第25話 モノクローヌと接触
さくらは魔物の強力な火炎放射で軽いやけどを負い、すぐに回復魔法で回復する。
相手は空を飛ぶことが可能で、さくらとっては不利な状況だ。
さくらはふと周りを見ると、逃げ遅れた男の子が泣いているのを見かけ、急いで男の子の下へ向かう。
すると魔物はいち早く男の子に気付き、加速して襲い掛かった。
「ママー……どこぉ……!」
「逃げ遅れた哀れな人の子か。まぁよい、そのまま吹き飛ぶがいい!」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
「危ないっ!」
必死に男の子に向かって魔法の盾を発動し、男の子を守る。
男の子は無事に守られ、さくらはすぐに保護をする。
泣きながら母を探していることを察したさくらは手を引いて逃げる。
「逃がしはしない」
「この子を……守らなきゃ……! うっ……!」
「お姉ちゃん……足……!」
「あなただけでも逃げて……! 早くママに会えるといいね……」
「うん……! ありがとう! ママーッ!」
足を負傷しながらもわずかな魔力で男の子を守り、男の子はさくらにお礼を言って母親を探しに去っていった。
すると魔物は溜息を吐きながら呆れたようにさくらに問いかける。
「逃げ遅れた人の子に愛を与えるというのか……理解できんな。何故そこまでして人に愛を与えようとするのかね?」
「私は今までたくさんの人に愛されて……ここまで成長することが出来た。確かに愛されなかった人は愛を感じず、そのまま悪い道を歩んでしまうこともあるけど……そんな人たちでも私は救ってあげたい……。綺麗事かもしれないけど、私は苦しんでいる人たちを助けたい!」
「うぐぅっ……!」
空からピンク色の光が降り注ぎ、武器のリボンから不思議な力が湧き上がってくる。
その力を振り絞り魔法を唱えると、強化された技が魔物に命中する。
さくらは接近してこん棒で攻撃し、空からの物理攻撃ではリボンによる鞭で距離を取る。
「小癪な! だがこの最大の火炎放射を喰らえば終わりだ!」
「この魔物強い……! どうやって浄化させれば……」
「桃井さん! 負けないで!」
避難したはずの大山たちの声が聞こえ、その声で励まされたさくらは魔力が高まり、大山たちを守ろうと防御魔法を唱える。
すると最大の威力のはずの火炎放射はリボンの渦に全て吸収され、魔物は驚いた表情で急降下する。
「我の最大威力の炎を防ぐとは……! くっ……! 先ほどのフルパワーで身体に力が入らぬ……!」
「今よ! ここで決めて!」
「はい! あなたの心を浄化してあげる! ラブ&ピースハリケーン!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
魔物は禍々しい|悲鳴を上げ、そのまま浄化されて消えていった。
空は元の青い空に戻り、大山たちも迷子の男の子も無事で済んだ。
少し疲れて座り込むと、大山たちと男の子が私に駆け寄った。
「桃井さん! あなたは立派よ!」
「本当に桃井さん? カッコよかった!」
「先輩方……ありがとうございます!」
「ありがとう……お姉ちゃん……!」
「さっきの子……! 無事でよかった……!」
「みんなに事情を話してごめんね。どうしても言い訳する事が出来なかったの」
「いいんです。応援のおかげで勝つことが出来ましたから」
「あきら! やっと見つけた……!」
「ママー!」
男の子の母親がようやく見つかり、ついに合流することが出来た。
男の子と母親は再会を喜んで抱き合い、男の子は助けてくれたさくらに指を指して見ている。
すると男の子の母親はさくらに駆け寄ってにお礼を言った。
「うちの子を危険から守ってくれてありがとうございました! このご恩は一生忘れません!」
「大丈夫ですよ、この子が無事でいてくれて本当によかったです」
「またね! お姉ちゃん!」
こうして母子と別れ、これで一安心だと思った瞬間だった・
溝の口駅の北口で感じた時と同じ禍々しい魔力を感じた。
さくらはいち早くそれを察知し、変身を解かずに戦闘体勢に入る。
