第20話 ライブ合宿
夏が訪れライブが近づき、本格的に夏の合宿の準備を行う。
プロデューサーである純子が宿を手配し、晃一郎がワゴンカーを運転して湘南地区へ向かう。
晃一郎の運転が安全運転だったので、アルコバレーノのみんなは到着までぐっすり眠った。
宿に着くとそこにはキレイな海と、たくさんの人々の光景があった。
「うわぁー! すごーい!」
「日差しが熱いですね」
「社長、ついに着きましたよ♪」
「ええ、まずはお世話になる宿にご挨拶よ。その後に各自水着に着替えて……1日目は思いきり遊ぶわよ!」
「「「はい!」」」
純子が宿泊先の館長に挨拶を済ませ、荷物を置いて水着に着替える。
それぞれ個性的な水着のスタイルで、ゆかりと海美は大人の雰囲気、さくらは可愛らしく、みどりは上品な雰囲気で、橙子と千秋とほむらは活発な雰囲気の水着だ。
澄香はグラマーな体型で男性を魅了し、いつものメガネも素敵に見えるほどだった。
しかし澄香のプロポーションに見惚れる男性に、晃一郎は壁になって隠し、恋人を変な男から守ろうという気持ちが強いかがさくらたちに伝わった。
純子は海外のモデルみたいな水着で、『大人の魅力だ……』とさくらたちは純子を見つめた。
晃一郎は水着だけでなくアロハシャツを着ていて、色黒の肌と事務所の野球部で鍛え抜かれた肉体を見せつけ、通りすがりの女性たちを魅了していた。
澄香は嫉妬したのか、晃一郎の腕にギュッとし、澄香に見惚れる男性と、晃一郎に惚れる女性をガッカリさせていた。
眩しい日差しを浴びながら海に向かって走り、海の水をかけ合う。
「きゃっ!」
「へへっ! 隙ありだったぜ! うおっ!?」
「おかえしよ!」
「みどりバリアー!」
「きゃぁっ! やりましたねー!」
「必殺! 水鉄砲だよ!」
「甘いっ! これでもどうだ!」
「えへへ、楽しい!」
アルコバレーノのみんなが海で水を掛け合っていて、夏休みを全力で満喫する。
純子と澄香、晃一郎は保護者として見守り、大人の会話をしていた。
「皆さん楽しそうですね♪」
「ええ、あの子たちもライブ前だからって委縮していたけど、たまにはリフレッシュしないとね」
「晃一郎さん、長い運転お疲れ様でした♪」
「これくらいお安い御用さ。それにあの子たち、無邪気にはしゃいで楽しそうだ」
「そうですね!」
「あの二人、もうすぐアレがあるわね……」
澄香と晃一郎の会話を聞き、純子は二人を見つめながらニコニコしていた。
純子は二人が付き合ってることを知っていて、『早く結婚すればいいのに』と二人以外の社員に何度もこぼしていたくらいだ。
アルコバレーノのみんなが戻ると、海の家のおじさんが『スイカ割りをするよ」と呼び出し、誰がスイカを割るかをくじ引きで決める。
くじを引くとみどりが選ばれ、みどりは目隠しのためにタオルを巻く。
アルコバレーノの他に、一般の人も声でスイカまで誘導したり、あえて違う方へと誘導したりと地元の人や遊びに来た人と一緒に楽しむ。
みどりが持ち前の計算力でスイカにたどり着き、ついにスイカを割る事に成功した。
割ったたくさんのスイカをみんなで分け合い、地元の人と交流を深めたことではファンの獲得に成功した。
「みどりちゃんが割ったスイカ美味しい」
「ええ、最高ね。とても計算された割り方ね」
「皆さんのご指導のおかげです」
「今日の夕方に夏祭りがあるらしいね」
「だから浴衣を持つのだな。社長もサプライズ好きなものだな」
「それな。毎度驚かされるぜ」
スイカを食べながら雑談をしていると、海の家のおじさんが声をかける。
「あの、君たちはアルコバレーノだね?」
「はい、アルコバレーノです」
「俺は君たちのファンだよ。またウチの海の家に遊びにおいでね」
「はい!」
「社長さん、もしよろしければ色紙にサインをいただけますか?」
「はい、もちろんです。今後とも彼女たちをよろしくお願いします」
海の家のおじさんに純子が色紙にサインし、『少しは売れてきた』と実感した。
夕方になり、さくらたちは宿に戻って浴衣に着替える。
ゆかりを除いて慣れない浴衣の着付けに苦戦し、浴衣慣れしているゆかりに着付けを手伝ってもらう。
