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第38話 運動会・前編

 10月中旬、アルコバレーノは陸上競技場にてアイドルの運動会に出場する。


 この運動会はデビュー5年以内のアイドルのみ出演の番組で、毎年イチオシのブレイク前のアイドルが多数輩出されている。


 競技は8つあり、アルコバレーノは運動着に着替えて開会式を迎える。


「さぁ始まりました! アイドルだけのフレッシュ運動会! 司会は私、本田綾香でお送りします! みんな盛り上がっていこうね!」


「「「おー!」」」


「では選手宣誓を、沖田つかさちゃんお願いします!」


「はい。宣誓! 僕たちアイドルは、ファンの皆さんに夢を与え、運動会を通して、さらなる絆を深め、正々堂々と戦うことを誓います。白組、アフタースクールズ所属、沖田つかさ」


「やっぱりイケメンだなー、沖田つかさって」


「アフタースクールズはメンバーの5人が全員幼馴染みなんだって」


「抜群の絆でブレイクしていると聞いた。ライバルになりそうだな」


「まず最初の競技は何かな?」


「最初はアイドル対抗100メートル走ですね。海美(うみ)さんが出場しますね」


「海美って足速いの?」


「ええ、でも小杉中学はみんな関東大会レベルで私は遅い方よ」


「でも期待しているね♪」


「頑張るわ」


 海美がストレッチをして準備をし、ついに徒競走の時間になる。


 小野がデザインした白組のユニフォームで、白組のモチベーションは高くなっていた。


 優勝候補はアフタースクールズの日野鈴香(ひのすずか)で、陸上の中国地方大会にも出場するほどの経歴だ。


 海美ちと同じレースで日野が注目されるも、海美は落ち着いた表情でレースを待っていた。


 そしてついに海美のレースが始まった。


「最終レースです! では優勝候補の紅組、日野鈴香ちゃんが第1レーン! 最も話題に入っている青井海美ちゃんが第3レーンとなっています! さぁ今までのレースより速い記録は出るのか!?」


「On your mark。set――」


 ピストルの音が鳴り、選手たちは全員いいスタートダッシュをする。


 白組の今までの結果は徒競走で負け越していて、海美の記録にかかっていた。


 海美は綺麗なフォームで走り、日野といい勝負をしていた。


 しかし日野の後半の追い上げはさすがのレベルだった。


「さぁスタートしました! 日野選手やっぱり速い! 誰も並ばない! 並ばない! あっという間にかわした! あっという間にゴール! 青井選手は惜しくも2位でしたが今までの記録でも2位と好調だ!」


「はぁ……はぁ……! 速いわね。あなたは全国行けるかもしれないわ」


「えへへ、ありがとう! 青井さんもその速さだとフェンシングでステップに活かせそうだね! お互い全国目指して頑張ろうね!」


「ええ、あなたの元気を少しわけてもらったわ。お互い部活でもアイドルでも頑張りましょう」


 日野と海美は握手を交わし、お互いの連絡先を交換する。


 次の種目は綱引きで、ほむらの出番だ。


 ほむらは腕まくりをして気合を入れ、腕や肩を大きく回して張り切っていた。


「よっしゃ、いっちょ暴れてくるわ!」


「そのままホームランにしちゃおう!」


「綱引きでホームランってどんなだよ!」


「頑張って、ほむらちゃん!」


「あなたの力を見せつけてください♪」


 ほむらは綱の一番後ろに配置され、早く引っ張りたいとウズウズしていた。


 同じく後ろでほむらの前にいるトリオユニット、プロジェクト・パステルの知念(ちねん)ひびきが明るく待っていた。


 そして綱引きの時間になった。


「さぁ紅組が優勢か? それとも白組がここで追い上げてくるのか! 赤城選手が何か余裕そうに様子を伺っています! 何をするんでしょうか?」


「この程度のパワーか? だったらアタシが一気に決めるぜ! おりゃあっ!」


「あーっと! 赤城選手が本気を出してから紅組が一気に引っ張られていく! 何というパワーだ! これが全国リトルリーグのエースで四番だった、赤城ほむらー! 男子顔負けのパワーで寄せ付けずっ!」


「君って野球やってたんだ!」


「まぁな。知念さんは随分日焼けしているな、何か外のスポーツやってたのか?」


「ウチは沖縄出身でビーチバレーをしてたよ。君がいれば二回戦もなんくるないね!」


「おう! 次も行くぜ、相棒!」


 こうして二回戦も余裕の勝利をし、知念ひびきと堅い握手を交わしたほむらは満足そうに戻ってくる。


 さくらは次の玉入れに出場する。


 緊張で震えていると、仲間たちが声をかけてきた。


「大丈夫だよ、さくらちゃんはここまで練習したんだもん。きっと出来るよ♪」


「自分を信じていきましょう。そうすればきっといい結果になるはずです」


「心配するでないぞ、さくらは努力家だから大丈夫だ」


「みんな……ありがとう。行ってくるね」


 さくらは仲間たちの一言で緊張が解け、玉入れに挑む。


 同じ組でちょっと機嫌悪そうにしている高飛車(たかびしゃ)きららに声をかけようとする。


 すると不機嫌そうにそっぽを向き、ちょっと空気が重くなる。


 それでも玉入れのスタートのピストルが鳴り、さくらは精一杯玉を(かご)に投げる。


「さぁどっちもいいペースだ! 高飛車選手は大量に玉を入れています! 桃井選手も周りの気配り上手でみんなをサポートしています! ああっと! 桃井選手と高飛車選手が同じ玉を取ろうとしてぶつかった!」