不気味な笑い声が聞こえたので後ろを振り向くと、あの時の魔女が姿を現した。
「あなたが魔法少女のリーダー、桃井さくらさんね?」
「あなたはまさか……!? モノクローヌ!」
「ええ、会うのはこれで2回目ね。あなたの魔力からは四天王にも劣らない強い魔力を感じたわ。あなたのその力なら世界を征服する事も、他人に絶望を与える事も出来るわ。どう? 私の下で世界を征服してみないかしら?」
モノクローヌはさくらをモノクロ団へと勧誘し、相当な魔力を持っていることを認めているゆおな口ぶりでスカウトする。
大山はさくらを守ろうと前に立とうとすると、さくらはそれよりも早く前に出てモノクローヌに答えを言う。
「他人を不幸にするような事は私はしたくない、私は他人を幸せにするためにあなたたちと戦ってるの! だからあなたの元には行けない!」
「ふっふっふ、勇敢な答えをありがとう。それじゃあまた会える時を楽しみにしているわね」
こうしてモノクローヌは黒い霧と共に消え、大山たちは不安そうにさくらを見る。
するとさくらは身体の力が抜け、そのまま気を失ってしまった。
気を失って1時間後、目を覚ますと白い天井が見え、腕には点滴がつけられ、ベッドの感触を感じた。
横を見るとそこには心配したシロンと純子、純子を介護していた晃一郎、さっきまで一緒だった大山がお見舞いに来ていた。
「桃井さん! やっと目が覚めた!」
「ここは……?」
「山手総合病院だ。大山さんから連絡があって急いで駆けつけたんだ」
「とにかく無事でよかったわ。あなたが気を失ったって聞いてここまで来たの」
「さくら、魔物と戦ってから気を失うまでの記憶はあるかな?」
シロンの問いかけにさくらは先ほど起こったことを話し始める。
「えっと……突然不気味な笑い声がして、後ろを振り向いたらモノクローヌがいて、私に『強い魔力を感じたから仲間にならないか』と誘われて……私は『他人を不幸にしたくない』と断ったら力が抜けて……」
「なるほど。さくらはまだその強大な魔力に身体が慣れていないんだ」
「そうなんだ……。ねぇシロン、もし他の人が魔物になって救えなかったらどうなるの……?」
「……。本当は言いたくなかったけど、嘘を言っても仕方ないから話すよ。心がマイナスエネルギーに満ち溢れ、人の心と命の源である魂が侵食され魔物として生きることになる。そして強大な魔力に心身共に耐えられず、そのまま朽ち果てて息絶えてしまうんだ。だからあの時、早く助けてよかったんだ」
「そっか……。あの時救えなかったら、もっと苦しい思いしたんだね……」
「それに大山さんから聞いたわ。前回から魔物の召喚方法が変わったんだって?」
「はい……」
「だとしたら今後はもっと厳しい戦いになるわね……。大山さん、桃井さんの病院代は私が払うから先に戻ってて」
「わかりました。桃井さん、どうか無事でいてね。次のアフレコ楽しみにしてるから」
「桃井さん、俺が車で家まで送るよ。回復したらプラスエネルギーを強化しても耐えられるようにまた特訓だ。心配すんな、俺も付き合うからさ」
「ありがとうござい……ます……」
晃一郎の言葉を聞いて安心したさくらは、疲れもあったのでぐっすりと眠った。
大山は先に事務所に戻り、さくらは純子とシロンと一緒に会計を終え、晃一郎の送迎で家まで送ってもらう。
さくらは『あの時上条くんを救えなかったら』って思うと胸が締め付けられ、助かったことに奇跡を感じた。
家に到着してすぐ、使い果たした魔力を回復するためにすぐに休んだ。
翌日になり、次のアフレコの準備をする。
大山たちは今度は慣れてきたからか少しずつ厳しくなり、さくらは『もっとついていかないと』って思った。
今後はきっと他のメンバーも一人で戦わなくちゃいけない時があるかもしれないだろう。
みんなが仲間であり友達であることには変わらないけど、一人でしなければならない事もある。
依存しないで信頼し、一人でやれる事はちゃんとやる、そうやって距離感を保ちつついい関係になれるのかもしれない。
さくらは友達がどんなに厳しい戦いでも、きっとみんなを救い、魔物に負けない事を信じる事にした。
つづく!