「悪いなゆかり、最後に着替えさせてしまって」
「よい、皆の浴衣が見てみたいのだから。それに困ってたらお互い様だ」
「ゆかりちゃんって優しいよね」
「硬派で古風で硬派だけど、根は優しくて実は照れ屋よね」
「なっ……! 改めて説明せんでもよいっ!」
浴衣に着替えたさくらたちは純子たちを待ち、どんな美しい姿なのか楽しみだった。
しばらくすると車いす姿だからかいつものスーツ姿の純子と、動きやすいカジュアルな服装をした澄香だった。
よく考えたら二人は純子介護をしていて、浴衣姿を見れないのは残念だと思いつつも、介護だから仕方ないと割り切った。
一方晃一郎は浴衣姿で、浴衣の胸元からチラっと見える胸筋にほむらは一瞬ドキっとした。
ほむらは筋肉が好きで、よく晃一郎と筋肉トレーニングをする仲で、時に応援してるプロ野球チームの違いでお互いにいい意味で熱くなるほど仲がいいのだ。
その姿を周りは『兄妹みたいだ』と評判で、ほむらも『夜月さんはまるで自分の兄のようだ』と慕っていた。
海の近くの公園に着き、盆踊りの太鼓の音が鳴り響く。
こぶしの効いた音頭で子どもたちやおばさんたちが踊り、屋台のおじさんたちが活発に売り、遊びに来た人々が楽しそうに回っていた。
「さぁ夏祭りに来たわ。みんなもまだ遊び足りないんじゃないかしら? 屋台で食べるのもよし、盆踊りに参加するのもよし、ベンチで休むのもいいわ。でも最後の花火大会には間に合うようにね。午後8時にあの神社の鳥居前に集合よ」
「「はい!」」
夏祭りにやってきたさくらたちは、それぞれ行きたいところに回る。
ほむらとみどりは屋台の食べ物で食べ歩き、ゆかりと橙子は射的などゲームで遊び、海美と千秋は盆踊りに参加し、さくらは純子たち三人と一緒に散策をする。
晃一郎はみんなに気前よくジュースを奢り、乾いたのどを潤した。
純子は晃一郎と澄香が介護のため離れられないことを気にしたのか、気を使って二人きりにさせようとしていた。
しかし二人とも『私情で未成年のアルコバレーノや、歩けない社長を置いていけない』と言って保護者に徹してくれた。
ほむらはリンゴのジュースを飲み、他のみんなもおいしそうに飲んでいた。
午後8時前になり、みんなと合流するために神社の鳥居前に集合した。
「もうすぐ花火ね。もう夏祭りや海のバカンスの曲作りに取り組んでいるけど、よく見ててね。きっとあなたたちの歌の参考になるはずだから」
「社長、何かを見る事は何かを学ぶことと同じ、ですよね♪」
「さすが葉山さんね、私も葉山さんに学ぶことがあるからお互い様ね」
「ここの花火は綺麗なんですよ。皆さんもよく見てくださいね」
「「はい!」」
澄香が花火大会の情報を手に入れ、夏祭りの情報も全部澄香の頑張りだった。
純子は宿の手配とレッスンのメニュー作り、アルコバレーノの知名度のために日々陰から努力している。
晃一郎も長旅なることをわかってて運転を申し出たり、唯一の男性なので女性陣を守る役割もしてくれた。
そんな偉大な方々に支えられ、とても幸せ者だなと実感する。
時間になると、たくさんの打ち上げ花火が上がり、歓声と共に盛り上がる。
最後の名物である大きな打ち上げ花火を見る事が出来て、その美しさを忘れずにいた。
「わぁーっ……!」
「綺麗だね~…」
「ええ、いい花火ね…」
「澄香、思い出すな」
「はい、去年の夏祭りに二人きりで花火を見た事、覚えてますよ」
「こんな綺麗な景色、この子たちに見せてよかったな」
「はいっ! これも企画してくださった社長のおかげです♪」
「ふふっ、別に大したことはしてないわ。あなたたち二人の協力があったから出来た事よ? 本当にありがとう」
「うす」
花火が終わって宿に戻り、『朝飯をみんなで作るために早起きしよう』とあらかじめ決め、冷蔵庫の中を確認した。
晃一郎は『もうすぐ社会人野球の大会があるとのことで、野球の素振りをするから自分は朝が早くなる』とほむらだけに予め話し、『あの二人には内緒だ』と約束もした。
銭湯に入り、遊び疲れたアルコバレーノはそのままぐっすりと眠る事が出来た。
朝になり、晃一郎が素振りを開始している中で、ついにレッスンが始まる。
つづく!




