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第21話 四天王

 合宿一日目は海水浴や夏祭りで遊び、たくさんリフレッシュをして一日を終える。


 二日目にはライブ前の厳しいレッスンがあり、さくらたちは早起きして朝食を作る。


 布団も片づけてレッスン室の掃除もし、レッスンの準備はもう整っている。


 一方、晃一郎は早朝にバットを持って素振りに出かけ、純子と澄香は事務所に連絡するとのことで遅れるらしい。


 さくらたちは、純子たちに内緒で朝食の用意をした。


 一方こちらは純子と澄香、事務所にアルコバレーノの今後のことを連絡し、一息終えたところで朝食に向かっていた。


「みんなあんなに遊んだから疲れてるかしらね」


「あの子たちとても楽しそうでしたからね」


「さすがにこの時間には起きていないでしょう。朝ごはんまでまだ時間あるもの」


「そろそろ起床時間ですね、あの子たちを起こしに行きましょう」


「そうね。みんな、おはよう」


 純子たちが食堂に着くと、そこにはさくらたちの姿がなく、レッスンの厳しさに抜け出したのではないかと澄香は不安がよぎった。


 しかしもし抜け出したのなら、外で素振りしている晃一郎に見つかるはずだし、その情報がないという事はまだ寝ているのかもしれないと純子は考える。


 純子は念のためにさくらたちが寝泊まりした部屋へ行き、布団を確認する。


「あれ? 誰もいませんね……」


「布団も荷物も全部片づけてあるわね。もしかして……調理室に行きましょう」


「はい」


 純子と澄香は食堂にも寝室にもいないという事で、もしかしたら早起きして食事を作ってるのではないかと考える。


 そこで純子と澄香は調理室へ向かうことにした。


 こちらは宿舎の駐車場、晃一郎は試合が近いのでバットを持って素振りをしていた。


 ブンッ! ブンッ!


