? パレードの後でいいかな?」


「はい、実はわたくしはアトラクションも楽しいですが、一度エレキトリカルパレードというのを見てみたかったんです。あのたくさんの光が夜のパレードをより美しく魅せると聞きまして、ずっと見てみたいと思ってました」


「なるほどな、じゃあエレキトリカルパレードの場所取り行こうぜ!」


「でもこれだけの人数どうやって確保できるかな?」


「私、いい場所知ってるよ。私について来て」


 さくらがスマホを確認しながらその場所へ案内し、少し歩いたところにいい場所があった。


 その場所にたどり着くと、そこには茶山(さやま)が一人で待っていた。


 さくらちが茶山に大きく手を振り、気付いた茶山が手招きをする。


「茶山せんぱーい!」


「ええっ!? 何で先輩がここにいるんスか!?」


「ここ、私のお気に入り……」


「なるほど、あらかじめ連絡を交換し、穴場を確保しておいたのだな」


「先輩といつの間に連絡してたんだ!」


「歌番組で共演して今後の活動のためにって交換してたんだ。先輩のアドバイスは本当に参考になるよ」


「よかったらみんなも交換しよう……」


「喜んで!」


 茶山はポーカーフェイスながら温かい表情で連絡先を交換し、アルコバレーノにアイドルとしてアドバイスを送ると言った。


 パレードの時間になり、最初のブルーフェアリーマージによるパフォーマンスに圧倒される。


 子どもたちは美しさに興奮し、カップルたちは肩を寄り添い合い、友達同士の団体はフォトスタグラム映えするとスマホで撮影していた。


 先ほどグリーティングで撮ったミッチーマウスもパレードで手を振っていた。


 そしてパレードはいよいよクライマックスになる。


「パレードのクライマックスで『世界はひとつ』を高らかに歌うと『幸せが訪れる』って聞いたことあるよ」


「今流れているあの曲ね。どんな形かはその人次第だけど、私たちは自分たちだけじゃなく知ってるみんなや見ず知らずの人が笑顔になってくれるのが幸せよ」


「私も同じだ」


「私たちはアイドル……。このパレードに負けない笑顔を広げよう……」


 茶山がみどりたちの心に重く響く言葉を交わし、アイドルとしてもっと成長して、いつかは世界中に届けられたらと思った。


 あれから茶山はドリームランドの撮影が終わり、今後はみどりたちと共に行動する。


 みどりはパレードを見て大満足し、世界はひとつを口ずさんでいた。


 そして最後にさくらの行きたいアトラクションに向かう。


 さくらはそこに着くと、笑顔で千秋たちにこう言った。


「このアトラクションに入ると、本当に世界中の人が心を一つにすればいいなって思うんだ」


「わかる、アタシもよく家族を連れたからな。だがアイドルになってから来るのははじめてだ」


「なら何か曲作りの参考になりそうだね♪」


「行こう……」


 さくらの行きたかったアトラクション、ピース・イズ・ワールドに入る。


 そこは子どもの人形たちが世界はひとつを合唱し、世界ツアーをするアトラクションだ。


 それが最近リニューアルされて、人形のレパートリーが増えていた。


 さくらたちの順番が訪れ、ボートに乗って出発する。


 最初はイギリスやフランス、ドイツ、イタリア、北欧諸国、ロシア、ギリシャ、スペイン、東欧諸国をモデルにしたヨーロッパエリアに入る。


「イギリスの兵隊さんやコサックダンス、ヴェネチアのゴンドラが美しいですね」


「氷の上でスケートしているよ!」


「フラメンコやアルプスのヨーデルが追加されてるね」


「次はアジアエリアか」


 ヨーロッパエリアを通過し、今度はアジアエリアに入る。


 アジアエリアには日本だけでなく中国、インド、東南アジア、アラブ諸国、中央アジアを中心とした世界観で人形たちが合唱する。


 ヨーロッパエリアでは英語のみで、アジアエリアでは中国語とアラビア語、英語が同時に流れていた。


「ここはアラブ諸国の人も考慮しているんだね」


「アジアも平和になればいいな♪」


「次はアメリカ大陸ね」


「楽しい……」


 アメリカエリアにはアメリカ、カリブ諸国、中南米を中心にした世界観になる。


 英語とスペイン語、ポルトガル語が同時に流れ、サンバやカウボーイ、アルゼンチンタンゴ、ボサノヴァにレゲエ風にアレンジされていた。


「ラテンアメリカにも考慮されていますね。観光客が多い日本らしいです」


「そうだな、日本は平和国家の手本であるからな」


「次はオセアニアエリアだったな。もうすぐ最後ってなると寂しいぜ」


 次のオセアニアエリアに入り、英語で人形たちが合唱する。


 オーストラリアやニュージーランド、太平洋諸国にハワイが舞台になり、先住民文化と近代文化の融合で繁栄と平和を願っていた。


 アフリカエリアでは英語を中心としたアフリカ大陸を舞台としていて、今でこそ平和になったけれど、西暦の時代では争いばかりで大変だった名残も表現していた。


