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第3話 レッスン

 澄香に地下レッスン室へ案内されたさくらたちは、事務所が用意した更衣室で用意された運動着に着替える。


 着替え終えてレッスン室に入ると、そこには三人のトレーナーが待っていた。


「こんにちは、ダンス担当の舞浜踊子(まいはまようこ)です」


「ボーカル担当の滝川響輝(たきがわひびき)です」


「パフォーマンス担当の美川和男(みかわかずお)よん。よ・ろ・し・く・ね♪」


「「「よろしくお願いします!」」」


 トレーナーに挨拶を済ませ、最初のダンスレッスンに入る。


 茶髪のロングヘアで一部ブレイズヘアにしている女性のダンストレーナーの舞浜先生はジャズやヒップホップを中心に、アイドルとしての振り付けを考えたりする。


 さくらたちは手本を見ながら振り付け通りに躍り、舞浜先生にアピールをする。


「桃井さんは身体柔らかいし、柿沢さんと紫吹(しぶき)さんは身体能力高い。黄瀬さんと赤城さんと青井さんも動きがいいわね」


「ありがとうございます。ただ――」


「はぁ……はぁ……!」


 みどりは慣れないダンスに息が切れて苦戦をしていた。


 舞浜先生が様子を見ると足をつっていて、急遽休憩に入る事になった。


「葉山さん大丈夫? もしかしてダンスは苦手だった?」


「いいえ……。このくらいでバテてしまっては……アイドルとして活動するには厳しいと思います……! だから体力をつけて、静だけでなく動をも制し、ファンの皆さんをガッカリさせたくありませんので……もう少し頑張ります!」


「そっか、それなら時間あるときに最低5キロメートルを自分のペースで走りきるトレーニングをしよう。ここの事務所はトレーニングジムも併設されていて、雨でもトレーニングできるんだ」


「わかりました。もし歌う事も前提とするなら、マスクして走ってもいいですか?」


「葉山さんストイックだね! でもムリせずじっくり成長するのも大事だよ! 足の痛みはもう大丈夫?」


「はい、動けるようになりました」


「それじゃあラスト一曲いってみよう!」


 舞浜先生が心配になりみどりに近づいて休むように言うも、みどりは根性で休みながらダンスレッスンを続ける。


 舞浜先生もみどりの努力家なところを見て感動し、ダンスになれるための自主メニューを提案した。


 レッスンを続けていくとみどりは持ち前の頭の回転でダンスの苦手を徐々に克服し、記憶力を活かして振り付けを完璧に覚え、舞浜先生を驚かせた。


 次に青ひげが生えていてピンクと水色、黄色がカラフルに混ざったモヒカンヘアの筋肉質な体を持つオカマの美川先生のパフォーマンスレッスンで、笑顔とポージング、トーク力を見る。


「うーん、桃井ちゃん表情が硬いわねぇ……。お母さんのプレッシャーを感じちゃったかしら?」


「正直……プレッシャーはあります。でもせっかく夢を叶えましたから、ここでつまずきたくないです!」


「うんうん! その心意気よ♪ それから柿沢ちゃんはいい笑顔ね♪ 青井ちゃんと葉山ちゃんも普段見せない笑顔が素敵よ♪ でも紫吹さんと赤城ちゃんは桃井ちゃんとは違った硬さねぇ。まだ見ぬファンの喜ぶ顔を想像してみなさい?」