「うぅ……ごめんね……」


「まったく! 邪魔ですわ! 足手まといはずっとそこで立ってくださる?」


「えっ……!?」


 きららの罵声にさくらは困惑し、しばらく動けなくなってしまった。


 そんな中でも玉入れは続き、さくらは我に返って協議に集中して玉を入れ続けた。


 しかし追い上げもここまでで、制限時間は終わりを告げた。


「ここで無情にも時間終了ー! 結果は紅組が27個差で勝利! 白組の追い上げもここまでだー!」


「あなたのせいで負けてしまいましたわ! 足手まといなアイドルはさっさと引退してくれませんと困りますわ! あなたは向いてませんのよ!」


 さくらはきららに怒られ、さくらは『負けた理由は自分のせいだ』と自分を責めてしまう。


 その言葉に泣きそうになり、さくらはさらに自分を責め続け、ついに過呼吸を起こしてしまった。


 その様子に気付いた晃一郎はすぐに駆けつけ、救護室へと運んでいった。


 救護室でさくらは呼吸が落ち着くと、女性に任せた方がいいと判断した晃一郎は去り、後から心配そうに純子と澄香が目の前に駆けつけ、さくらは安心のあまりに泣いてしまった。


「桃井さん! さっき息が苦しそうだったけど……何があったか話せる?」


「はい……。実は私が落ちてる玉を拾おうとしたら……高飛車きららちゃんとぶつかって……。そのせいで負けちゃって……。そしたらきららちゃんに『足手まといだ……アイドル向いてないから引退しなさい』って……」


「そんな事があったのね……。高飛車きらら……念のためにあの子に注意して。あの子は芸能界でも評判が悪いのよ。芸能人の中にはクセが強い人もいて、態度が大きかったり自分が偉いと思い込んでいる人もいるの。でも桃井さんは自分のベストを尽くしたわ。それだけで私は嬉しいの。だから負けたことを責めるより、全力で取り組んだ自分を褒めましょう」


「社長……はい!」


「あの、皆さんが元気になるように私がお弁当作りました。控え室で待っている皆さんと合流しましょう」


「はい!」


 呼吸も心も落ち着いて来て、さくらは純子と澄香に送られ合流する。


 仲間たちは心配そうにさくらに駆け寄り、千秋は涙を流しながら笑顔で抱きしめる。


 女性たちに任せた晃一郎は、さくらを心配して声をかける。


「もう大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


「よかった……。とりあえずおいしいご飯を食べて切り替えていこう。心配すんな、俺たちがついている」


「高飛車きらら……覚えておくわ……」


 純子はきららの何かを知っているようで、ずっと一人で考え込んでいた。


 しかしさくらたちは今は自分たちのやるべきことに集中しようと決意した。


 お昼休憩になり、澄香の手作り弁当をみんなで食べる。


 中は梅干しとシャケのおにぎり、オレンジママレードのサンドイッチ、鶏のから揚げ、さつまいもの煮物、半熟のゆでたまご、そしてモモの缶詰が入っていた。


 みんなで食べていると、スマイリング娘。のサブリーダーである川島清美(かわしまきよみ)が歩み寄り、おにぎりをおすそ分けする。


「こちらのおにぎり、とても美味しいわね。きっと作ってくれた方が真心(まごころ)込めて握ったのね。私は川島清美、スマイリング娘。の17期生よ」


「アルコバレーノの桃井さくらです」


「スマイリング娘。って確か……」


「はい、スマイリング娘。とはSBY(エスビーワイ)48(フォーティエイト)がまだ台頭する前のトップアイドルグループです。5期生の卒業を期に勢いが落ちてしばらくはアイドル氷河期と呼ばれました」


「水野さん……?」


「彼女はアイドルの話になると嬉しそうに話すのよ。川島さん、あなたの事は聞いているわ。清楚なメガネっ子クールビューティで最近ブレイクしたわね」


「私なんて先輩方と比べたらまだまだですよ。いつか必ずスマイリング娘。を私たちの世代で王政復古を叶えてみせます。皆さんもライバルとして競い合いましょう」


「押忍!」


 川島と仲良くなったアルコバレーノは、アイドルを通じて今後も成長していくんだと実感した。


 弁当を全部食べ終え、次の競技に備えて準備運動をする。


 すると純子と晃一郎が二人きりになって何かを話していた。


「社長、さっき高飛車きららという子なんですが……」


「ええ。おそらく高飛車財閥(ざいばつ)と何か関係がありそうね」


「だと思います。それにあの子のマイナスエネルギーはとんでもないです。もしモノクロ団と接触でもしたら……」


「念のために注意しましょう。あの子たちを守れるのは私たちと水野さんだけなんだから」


「そうっすね。俺たちはいつも通りプロデュースとマネージメントをしていきますか」


 さくらはたまたまこの会話を聞いていて、二人の会話は聞き取れなかったが、何か深刻な話という感じだった。


 それでもさくらはは『今は運動会に集中しよう』と決め、その場を離れた。


 こうして休憩を終え、他のアイドルと交流して今までにない何かを掴んだ。


 他のアイドルたちも必死で頑張り、たくさんの人々の希望になっている。


 アルコバレーノは他の人には言えない秘密を抱えているが、はみんなに愛と笑顔を与え、プラスエネルギーを世界中に広め、人々の希望の光になる活動をしている。


 だからこそこの運動会は、運動が苦手な人にやればできるこことを証明するチャンスなのだ。


 そして運動会は午後の部に入った。


 つづく!

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