第40話 ドリームランド・前編
11月に入り、アルコバレーノは1週間のオフ期間に入る。
アルコバレーノはモノクロ団四天王との出会いによって落ち着かず、オフでありながら今もレッスンに励んでいた。
レッスン室で休憩していると、純子と澄香がドリンクを持って来る。
「お疲れ様です、皆さん随分追い込んでいますね」
「はい、モノクロ団四天王と遭遇してから落ち着かなくて……」
「確かにモノクロ団は前より強くなっていますね。でも社長、このままレッスンを続けていると、この子たちは潰れてしまいます」
「そうね、それは確かに事実ね。みんなよく聞いて、確かにモノクロ団は前より今も強くなろうとしている。みんなもそれで休みを返上してまでレッスンに励み魔法少女として強く、アイドルとして輝こうとしている。でもせっかく休みなのにしたい事が出来ないと気持ちの整理も難しくなるわ。せっかくのオフだもの、たまには羽を伸ばしてリフレッシュしましょう」
「社長……やっぱり社長には敵いませんね! じゃあ今日はこのくらいにしよっか!」
「そうだな、確かに追い込みすぎたな」
「あのっ! 私ね、明日東京ドリームランドに行くんだけど、みんなはどうかな?」
「偶然ね、私も行こうと思ってたの」
「皆もか、実は私もだ」
「ボクも!」
「じゃあ決まりだな!」
「それならちょうどいいわ。夜月くんがくじ引きで7人分のチケットを当ててくれたから、みんなでいってらっしゃい」
「「「はい!」」」
アルコバレーノはレッスンで追い込みすぎて、心配した純子が休むように提案する。
ちょうど晃一郎がくじ引きで当てたチケットでドリームランドに行くことが決まり、みんなで話し合って待ち合わせの確認をする。
翌日になり、待ち合わせ場所の舞浜駅に着いて合流する。
平日とはいえたくさんの人で賑わっていて、人気がある事がうかがえる。
「おうさくら! いつも最後だな!」
「ごめんね、おめかしに手間取っちゃった」
「女の子はおめかしに時間かかるもんね。ボクも少ししたんだけど……」
「とても似合いますよ♪ それでは皆さん、変装の準備はよろしいですか?」
「うむ、万全だ」
プライベートとはいえ、アルコバレーノはトップアイドル候補と言われる存在なので変装は必須になる。
アルコバレーノの髪の色は全員ハデなので、目立たないようにウィッグや帽子で隠す。
ついにドリームランドに入場し、それぞれ行ってみたいアトラクションを回る。
「最初は橙子の番だな。どのアトラクションに乗りたいのだ?」
「ボクはこれ! ジャングルツアーズ! 船長さんの案内が楽しみなんだ!」
「あそこの船長さんたち有名だよね♪」
「私も一度行ってみたかったの。決まりね」
アドベンチャーエリアにあるジャングルツアーズに向かい、順番が来るまで将来の事を語り合う。
ついに順番が訪れ、さくらたちはボートに乗った。
船長がマイクで挨拶をし、ジャングルツアーの説明をして出発する。
「皆さん改めましてー、私が船長の杉田と申しますー。さぁ皆さんいきなりゾウさんが鼻からお水を出していますー。何をしているかってー? どこまで飛ばせるか競っていますよー」
「面白いね船長さん」
「そういや前に行った時は『ゴリラが人間のテントを横取りしましたー。人間たちはゴリラたちにさらわれて仲間にさせられたー』って言ってたな」
「ほむらちゃんは弟さんたちと何度も行ってるの?」
「まぁな、両親の代わりによく行ってたんだ」
ジャングルツアーズの内容を話していると、ついに最後の洞窟に入る。
「さぁ皆さん、洞窟に入りますよー。皆さんは絶対にお宝にお手を触れないでくださいねー。それは何故って? 動物さんたちによってジャングルの王様にさせられて生きて帰れないからです」
