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第37話 奇襲

 無限に起き上がる魔物の群れに、ゆかりはピンチに(おちい)る。


 ゆかりの動きが鈍くなり、魔物の弱点も見当たらず、ただ延々とで斬りつけていた。


 ついに心が折れかけてきた瞬間、駆けつけてきたケリーがゆかりに叫ぶ。


「ゆかりサン! ゾンビの弱点は脳か心臓デス!」


「ケリー……心得た!」


「うあぁぁぁぁぁぁうぅぅぅぅぅぅぅ……!」


「もう弱点は掴んだ! 闇影手裏剣(やみかげしゅりけん)!」


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」


 危険を(かえり)みずにゆかりを助け、間一髪で噛まれずに済んだ。


 新たな技である手裏剣は魔力によって作られ、影の如く相手の胸に忍び込み、闇に紛れて標的に毒を当てる技だ。


 魔物たちはもがき苦しみ、弱点は脳と心臓と聞いたので刀で突き刺し、魔物を全滅させた。


 ついに将軍だけになり、それでも落ち着いた雰囲気で軍配を置き、鞘から長い刀身をした刀を抜いた。


「さすが魔法少女であるぞ、我を満足させるとはな。だが貴様の身体はもう限界に近い。残念であったな」


「くっ……! あの刀身の長さでは用意に近づけぬ……。だが何か弱点があるはずだ……。考えるのだ……決して諦めてはならぬ……」


 魔物の将軍が長い答申で斬りかかろうとした瞬間、ゆかりは諦めない心を強く燃やし、そこで共演者たちが危険を顧みずに駆けつけ応援する。


「ここで諦めちゃダメだ! 僕は君を信じているよ!」


「おう! ワシらの分まで頑張れ!」


「大和魂は不滅だってとこを見せてやれ!」


「皆の衆……! スー……ハー……」


 ゆかりは応援が聞こえて勇気が湧き、心を整えて精神統一のために深呼吸をする。


 すると自然と重かった身体が軽くなり、思うように動けるようになった。


 魔物は余裕の表情で刀を構え、ゆかりに斬りかかろうとしていた。


「呼吸を整えるか。まぁよい、どの道貴様はもう終わりだ」


「秘剣……つばめ返し!」


「何っ……! ぐぬぅっ……!」


「当たった! あの刀身の長さから当てたぞ!」


「決して諦めてはならぬ、か……。紫吹さんらしいね」


「いけー!」


「私の忍びの魂は朽ちぬ! 貴様がどんなに絶望を与えようとも、私は決して屈したりせぬ! そしてその心を子孫へと受け継ぎ、よりよい世を作り出すのだ!」


小賢(こざか)しい……! ならばその希望とやらを砕いてくれよう!」


 魔物の将軍は理性を失いつつも冷静な剣術を見せ、なかなか隙を見せようとしない。


 しかし大勢の人々のマイナスエネルギーが集まったからか、いろんな人の感情が混ざって心の整理ができなくなり、ただゆかりを殺めようとした。


 その隙を見破ったゆかりはすぐに刀を上から振り下ろし、頸部の動脈周辺を切り裂いた。


「ぐはぁぁぁぁっ! どこからその力が……! おのれぇぇぇぇぇぇっ!」


「ついに理性をなくしたか。その時点で貴様の負けだ! 邪気退散斬(じゃきたいさんざん)!」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 影に隠れて素早く、そして闇をも支配する心で魔物を一刀両断した。


