第19話 友情の誓い
謎の魔法少女が活躍するというニュースが流れる中で、アルコバレーノは順調にたくさんの仕事をこなす。
ゆかりと橙子は、とあるディレクターによって体力を買われ、芸能界マラソン大会に招待される。
純子の許可を取って出場を決め、二人は運動着を購入する。
大会当日を迎えた二人は、ウォーミングアップをする。
そのウォーミングアップ中に、司会の島田慎二が進行する。
「さぁお待たせしました! 芸能界一マラソン大会です! 司会はおなじみの島田慎二です。あのお笑いコンビ通天閣の島田慎一の実の弟です。それでは出場者インタビューに参りましょう。まずは優勝候補のイケメン俳優の――」
「慎二さんお疲れ様です、俳優の関川恵一です。今日は勝つために毎日走り込んでましたので自信ありますよ」
「さすが元箱根駅伝選手ですねー、期待していますよ! それでは女性の優勝候補にも声をかけましょう」
「元宝塚記念歌劇団の水無月まことです。私は厳しいレッスンを積んできて、そこにマラソンがあったので自信あります」
「これはまた期待できそうですねぇ。それではスタートまでしばらくお待ちを!」
司会の島田は出場者である男性34人、女性17人に声をかけようと素早くインタビューをする。
最初に優勝候補、そこから上位候補とインタビューをする。
他にも元甲子園球児芸人の大坂翔正、自衛隊にも所属していた芸人の宮本武人、女性では趣味がトライアスロンである女優の塚原めぐみも優勝候補に上がっていた。
ゆかりと橙子はまだ新人で優勝候補には上がらなかったが、それでも選ばれて出場できたことに二人は感謝をした。
ウォーミングアップを終え、司会の島田が新たな挑戦者として二人に歩み寄ってマイクを向ける。
「では初出場の二人にも聞きましょう。二人はアイドルですね、アイドルが出場なんて珍しいですよ。何か運動されてました?」
「はい、ボクは空手をやってます。空手では全国大会で小学生の時に優勝も経験しています。空手では国際大会の強化選手にも選ばれました。他にもいろんな部活の助っ人を頼まれたこともありますが、関東大会ベスト8がでしたので自信はあります」
「関東大会でベスト8は凄い! では紫吹さんはどうですか?」
「私は陸上競技で1500メートルでは関東大会優勝、3000メートルでは全国出場記録ギリギリというところです。今日は10キロメートルなので未知数ですが、優勝してみせます。もちろん橙子にも負けるつもりはありません」
「柿沢さんのライバル宣言ですね!」
「ボクもゆかりに負けないよう頑張ります!」
「同じグループ同士のバチバチなレース楽しみです!」
「よし、ボクが勝ったら一つだけ何でもいう事を聞くってのはどうかな?」
「ならば私も私が勝てば一ついう事を聞いてもらうぞ」
「いいよ、これで負けられないね!」
「うむ」
ゆかりと橙子はお互いにライバル宣言をし、二人はレース前から熱くなる。
橙子は元気いっぱいで闘志を燃やしていたが、ゆかりは静かながら闘志を燃やしている。
スタート前の時間になり、スタート地点に立つ。
実況はお台場テレビのアナウンサーである高嶋信宏アナ、解説は昨年の東京マラソンを優勝した高橋直美だ。
そしてついにスタートの時が訪れた。
「On your mark――」
スタートのピストルが鳴り、一斉にスタートする。
10キロメートルという中学生には少々長い距離ではあるが、二人は様子を見るために大人にマークしてついていく。
橙子はゆかりの後ろに、ゆかりはラッパーの輪入道の後ろについた。
2キロメートル地点で輪入道がスピードを上げてきたが、あえて挑発に乗らずに自分のペースを保つ。
すると橙子がゆかりの顔を見て余裕の表情で挑発する。
「ゆかり、あの人のペースに乗せられないね」
「当然だ、前半でバテてはそなたに勝てぬからな」
「なるほどね、ボクも自分のペースでゆかりに勝つよ」
「いいだろう、私も己のペースで勝つ」
男性は体力的に余裕があるため、徐々にペースを上げ始める。
女性では優勝候補の水無月まことがゆかりたちに勝負をかける。