子どもたちは大笑いし、大人たちもあまりのキレのよさに拍手をするほど船長のトークは盛り上がる。
ジャングルツアーズも終え、次は千秋の行きたいところへ行く。
ウエスタンエリアにあるサンダーボルト・マウンテンという機関車のジェットコースターに乗る。
みどりは人生初のジェットコースターで、緊張のあまりにソワソワしている。
「ジェットコースターって、とても速いと聞きましたが……」
「うむ、基本はそうだな。みどりは無理して乗る事はないぞ」
「いいえ、皆さんとせっかくのオフなのでご一緒させていただきます」
みどりは怖がりながら千秋たちに気を使って一緒に乗る。
ついに千秋たちの順番が訪れ、機関車に乗る。
出発の時間になって少しずつ登っていくと、お馴染みの急降下が待っていた。
「「「きゃーーーーーーーーーーっ!」」」
「楽しいねこれ♪」
「うん! 楽しいっ♪」
サンダーボルト・マウンテンで楽しんでいると、みどりはグッタリしていて、ほむらとゆかりはずっとその様子を気にしていた。
みどりは初のジェットコースターに酔ってしまい、隣にいるゆかりがみどりに声をかける。
「みどり! 大丈夫か!?」
「大丈夫です……。わたくしはここに……きゃーーーーーーーーっ!」
「みどりーーーーーっ!!」
ゆかりが声をかけるも、猛スピードで走る機関車にみどりは悲鳴を上げながら気を失う。
ゆかりはみどりを最後まで介抱し、
アトラクションが終わり、みどりグッタリした様子でほむらとゆかりの肩を借りていた。
千秋はその様子に気付き、みどりに近づいて泣きそうな顔で謝る。
「本当にごめんね……! みどりちゃんがジェットコースターがはじめてなんて知らなくて……!」
「千秋さん……わたくしも皆さんとご一緒に楽しみたかったですから……泣かずにアトラクションを楽しみましょう。それに……少しジェットコースターがクセになりそうです……♪ さぁ皆さん、次は海美さんの番ですね。どこか行きたいアトラクションはありますか?」
時間が経って少しずつ元気になったみどりは、初のジェットコースターは疲れたけどクセになったのか楽しそうだった。
落ち着いたところで海美が行きたいところをリクエストする。
「私ならそうね、最近リニューアルされたアストロシューターに行きたいの。リニューアルされてから一度も行ったことなくて、いいかしら?」
「賛成!」
「アタシもだ!」
「よーし、負けないぞー!」
トゥモローエリアにあるアストロシューターに向かい、みんなで誰が一番点数が高いかを競う事になる。
しかしアルコバレーノは全員で七人なので、一人が余る事態になる。
海美たちはお別れじゃんけんをし、誰が誰と組むかを決めた。
「私は海美ちゃんとだ♪ よろしくね♪」
「ええ、よろしくね、千秋ちゃん」
「私は橙子と組むぞ。私たちの友情を見せてやろうではないか」
「もちろん! ボクたちが組めば無敵だよ!」
「わたくしはほむらさんですね。ご家族とご一緒だった方なので心強いです♪」
「アタシだって久々だからな。思いきりハイスコア狙ってやるぜ!」
「私は一人かぁ……。お一人様の人と組むことになるね。誰と組むんだろう?」
さくらが少し落ち込みながら周りを見渡し、お一人様の列を見てみる。
すると意外な人がさくらとペアを組むことになる。
「桃井さん……よろしく……」
「その声は…!?」
さくらが一人になり、見ず知らずの人と組むと思われたその瞬間だった。
事務所で聞き慣れた声が聞こえ、さくらは後ろを振り向いた。
海美たちも一瞬誰かと思って振り向いたら、意外な人が一人でドリームランドを訪れていた。
そしてその人がさくらとペアを組み、アストロシューターで競う事になるとは、海美たちも思わなかった。
つづく!