 そしてついに魔物は浄化し、空は元の明るい青色に戻った。


 駆けつけてくれた先輩たちはゆかりを囲み、ケリーは感謝のハグをした。


「さすがマイヒーローデース! ゆかりサン大好きデース!」


「ワシの作品のあやめを超える忍道だった! 君を選んで正解だったよ!」


「この戦に勝てたのは応援してくださった皆のおかげです。私一人では勝てませんでした」


「それでも戦ったのは君一人だ。僕たちの分まで、世界を頼んだよ」


「風間さん……心得ました!」


 魔物を浄化したことに盛り上がっていると、突然凛とした女の子の声が聞こえ、ゆかりは殺気を感じて刀を構えた。


「かつて助けられた者が今度は助ける側になる、か……。人間は不思議な生き物だね」


「その声は……!? 何奴だ!」


 風間たちは何かを察したのかゆかりから離れていった。


 すると突然レイピアの切っ先がゆかりに一直線に飛び交い、ゆかりは刀で刀身をはじく。


 フードを被って顔は見えなかったが、レイピアを持っているので女性騎士なのだろうとゆかりは考察する。


 その女性騎士はゆかりに切っ先を向けて話しかける。


「君の戦闘能力は素晴らしいよ。見くびった私のミスだ。どうかな、私たちモノクロ団と共に世界を征服してみないかい?」


「ふっ、何を言い出すと思えばやはり引き抜きであるか。生憎(あいにく)だがその手には乗らんぞ。その騎士風の姿はもしや、ダークナイトという者か?」


「やはり私の名を知っているようだな。モノクロ団が世に知らされて私は嬉しく思うぞ」


「君は突然襲い掛かったと思えば礼儀正しいね。それでモノクロ団がどうしてここに来たんだい?」


「ふむ、一般人にも知らせたようだね。まぁいいさ、いずれモノクロ団の存在は人間共に知られるのだから。それより紫吹ゆかり、断ったからには命はないと思うがいい」


「それはこちらの言葉だ……!」


 ゆかりはダークナイトと決闘し、忍術で鍛えた勘でダークナイトの動きを察知する。


 最初はダークナイトの素早さに追いつけなかったが、呼吸を整え視覚以外を使って感じとり、気配だけでもわかるようになった。


 そしてダークナイトが近づいた瞬間、刀をしまって素手で腕を掴み、そのまま腹部を蹴り刀で首元を狙った。


 だがダークナイトは本気を出したのか片手で刀を受け止め、そのまま気功でゆかりを吹き飛ばした。


 ダークナイトは汗ひとつかかず、ゆかりに向かって見下した態度で言い放つ。


「君の戦闘力は確かに凄いが、まだ私たちを相手にするには早いようだね。だが約束しよう、君たちがこの冬までに強くなるまで我々モノクロ団はこの世界に手を出さない。一体どんな手かは知らないが、魔力を大いに高めるといい。君一人だけ知っても意味はない、きちんと全員に伝えるようにね。そして彼女は確か――」


「アナタはあの時の事……! あの時にワタシを苦しめた事忘れてませんヨ!」


「なるほど、あの時私に魔物にされた少女か。あれから心は成長したようだね。だがそれでも私の戦闘力で絶望しただろう。その時はいずれ、君たちを絶望へと落としてみせよう。今日はこのくらいにして私は去るよ。せいぜい絶望して生きる希望をなくすがいいさ」


 そう言い残してダークナイトは去り、ゆかりは痛みを堪えて立ち上がる。


 監督がゆかりに肩を貸し、ケリーが心配そうにゆかりを見つめる。


 ゆかりは悔しさから言葉が出せず、下を向いて涙をこらえた。


 それを察した風間は頭を撫で、ケリーは安心させるようにゆかりを抱きしめた。


「君は本当によくやったよ。監督さん、この子は僕の車で事務所まで送ります。ケリーさんは引き続きお店に戻ってお手伝いを頼むよ」


「ハイ!ゆかりサン、どうか死なないで……。|You are strong hero《あなたは強いヒーローです》! |Believe in victory《勝利を信じて》!」


「皆の衆……感謝する……!」


 ケリーとゆかりはお互いに向かってブイサインをし、笑顔でこの場から別れた。


 風間の車に運ばれて事務所に戻り、純子にダークナイトの目的、四天王の強大な戦闘力と魔力を報告した。


 純子と澄香は深刻な顔をして考えながら言葉を漏らす。


「そう……冬まで強くなるのを待つのね。だったら魔力を高めるために仕事にいっぱい打ち込んでもらうわ。でも決して無理はしないでね、あなたたち全員が生き残って世界を救うのがベストだから」


「「「はい!」」」


「そんな皆さんに報告です。10月に行われるアイドル対抗運動会の招待状が着ました。この運動会で活躍したアイドルはトップに近づくというジンクスがあります。本来は一人で二種目ですが、皆さんの戦闘の疲れを考慮して一種目に集中してもらいます。夜月(やつき)マネージャーが同行し、昼食のお弁当は私が作りますから楽しみにしてくださいね♪」


「「「はい!」」」


「それから11月に最近私立から国立になった東光(とうこう)学園、私と夜月くん、水野さんの母校で文化祭があるの。その文化祭の2日目にシークレットゲストライブのオファーが来たわ。場所は高等部で川崎区の埋め立て地のところよ。その文化祭の前に…最近あなたたち疲れてきてると思って、1週間オフにするように調整したわ。各自レッスンするかオフを満喫するか、自由に過ごしなさい。」


「「「はい!」」」


 10月には運動会、11月にはオフと文化祭というスケジュールが決まり、アルコバレーノの本格的な活動が始まる。


 あれからモノクロ団四天王による世界への宣戦布告がニュースになり、世界中が大騒ぎになっている。


 それでも幸いにもアルコバレーノの存在は秘密にされていて、誰も近づけないよう警察と自衛隊が協力してくれている。


 モノクロ団との本格的な戦いは、もう既に始まっているのだから。


 つづく!

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