前半でヒートアップしている芸能人たちに対し『こんなに飛ばして大丈夫だろうか』とゆかりは心配する。
『こんなに飛ばしたらバテるだろうし、その瞬間に一気に抜くぞ』と橙子は考える。
5キロメートルを通過すると、徐々に前を行った人たちの背中が見えてくる。
ゆかりは橙子と顔を合わせて少しペースを上げる。
「ゆかりは普段から厳しい鍛練積んでるもんね」
「橙子は道場以来、私の朝練に毎日付き合ってるからか体力が随分ついたではないか」
「ゆかりの朝のルーティーン、最初は凄くキツくて倒れかけたんだよ」
「ふっ、それはすまなかったな」
「だけどついていけるようになって体力以外にも自信がついた。ボクは残り2キロメートルで勝負に出るからね」
「心理戦とは面白いな、私も同じく残り2キロメートルで本気を出そう」
二人は残り2キロメートルで勝負に出ると予め予告し、お互いの心理戦を突く戦いになる。
走り続けていると失速した水無月まことを抜き、ついに女性でトップになる。
男性はさすがに3人はゴールしていたが、残りの4人目を抜き去った。
そして残り2キロメートルになり、二人はさらにペースを上げる。
残り400メートルとなり、二人は全力疾走をする。
「あーっと! ここで紫吹選手と柿沢選手がデッドヒート! もはや男性顔負けの体力だ! 男性4位を圧倒的に突き放して残り300メートルになった! スピードの柿沢か! スタミナの紫吹か! 面白い展開になってきたー!」
「はぁ……はぁ……! 絶対に勝つよ!」
「はぁ……はぁ……! そなたには負けぬ!」
二人は最後の力を振り絞り、ゴールに向かって全力で走る。
ゴールが目の前になった時には二人で並び、どちらが先にゴールしてもおかしくはなかった。
「あーっと! 柿沢選手ここでさらに加速! 紫吹選手のスタミナもここまでか!? 柿沢選手ゴール! 1秒差で紫吹選手もゴール! これは大接戦だ!」
「あの二人は相当厳しい練習をしてきましたねぇ。アイドルだからこそ苦しい時も頑張れるのでしょう」
ゴール目前で橙子がさらにペースを上げ、元々の運動神経による差が出る。
ゆかりはあと一歩のことろで橙子に負け、悔しさから目に涙が浮かんだ。
橙子は満面の笑みを浮かべてで倒れ込み、ゆかりも橙子の隣で倒れる。
すると橙子はゆかりの涙を見てすぐに表情を変え、一言声をかける。
「じゃあ約束だよ。一ついう事を聞いてもらうね」
「ああ、何でもよいぞ」
「ゆかり……ボクの親友になろうよ。いつも朝一緒に練習してる仲だし、ライバルであり最高の友達になれるって思うんだ」
「そうか……実は私も勝ってたら同じ事を考えていた。どうやら以心伝心だったようだ。これからもよろしくだ、橙子」
「うん! これからもよろしくね!」
「柿沢さんと紫吹さんが友情を誓い合う握手をしています! 皆さん大きな拍手を!」
ゆかりと橙子は堅い友情で結ばれ、マラソン大会をきっかけに共演することが増えた。
ゆかりと橙子は元々身体能力も高く、運動神経もいいのでアクロバットな動きも可能なのだ。
パワーについては橙子の方が上ではあるが、ほむらほどではないためパワー系はあまり出ないようにしている。
とくにゆかりはあまりパワーに自信がなく、アルコバレーノの中では下から数える方が早い。
代わりにスピードとスタミナ、テクニックに自信があるため、橙子と比べて技巧派ではあるのだ。
そして6月も終わりついに7月となった。
7月の初週ではライブに向けてアルコバレーノの合宿がある。
持ち物に浴衣と水着があったのので、それを7人で集まってショッピングを尾する。
デビュー曲は七色の世界と共に七色の人が手を取り合う『虹の向こうに』、ミューズシスターズのタイアップ曲である『メロディー』、頑張っている人を全力で応援する応援歌『フレフレみんな!』だ。
同時にソロ曲を三曲ずつを最初に歌い、そこからグループ曲という流れになるとのことだ。
ソロライブのための合宿で、アルコバレーノの7人は喜びつつも気合を入れて合宿に臨むのだった。
つづく!