「ふぅ……さてと、このくらいにしておくか。あの子たち、サプライズがバレてなきゃいいけどな。あの二人きっと驚くぞ……」


 晃一郎はさくらたちが何かやっていることを知っていて、いつも頑張っている純子に朝食を用意すると予め聞かされていた。


 晃一郎は早起きして素振りをするため、どうしてもバレてしまうから最初に話しておき、そして内緒にすることでサプライズを送流う作戦のようだ。


 晃一郎は朝食の時間になったことに気付き、純子たちのリアクションを楽しみにしながら食堂へ戻る。


 こちらは食堂、朝食の支度を終え、純子と澄香が食堂に着き、あまりの光景に二人は驚いた。


「これは……?」


「まさか……!?」


「あっ社長、水野さん、おはようございます」


「予定より早く朝ごはんの支度が出来ました」


「なるほどね……。早寝早起きはアイドルの基本、しかも料理人の仕事まで手伝うなんてね……」


「ボクたちだってもう子どもじゃありませんから、このくらいはやりますよ」


「成長しましたね……! それじゃあ私も食器並べ手伝いますね♪」


 純子と澄香が感動していると、素振りから帰ってきた晃一郎が入って来る。


「あ、夜月さん! 素振りはもう終わったんですか?」


「ああ。バットの感覚も戻ってきた。それよりも、ナイスサプライズだったぞ」


「あら? あなたは知ってたのね」


「はい、俺が素振りするから朝早いことを知っていたのか、『私たちで感謝を伝えるために朝食を作るから二人には内緒にしてください』って昨夜言われました」


「あなたも大概のサプライズ好きね……。夜月くん、ありがとう」


 朝食はバイキング形式で、いつでも食事できるようになっている。


 料理人はさくらたちにお礼を言い、実はアイドルであることを明かし、手伝った記念にサインをする。


 食事の準備ができたのでそれぞれの席に座り、手を合わせて号令をかける。


「一番礼儀正しい紫吹(しぶき)さんが号令をかけてくれるかしら?」


「わかりました。それでは、全ての命に感謝して…いただきます!」


「「「いただきます!」」」


 ゆかりは食事することによる食材の命に感謝を込め、同時にたくさんの命があってこそ食事が出来る事を感謝する。


 もちろん好き嫌いは誰にでもあるし、無理に食べようとすると食事が苦痛になる。


 だからこそ食べられるものにはより多く感謝をしなけれなならないなって思った。


 食後の皿洗いや片づけを終えて少し休み、宿の隣にあるアリーナ室へ向かってレッスンをする。


 三人のトレーナーも今朝到着し、ついにレッスンを始めた。


「笑顔だけがアピールじゃないわよ! 目線や姿勢、体幹、それに演技力も大事よ!」


「「はい!」」


「音域突破は無理しなくてもいいけど、一度限界を超えてみよう!」


「「はい!」」


「まずは動的ストレッチをしてからリトミックね! そこから本格的に厳しいダンスレッスンよ!」


「「はい!」」


 あまり偏らないように調整をしたレッスンで、同じものを延々とではなく、一時間ごとにローテーションで入れ替えてレッスンをする。


 そのおかげで疲れが全身に現れ、体力自慢の橙子とゆかりでさえクタクタになる。


 昼食もカロリーの決められたバランスのいいメニューで、栄養管理もしっかりしていた。


 そ後はライブの通しを中心とした総合練習で、純子が自ら指導をする。


 トレーナーは専門的なレッスンを、純子は総合的な指導をし、とても厳しいレッスンとなった。


 そしてついに――


「黒田さん、彼女たちもそろそろ限界の様です。これ以上は怪我のリスクもあります」


「そうね、そのくらいにしましょう」


「喉を枯らすわけにはいきませんからね。後は銭湯で喉と身体をリフレッシュさせましょう」


「黒田ちゃん、ここってマッサージやエステもあるんでしょう? 心身もだけど、表情筋もしっかりケアしないとね♡」


「今日のレッスンはここまで! お疲れ様でした!」


「「お疲れ様でした……!」」


「銭湯やマッサージ、晩ごはんなど済ませたら20時半に私のところに来て。話したい事があるの。」


「「わかりました!」」


 厳しいレッスンを全て終わらせ、朝の8時から4時間レッスンし、午後は昼の1時から5時間かけてレッスンの合計9時間という時間になった。


 純子は妥協するのを嫌う性格で、追い込むときには追い込み、休むときはとことん休ませるという管理方法が上手い人だった。


 計算された計画だけじゃなく、時には瞬時に最適な判断して動く、だから『名プロデューサーの父を超える存在』とも言われていた。


 疲れ果てたアルコバレーノのみんなは銭湯に入って汗を流し、マッサージやエステ、岩盤浴(がんばんよく)で疲れを癒す。


 そして夕食を食べ終え、約束通り純子のところへ行く。


 純子は深刻な顔をして待っていて、衝撃的な言葉が飛んできた。


「約束通り来てくれてありがとう。これから話すのは……モノクロ団四天王の事よ。かつて私は魔法少女として選ばれ、たった一人で魔物を浄化し、モノクロ団四天王(してんのう)の4人を追い込んだの。ところが私の不覚で真奈香(まなか)……灰崎(はいざき)記者を巻き込んでしまい、人質に取られた。そこである呪いをかけられ、シロガネ王女は犠牲になった。これから四天王について知ってる範囲で全て話すわ」


「その四天王って、どんなやつらですか?」


「まずは柿沢さんがライバルになりそうなヘルバトラー。彼女は喧嘩殺法(けんかさっぽう)が得意で、極度の弱肉強食じゃくにくきょうしょく主義の暴力魔よ。非常に気性が荒く、相手を殺す事にためらいもないわ」


「ボクの……ライバル……!」


「次はアクマージ。いつも何か不気味な笑みとオーラを浮かべるミステリアスな魔術士よ。これ以上の情報は私どころか、モノクローヌですらわかっていないの。遠距離魔法が得意で肉弾戦や白兵戦は得意じゃないと本人が言ってたわね。黄瀬さんと葉山さんは気を付けて」


「遠距離のわたくしたちが狙われそうですね……!」


「もっと強くならないと……!」


「次に私をこの身体にした張本人、デスカーン。大鎌を持ってて神官だと名乗っていたけど、あの残忍な策略と性格の悪い戦術はもはや死神と言ってもいいわね。生きたままの絶望を蜜の味とする外道よ。赤城さん、彼女の知的な挑発に乗らないようにね」


「社長の仇か……!」


「最後に四天王最強の黒騎士、ダークナイト。彼女は先程の3人が束になっても勝てないほどの強さよ。白兵戦と心理戦を好み、絶対的自信と実力、高いカリスマ性で四天王を率いてるわ。最も得意なのは剣術で、青井さんと紫吹さんが相手になりそうね」


「最強がライバルね……!」


「うむ、負けられぬな……!」


「桃井さんはやはりモノクロ団のボスである絶望の魔女モノクローヌに狙われるわね。あなたが一番魔力が高いからスカウトに来るかもしれないけど、決して騙されないでね」


「わかりました……!」


 純子は震えながらさくらたちを見つめ、さくらたちは『四天王はそれほど強くて恐ろしい存在なんだ』と怖くなる。


 でもそこで絶望してたら他のみんなを救う事は出来ない、と覚悟を決める。


 だからこそもっと強くなり、四天王やモノクローヌを倒すくらいにならないといけない。


 それが魔法少女としての運命なのだから。


 さくらたちの表情を見て、純子はさくらたちを励ます。


「ライブもそうだけど、これからの戦いも厳しくなると思うの。あなたたちは本当によくついて来てくれたわ、ありがとう」


「いいんです! 社長も命を懸けてここまでしてくれていますから! 私たちももっと強くなって頑張ります!」


「ありがとう……。もうこんな時間ね、そろそろ寝ましょう。おやすみなさい」


「「おやすみなさい!」」


 さくらの言葉を聞いて安心した純子は、澄香が淹れたお茶を飲んで一息つく。


 さくらたちは寝間着に着替え、布団を用意して就寝する。


 モノクロ団四天王は恐らく今後は接触をしてくるだろうと考える。


 突然の不意打ちに対応できるよう、もっと強くならなければならない。


 それにアイドルとしてはライブも控えている。


 場所は川崎駅の近くにあるクラブチッタ川崎になる。


 ライブを成功させてファンをいっぱい獲得し、トップアイドルになって世界中を幸せにしたいと願い、アルコバレーノは眠りについた。


 つづく!

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