 そして最後の白い各国の民族衣装を着た人形たちが日本語でひとつの世界を合唱するフィナーレエリアに入る。


 最後のエリアはどのエリアよりも長くなっていて、最後を惜しむファンからは『世界平和について考える時間のために長くしている』という説があった。


 するとそれに気付いたさくらはみんなにある事を言った。


「今まではそうなればいいなって思ってただけだったけど……アイドルになってから気付いた事があるんだ。今の私たちは日本中を笑顔溢れる平和な国にしたいとっている。そして世界中にその事を伝えなければならないって思ったんだ。綺麗事(きれいごと)かもしれないけど、人間は完璧じゃないから分かり合えない事も絶対にある。でも……それでも分かり合えないなりに平和を願う事も出来ると思う。そういうような曲を……日本だけじゃなく世界中に届けたい。みんなで作ろう? 自分たちで作詞作曲を全部やろうよ」


「確かに世界ではまだまだ戦争や事件が多いもんな。その話、アタシも乗ったぜ!」


「ボクもオリンピックに出たいと思ってる。だからこそそういう曲は大事だね!」


「世界中を笑顔にしたいって気持ちは私も一緒だよ♪ 私たちの歌で世界中を笑顔にしよう!」


「そこには上も下も関係なく手を取り合い、離れていても心はひとつというのを伝えたいです!」


「さくらちゃんらしいわ、世界の事まで優しく思えるところ。世界にはたくさん困ってる人がいるから歌いたいわ」


「うむ、それで戦争やいざこざが少しでもなくなるのなら…やってみる価値はあるな!」


「茶山先輩にも協力してほしいです。お願いします」


「私でよければ……。事務所のみんなにもPVやレコーディングをお願いしてみる……」


「ありがとうございます!」


 このアトラクションを基に、世界平和を願う新曲案が完成し、ドリームランドで最高のオフを過ごした。


 閉園時間になって舞浜駅から川崎駅に向かい、世田谷区に住む茶山とは大井町駅で別れる。


 ドリームランドで過ごした思い出を胸に、残りのオフをレッスンや休息をバランスよく過ごし、さくらたちは今後も仕事に打ち込むのだった。




~おまけ~


 こちらはアルコバレーノが遊んだドリームランド。


 アルコバレーノのみんなが遊んでいると同時に、大人たちもまた息抜きをしていた。


 そして国を取り戻すことでギスギスしていたシロンも、たまには息抜きしようという事でドリームランドを満喫していた。


「この世界はテーマパークというものがあるんですね。僕の国ではそんなものがなくて新鮮ですよ」


「シロンもずっと国のために頑張ってきましたから、たまには息抜きしないとですよ?」


「そういう私たちも社員のみんなに『社長は働きすぎだから息抜きして羽を伸ばしてください!』って言われたわね。チケットを3人分もありがとう、真奈香」


「いいのよ、私も『記者として働きすぎだ』って編集長に言われてたの。久しぶりに純子と過ごせて嬉しかったわ。水野さんも元気でホッとしました」


灰崎(はいざき)記者にはお世話になりました。今後もあの子たちのサポートをお願いしますね♪」


「ええ、喜んで。シロンくんも国のために頑張ってね」


「はい、国をもう一度平和で美しい国にしてみせます」


「水野さんも夜月くんも、久しぶりのデートは楽しめたかしら?」


「はいっ! 久しぶりに晃一郎さんとデートですから♪」


「ああ、ずっと仕事ばかりで『我々社員の事は我々に任せて、いい加減に二人でデートに行ってください!』なんて言われちゃあな。だがまさか社長や灰崎先輩、シロンも偶然ここに来てたとは思いませんでしたが」


「そういう偶然もあるのね。でも水野さんをリードしていた夜月くん、カッコよかったわよ?」


「やっぱり大人の男性って感じだったわね」


「社長も灰崎先輩もからかわないでくださいよ」


「僕も一国の王子として、夜月さんのエスコートを見習わないとですね」


「シロンまでなんだよ。俺はただ澄香と一緒に楽しみたいからやってるだけさ」


「晃一郎さん……///」


「いい雰囲気だけど、そろそろ閉園時間ね。私たちもここから出ましょう。あの子たちもオフを楽しんでくれたみたいだしね」


「茶山さんも仕事を終えて楽しんでましたね。これから忙しくなりそうですが、秘書として頑張ります!」


「俺も専務としてだけでなく、マネージャーとして頑張りますか! それに社会人野球の大会も優勝したし、野球部ももっと頑張ります!」


「私も記者として今後も取材を続けるわ」


「私も社長として、プロデューサーとしてもっとしっかりしないとね。さぁみんな、川崎に帰りましょう」


 大人の時間を過ごした晃一郎と澄香と同時に、仕事で働き過ぎだから休めと社員に言われた純子と真奈香が偶然出会い、軽めの社員遠足を満喫した。


 シロンも母国にテーマパークがなかったので新鮮に感じ、人間界には心の魔法があるんだと実感した。


 そしてそれぞれの日常に入るのです。


 つづく!

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