第24話 アフレコ
こちらは桃井さくら、アニメのアフレコの収録のためにスタジオにいる。
同じ事務所の先輩で声優の大山奈緒にわからない事をたくさん指導してもらい、アフレコのコツを本番前に教えてもらっていた。
そしてついに、収録の日がやってくる。
「今日の記念すべき一話の収録に原作者の影山幸助さんが特別演出に来たよ」
「影山幸助です。『花園アイドル学園』は僕の作品で、アニメ化することを嬉しく思います。キャストの皆さんよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします!」」」
「桃井さん、緊張してない?」
「緊張してます……」
「はじめてのアフレコだものね。練習通りにやれば出来るよ、私も一緒だから頑張ろうね」
「はい!」
さくらがアイドルであることは他のキャストやスタッフにも知られていて、大山がスカウトした『自慢の後輩でリアルアイドル』だとさくらを推していた。
さくらは『期待に応えなければ』と少しプレッシャーを感じていたが、今まで練習に付き合ってくれた大山はさくらを信じている。
この作品は主人公の花田さくらが花園アイドル学園に入学し、意地悪な秀才の水無月愛子。
学園長の一人娘で優しい花園穂乃香。
クラスメイトの桐山美鈴。
元天才子役の天堂真里亞の5人でトップを目指す作品だ。
収録本番を迎え、水無月愛子を演じる大山は渾身の演技で、さくらの役である花田さくらに意地悪を言う。
「あなたはアイドルに向いてないわ! さっさとこの学園を去りなさい!」
「そんな……!」
「はいオーケーです! 桃井さんアイドルだよね? 声優向いてるよ!」
「ありがとうございます!」
「まさにリアル花田さくらちゃんだね。最初は頼りないけど、努力をして上を目指すストイックさは似ているね」
「さすが私が見込んだ後輩だね。このまま後編もよろしくね」
「はい!」
「そうだ、収録終わったらみんな仕事がオフなの。よかったら渋谷駅近くの喫茶店に行く?」
「はい! 是非ご一緒に!」
大山に喫茶店に誘われ、さくらにとって仕事終わりに楽しみが増える。
他にも花園穂乃香を演じる石原沙織。
桐山美鈴を演じる小林舞花。
天堂真里亞を演じる小宮理沙も一緒になる。
仕事が終わり、渋谷駅近くの喫茶店でみんなでパンケーキを注文する。
パンケーキが出来るまでみんなで仕事の話で盛り上がる。
「それにしても桃井さんってリアルアイドルだよね。演技も可愛らしくて羨ましいなぁ」
「それでも皆さんの演技には敵わないですよ。皆さんは声優歴は長いんですか?」
「沙織ちゃんと理沙ちゃんは子役から演技を、舞花ちゃんは今作がデビュー作よ。私はもう10年かな」
「奈緒さんって27歳ですもんね」
「もう舞花ちゃん! 年齢まで言わなくていいでしょ!」
「私たち子役出身でもアフレコ演技では敵いませんもん」
「ホントそれ。だから桃井さんも自信もっていいよ」
「はい! さすが先輩方です!」
「お待たせしました! メイプルホイップパンケーキです!」
5人分のパンケーキがテーブルに置かれ、みんなでいただきますをして食べる。
メープルシロップとホイップクリームがかけられたパンケーキはとっても甘く、女の子の癒しになった。
まだ時間があるからか、さくらは『イチオーキューのキスリサに寄りたい』と立候補をする。
大山達は賛成し、みんなでショッピングを楽しむ。
こちらは渋谷駅周辺、スクランブル交差点では大勢の人で溢れている。
そんな中でまた謎の少女がフードを被ったまま乱暴な口調で現れる。
「ははは! 何つー人混みだぜ!こいつら肩がぶつかったり、ガキの声でイラついたりといいマイナスエネルギーだな! いくぞ! 人類の心の中にあるモノクロな心よ……そのマイナスエネルギーを解き放ち、全世界を絶望の淵へ落としやがれ!」
謎の少女が呪文を唱えると、たくさんの人の胸から黒い魂が空に浮き上がり、空は真っ暗になっていった。
イチオーキューをちょうど出たさくらたちは、人々の異変に気付き始める。
黒い魂が抜けた人々は何も気づいていないが、どこか絶望してしまったような顔をしている。
さくらは黒い魂に悪い魔力を感じ、心に溜まっていたマイナスエネルギーだとわかった。
少し時間が経つと魔力が何か形を作り、大きなマイナスエネルギーとなった。
人々はそれを見て逃げ回り、さくらはモノクロ団が現れたと察し、魔力の集合体へ向かう。
「これってまさか……モノクロ団!?」
「来たんだね、あとはお願い」
「はいっ!」
「桃井さん! そっちは危険よ! 今すぐ避難を――」
「私にはあの原因がわかります! 皆さんはどうか避難してください!」
「わかったわ! みんな、ここは桃井さんに任せましょう!」
「奈緒さん、何か事情を知ってるんですか?」
「詳しい事は後でね! とにかく避難よ!」
小宮に呼び止められるも、大山がさくらの事情を話してくれるので、さくらは遠慮なく戦いに集中できるようになる。
さくらはハチ公前上空に浮いている魔力の集合体にたどり着き、変身をして戦闘に備える。
次第に集合体はコウモリのような翼で、黒いウロコをまとったヘビ型の闇の龍となった。
魔物の姿はとても大きく、全長はビルの高さとほぼ同じくらいだ。
魔物はさくらを見つけると、理性的にこう語りかける。
「ほう、魔法少女であるか。我は人間の醜い心から生まれし物だ。たった一人である貴様の魔力ではどうする事も出来ぬ」
「そんなの……やってみないとわからない! あなたを浄化してこの世界を元に戻す!」
「面白い事を言うのだな。ならば試してみようぞ」
魔物はさくらに体当たりを仕掛け、すかさずリボンで魔物の身体に攻撃する。
強化された魔力でリボンの布が硬化されて鞭の様にしなり、物理攻撃が出来るようになる。
しかしかなり接近され、さくらは焦って離れようとする。
「素早い……! これが強化された魔物なの……? だったら!」
さくらは強化された魔力でリボンを変形させ、バトントワリングのバトン型のこん棒に姿を変える。
こうなることをわかってた晃一郎が、プラスエネルギーを強化するために心の特訓をさせていたのだ。
『誰かを守るという強い心がなければプラスエネルギーは反応しない。間違った正義感ではマイナスエネルギーに変わるから利益や見返りを求めるんじゃないぞ』と言われたことを思い出し、プラスエネルギーを念じる特訓を重ねて魔力が強くなった。
こん棒をクルクル回し、リボンでは出来なかった接近戦での物理攻撃に対応した攻撃をする。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うぐっ! なるほど……魔力を強化したのはこちらだけではない様だな。ならば……これならどうだ!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」
魔物は地獄のような黒い炎を吐き出し、近くのビルや交差点を焼き尽くす。
少し炎に当たったさくらは左腕を軽く火傷し、追い詰められてしまった。
このまま魔力を強化した魔物にやられてしまうのか――?
つづく!




