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第18話 ラジオ開局

 6月にラジオを開局する海美(うみ)とみどり送られてきたリスナーの悩みを相談をするラジオを放送する。


 同時に音楽の事や、アルコバレーノの宣伝などをする。


 海美とみどりは収録の時間になったので、マイクの前でオープニングのトークをする。


「はじめまして、私こと青井海美(あおいうみ)と――」


「わたくしこと葉山みどりによる――」


「「ハッピースマイルラジオ開局です!」」


「この番組ではメインのお悩み相談やアルコバレーノの宣伝、そしてそれぞれの好きな音楽ジャンルについてのトークをします」


「古き良き曲から、現在も愛されている最新の曲までご紹介します」


「ですが私たちはまだ中学生で、人生経験は豊富じゃありません」


「ご期待通りの答えになるのかはわかりませんし、わたくしたちはまだまだ大した人間ではありませんが、このラジオをきっかけに成長していきたいと思っています」


「さてみどりちゃん、始まってすぐに2通のメッセージが来ているわね。早速読んでみましょう」


「はい、まず記念すべき一人目は――将来のヴェッシさんですね。どんな悩みなのでしょうか?」


 ヴェッシというのはレオナルド・ヴェッシという世界的サッカー選手で、アルゼンチン代表にも選ばれた大スターの名前だ。


 将来のということはまだ学生なんだろうと海美たちは考える。


 早速来た悩みをみどりは読み上げる。


「『僕はまだ小学6年生です。まずサッカーをやっていて、将来はサッカー選手になりたいです。それなのに親は『サッカーだけじゃなく勉強しろ』と頭ごなしに怒ったり、勉強しなきゃ辞めさせると脅してきます。正直勉強することがサッカーに何の関係があるのかまったくわかりません。どうしたら親を納得させられますか?』とのことです」


「将来のヴェッシくんはサッカーが大好きなのね。でも困ったわ、私も何の関係があるのかわからないわ……」


 海美が勉強とサッカーをどう結び付けるかを悩み、勉強が嫌いにならないように気を使ってるのか言葉選びに悩む。


 海美は勉強はそれなりにできるが、それでも進学校には届かない程度で勉強の楽しさを見出す方法が分からなかった。


 同時に地理が苦手で方向音痴なので自分も勉強法について知りたい気持ちもあった。


 そんな時に進学校であるみどりの口が開き、ついに勉強のアドバイスを送る。


「将来のヴェッシくん、お勉強というのは学生のうちは何故しなければならないのか分からなくなる年齢でもあります。ですが、今はサッカーでも国際化が進んでいて、英語というのは必須になります。そしてサッカーの発祥の地は英語の本場であるイギリスと聞きました。英語はもちろんですが、日本の言葉遊びなどで会話でも活かせる国語、自分の国の歴史や地理に詳しければ外国の方に案内できます。数学や理科は一見関係ないように思えますが、数学的計算力と、物理による物理法則理論、生物などによる人体などの把握をすればサッカーにも適応できる可能性もありますよ。何かを勉強するという事は何かを学んで自分の経験にすることです。このラジオを聞いてくださってるのなら、勉強を無駄と思うのではなく、何か新しい発見探しのゲームと思うようにしてみてはどうでしょうか? もちろん頭の整理をするために遊んだり、たまに休んだりするのも忘れないでくださいね」


 みどりは独自の勉強法と勉強のモチベーションの上げ方を的確に伝授し、海美もみどりのエリートぶりに関心を寄せる。


 海美も医者を目指していて方向音痴だと患者の元へ通えないかもしれないと思い、もう少し勉強を頑張ろうとも思えた。


「なるほど……みどりちゃんが優等生なのがわかる気がしたわ」


 みどりは何かを学ぶことが人生の経験になり、休むことは頭の整理だ捉えていたのだ。


 そのため全国模試でもベスト4に入り、英才教育を受けているんだと海美は感じた。


「みどりちゃんってさすが優等生ね。私も感心しちゃったわ」


「いいえ、両親は趣味がなく、お勉強ばかりしていたわたくしのことを『勉強ができるけど社会で通用する人間にならなくなる』ことを(うれ)いていました。だからアルコバレーノのスカウトを聞いて『勉強以外にも学ぶことはある、だからアイドルのスカウトを受けなさい』って言われました。確かにわたくしはお勉強ばかりで世間を知りませんでした。そして母がスポーツで弓道、父が音楽でフォークソングやハーモニカを学び、奥深いものを覚えました。ですのでわたくしは何かを学ぶことを喜びにしているだけで、優等生ではありませんよ?」