「「「はい!」」


 さくらはまだ自分に自信がないのか笑顔が硬く、ほむらとゆかりもアイドルの笑顔に慣れていないのか表情は引きつっていた。


 海美とみどりは普段は落ち着いているが時々見せる笑顔で美川トレーナーを魅了した。


 橙子は普段から明るく元気なので笑顔については問題なくこなす。


 しかし美川トレーナーが注目しているのは意外にも千秋だった。


「黄瀬ちゃんの笑顔は今まで見てきた誰よりも輝いていたわ♪ 何か心がけているのかしら?」


「はい! お父さんが警察官をしていて、笑顔は周りにも影響すると教わりました♪ だから『よほど辛い思いをしない限りは笑顔でいよう』って決めているんです!」


「てことは街を笑顔にするために警察やってるのねぇ! 偉いわぁ♪ それじゃあ最後にポージングいくわよ!」


 千秋は父が警察官で、人々の笑顔を守るために自分自身も笑顔でいて街の平和を守っていることを話す。


 美川トレーナーは千秋の笑顔の心得を聞いて嬉しくなり、どんどんレッスンを続けた。


 モデルとして笑顔で歩きながらポーズを決めたり、バラエティ対策として即興で無茶ぶりなインタビューの練習をしたりしてパフォーマンス能力を上げるレッスンをする。


 最後に紺色のストレートマッシュヘアでやや眠たげな顔をした滝川トレーナーのボーカルレッスンに入る。


 滝川トレーナーは天才音楽家で『モーツァルトの生まれ変わり』といわれている滝川留美(るみ)の弟だ。


 そのため音楽の知識はものすごく、天才の弟としてさくらたちの歌声をすぐに把握する。


「なるほど、音域はhiE(ハイ・イー)が限度で発声も完璧か。でもみんな歌声がちょっと個性的すぎるね。何か得意な音楽とかあるのかな?」


「私はアイドルソング中心のポップスが得意です」


「アタシはロックの中でもハードロックが得意です」


「私はユーロビートの様なダンスミュージックです。それとラップも出来ます」


「私は声量に自信があまりないのでテクノポップで声を変えたりしてます」


「わたくしは弾き語りもですが、古き良きフォークソングを歌えます」


「私はあまり激しい声が出せないからバラードです。ポップスも軽いものであれば少し歌えます」


「私は和の要素のあるロックもですが、実は演歌が一番得意です」


「なるほど、わかった。みんなのデビュー曲はそれぞれの得意ジャンルで作ってほしいと姉に伝えるね。でも作詞は自分たちでやるようにね。その方が曲により想いを込められるし、売り上げも君たちに入るからね」


「「「はい!」」」


 滝川先生はさくらたちがそれぞれ得意な音楽ジャンルがあることを瞬時にわかり、天才作曲家の弟というのは本当なんだとさくらたちを驚かせる。


 そして作曲は滝川留美にやってもらうが、作詞だけは自分たちで作るように促し、歌への思いを込めるようにと同時に売り上げの印税を自分たちのところへ入れる方がいいとのことだ。


 ボーカルレッスンを終えて、宣材写真の撮影をするために私服に着替え直す。


 7人とも服のジャンルがバラバラで、さくらたちの個性を象徴していた。


「さくらちゃんの私服可愛いわね。もしかしてキスリサ?」


「うん、キスリサ大好きなんだ。ブラウスに花柄のフリフリなスカートが一番お気に入りだよ。海美ちゃんは水玉模様の水色のワンピースにベージュのカーディガンなんて女子大生みたいだね」


「確かに大人っぽい! 千秋の服はアメカジ系? 黄色と茶色がベースのチェック柄シャツとデニムスカートがいいね!」


「ありがとう♪ 橙子ちゃんはストリート系だね! オレンジとネイビーのパーカーにオリーブ色のカーゴパンツってボーイッシュで可愛い♪」


「みどりのはあれだな、白いブラウスにワインレッドのミドルスカートとかお嬢さまって感じだな!」


「よくお母様と一緒にショッピングをしますので。ほむらさんのは黒いスカジャンにショートデニムパンツですね。不良のようなロックさでカッコいいです」


「確かに! しかしゆかりはスタイルいいなぁ。モノトーンとレギンスがよく似合うよ」


「あまり見るでない、恥ずかしいではないか……」


「黒の縦ニットでタートルネックってものね。ゆかりちゃん、忍者だから動きやすくも大人っぽく目立たないようにしているのね」


「だったらライダースのレザージャケットなんか着たら、ワイルドな大人の女って感じで似合いそうだな!」


「それ見てみたい♪」


「なーっ! 私で妄想するでなーい!」


 それぞれの個性がある私服について盛り上がり、ゆかりの私服の話題となるとこの衣装を着たらよさそうと遊ばれ、照れたゆかりがやめろと恥ずかしがりながら叫ぶ。


 ゆかりは硬派だからこそいじられることに慣れておらず、恥ずかしさのあまりに大声で叫ぶなど、意外と照れ屋なところがあるとさくらたちはゆかりの意外な一面を知った。


 着替え終えてすぐに撮影場所へ向かい、カメラマンに準備の確認をする。


「準備できましたので桃井さんからお願いします!」


「はい!」


 さくらたちはポージングを決めてそれぞれ宣材写真を撮り終え、本格的にアイドルとしての活動を始める。


 レッスンと宣材写真を終えてすぐに純子による記者会見を開くために高津会議室がある溝の口駅北口にある大きなショッピングモールへ行く。


 純子の従姉妹(いとこ)灰崎真奈香(はいざきまなか)という記者を中心にして会見をするので、さくらたちは灰崎とはどんな人なのかを想像した。


 さくらにとっては夢の始まりなので、アイドルのことを知らないほむらたちにアイドル事情を教えつつ、自分もアイドルとしてデビューするんだという自覚を持って記者会見に挑むのだった。



 つづく!

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