「そうなのね、みどりちゃんが先生になれば、生徒のみんなも学力上がりそうね。それに勉強や偏差値(へんさち)だけじゃなく道徳的な事も教えそうね」


「学生はお勉強だけが全てではないんです。人としてどう生きるかを学ぶのも一種のお勉強ですよ。それではいいところですが、最後のもう一通を見てみましょう」


「今回は40代の専業主婦の女性ね。ペンネームは安藤さんです」


『葉山さん青井さんこんにちは、私は専業主婦の安藤です。悩みは最近夫の帰りが遅く、ご飯も食べずにグッタリしてばかりで、何をしているのか聞いても何も答えてくれません。長男が就職のために一人暮らし、次男が大学のために寮に入ってから夫の様子がおかしくなりました。それも帰ってくるなり私にそっけないし、何だか嫌われたように感じます。もしかしたら浮気をしているのか、それとも何か悪い事しているのかどうしても不安です。どうしたらいいのでしょうか……?』


 複雑な家庭環境に恵まれた家庭環境にいるみどりは頭を悩ませ、どうやって声をかければいいのか考え込む。


「これはとても複雑な家庭環境ですね……。わたくしにはなんて答えたら……」


 みどりが複雑な夫婦関係に悩み、大人の悩みにみどりはどうやって答えを出すか迷った。


 そんな中で海美は学校でもあった似た悩みを持つ生徒の悩みを思い出して答える。


「安藤さん、ご主人の帰りが遅く、そして理由を話さない事に不安を覚えますよね。私も同じ事をされたら不安になります。ただもしご主人が悪い事すれば、今の時代はすぐに(おおやけ)になりますし、もし浮気だったらグッタリしたりしないはずです。可能性があるとすれば……会社の付き合いがより多くなり、出世してるのであれば部下にご飯を奢ったりしなければならないこともあります。それが不安でしたらそうですね……『帰った先に幸せがある、私には帰る場所があるんだ』と思わせる家庭作りをしてみてはいかがでしょう。もちろん働いている以上は社会のお付き合いも大事ですが、『どっちが大事なの?』と問い詰めたりせず、まずご主人の置かれてる立場を認め、待ってあげた上で癒してあげてください。そうすればきっとご主人もわかってくれますよ」


「まぁ……! 海美さんって大人の経験しているような感じですね」


「生徒会でも似たようなお悩み相談を学校の生徒にした事があったの。それを思い出して安藤さんの立場を客観的に見て言っただけよ。でも間違ってたり理由が違ってたらごめんなさい、推測するしかなかったの」


「それでもご立派なアドバイスです。安藤さんも帰れる場所がある家庭を作ってあげましょう。きっとあなたのご主人に届くはずです。それでは一旦CM(シーエム)入ります。次のコーナーは海美さんのリクエストで、フォークソングについて語ります」


「はいカットー! いったん休憩入りまーす!」


 海美は自分とは直接関係はないが、過去に生徒会長として相談に乗った生徒が忍多様な相談をした経験を活かして夫に自分の買える場所は家なんだと思わせるよう妻に努力することを勧める。


 そうする事で家に帰れば居場所があると思い、余計な寄り道をせずリラックスして家で休めるのだから海美は家庭環境の見直しを図った。


 こうして休憩に入り、海美たちは少しお茶をする。


 開局したばかりなのに一通でも来たことに喜びを感じ海美たちは安心する。


 休憩中にコミュニケーションを取りたいと思った海美はみどりに声をかける。


「お疲れ様、最初のトーク緊張したわね」


「はい、ですが海美さんとならきっとこのラジオは上手くいきます。とても心強いです」


「次はあなたのフォークソング愛を聞けるの楽しみよ。古き良きフォークから弾き語りスタイルのニューフォークも期待してるわ」


「期待してくださいね♪ 海美さんの将来の夢はカウンセラーですか?」


「いいえ、私は病院の先生になりたいの。医者には『メスという医者としての技術、薬草という病気を治す薬を多く知る知識、そして言葉による心の治療が必要』と言われているわ。私はそんな医者になって大勢の患者さんの心身を治したい。私は心療内科を目指しているわ。みどりちゃんは学校の先生かしら?」


「はい、わたくしは将来有望な生徒に学ぶことの大切さ、人としてどう生きるか、自由な選択肢を決断する勇気を伝えていきたいです。教師になってあらゆるいじめや不登校から命を救いたいとも思っています」


「いい先生になりそうね、みどりちゃんらしいわ」


「海美さんもいい先生になれそうですよ♪」


「もうすぐ再収録です! 準備お願いします!」


「はい! それじゃあ行きましょう♪」


「ええ」


 最初のラジオは成功に終わり、このラジオは今後も人気次第で続けていく。


 お悩み相談は人によっては『期待してた答えとは違う』ってこともある。


 それでも親身になって共感した上で、解決するアドバイスを送れば、『共感してくれた上にアドバイスまでしてくれた』と相談に来た人は安心する。


 海美たちはまだ中学生で人生の経験が少ない、それ故にたいしたことは言えないかもしれない、それでも誰かの希望になれるならもっと頑張ろうと思うのでした。


 つづく!

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