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第17話 挑戦すること

 さくらとほむら、そして千秋の三人は、小さな子どもたちと一緒に遊ぶ番組の収録をしている。


 ほむらがアシスタントをしている『遊ぼうチャレンジ」』という番組で、子どもたちに大きな挑戦をさせて自信を持ってもらう番組だ。


 メインのお姉さんが高熱で倒れてしまい、ほむらを急遽メインのお姉さんをやり、ゲストでさくらと千秋がアシスタントをする。


 そして収録前のリハーサルを終え、休憩に入った時の事だった――


「はぁ……」


「どうしたの?」


「うん、小さい子って凄く元気なんだね。私なんて押されっぱなしで、なかなか指導できないや……」


「私もだったよ。すごく難しいよね。でもほむらちゃんは凄いね♪」


「まぁ弟たちで慣れてるからな。でもこの口調は子どもの前では出来ないから緊張するぜ。さくらは小さい子に慣れてないからな、でも結構素直でいい子ばかりだろ? これから慣れていこうぜ」


「うんうん♪ あの子たちの笑顔を見るとこっちまで笑顔になれるもん♪ さくらちゃんも元気出して!」


「うん、ありがとう。私、頑張ってみるね」


 さくらは少し小さい子の指導が上手くいかず落ち込んでいたが、ほむらと千秋の励ましで『また頑張ろう』って思えるようになる。


 最初は折り紙をして遊び、(ツル)や紙飛行機、お花など幼稚園くらいの子たちは凄く上手に折った。


 次に音楽に乗って踊ったり歌ったりするコーナーに入り、普段お姉さんが歌っている『どうぶつカーニバル』、『ママ大好き』、『虹の向こうへ』を歌う。


 ほむらが童謡も楽しそうに歌い、意外な一面も見ることができ、さくらたちはほむらの新しい発見をする。


「さぁみんな、お歌とダンスは面白かったかなー?」


「「「うん!」」」


「それじゃあ身体も動かしたことだし、次はお外で遊んでみよう!」


「「「はーい!」」」


「今日はいい天気だねー! そんな天気には~?――大縄跳びをしよう!」


「「「はーい!」」」


「うう……」


 今日のテーマは大縄跳びで、全員で一回ずつ跳んで抜けるというゲームをする。


 今日の子どもたちは運動に自信のある子たちで、男の子が『やるぞ!』と意気込んでいた。


 女の子も活発な子が多く、大縄跳びが楽しみだった。


 ただ一人を除いては――


「うぅ……」


「なあ、あの子なんだけどさ、何か不安そうじゃねぇか?」


「確かに……。笑顔がさっきから見えないもん」


「ちょっと声かけてくるね。こんにちは、さくらお姉さんだよ。あなたのお名前は?」


鈴木紗枝(すずきさえ)……。5歳です……」


「紗枝ちゃんのお顔、曇り空だね。どうしたのかな?」


「運動怖い……。みんなにバカにされちゃう……」


「大丈夫、お姉さんが一緒だから勇気を出してみよう? 見守っているからね」


「うん……」


 さくらは紗枝という子に声をかけ、運動が苦手と不安な表情を見せる。


 収録前に話した紗枝の母親によると運動が大の苦手で、運動会になるといつも『行きたくない』と泣き出すほど苦手意識が強いらしい。


 さくらも小さい頃は運動が苦手で、よく大縄跳びや鬼ごっこで失敗したり、徒競走でも最下位だったりしたことを思い出した。


 それでも小学2年生の時に見た新体操の選手を見て憧れ、運動が苦手だったさくらは才能が開花し、今となっては全国大会に出るほどだ。


 だからさくらは勇気を出して挑戦してほしいと思い見守った。


 そして大縄跳びの収録に入る。


「それじゃあみんな、大縄跳びに挑戦しようー!」


「「「わーい!」」」


「ルールは簡単、まず順番に一人ずつ1回縄を跳んで、そこから抜ける。これを15人やって何人成功するのかの挑戦をしまーす!」


「それじゃあ私とほむらおねえさん、さくらおねえさんと一緒にお手本をします! よい子のみんなー、おねえさんに注目ー!」


「「「はーい!」」」


 ダンスを指導した体操のお兄さんの二人が大縄を回し、さくらたちがお手本のために跳ぶ。


 三人で成功すると、子どもたちは拍手をする。


 紗枝はまだ不安そうな顔をしていて、今も笑顔が見えない。


 大縄の本番に入り、私たちが子どもたちを誘導して並ばせる。


 最初の男の子が跳び、次の女の子がまた跳んでと繰り返し、ついに14人連続で成功した。


 そしてついに紗枝の出番になり、千秋は紗枝を見守った。


 ところが紗枝は怖がってなかなか跳ぼうとせず、泣き出しそうな顔をしていた。


 体操のお兄さんの腕が疲れ始め、気を使っている紗枝はさらに泣きそうになる。


「大丈夫? 最初は怖いよね? よかったらお姉さんと一緒に跳んでみる?」


「一緒に……?」


「うん。それにね、みんなをよく見てみて?」


「え……?」


「紗枝ちゃんがんばれー!」


「こっちにおいでよー!」


「がんばれ! がんばれ!」


 さくらは紗枝が怖がっているのを見て声をかけ、一緒に跳ぶように言い安心させる。


 怖がる紗枝を他の子どもたちは応援し、紗枝は少しだけ勇気が湧いてくる。


「みんなが紗枝ちゃんを応援してくれているよ? 大丈夫、失敗してもみんなで意地悪したりしないから。手をつないでおねえさんと一緒に跳ぼう?」


「ぐすっ……うん!」


 さくらは紗枝と手を繋ぎ、同じ歩幅で走って大縄をくぐる。


 紗枝はさくらの顔を見て笑顔になり、大縄をよく見て一緒に跳ぶ。


 大繩を飛び続け、ついにチャレンジは成功したが、紗枝は嬉しさのあまりに大繩から抜けず、5回も連続して跳んだ。


 前を見ると子どもたちは感動して拍手をして迎え、紗枝は泣きながら笑顔になる。


「おめでとうー!」


「紗枝ちゃんよく頑張ったねー!」


「ありがとう……!」


 収録を終えて休憩室に戻り、スタッフからさくらたち差し入れが届く。


 たくさんのお菓子をみんなで分け合い、さくらたちは今日の出来事を思い出して話す。


「さくら! やれば出来るじゃん! さっきの大縄の言葉、アタシにも響いたぜ!」


「あの子すっごい笑顔になったね! さくらちゃん何て言ったの?」


「みんなが応援しているからおねえさんと一緒に跳ぼうって声をかけたんだ。そしたら紗枝ちゃんの不安が解けて、挑戦する事を覚えてくれたんだ」


「さすがだね♪ さくらちゃんって普段はあまり前に出ないけど、いざという時に頼りになるよね♪」


「そうかな?」


「ああ、間違いなくカリスマ性を持っているぜ! 自覚はないだろうけど、みんなさくらについて行ってるもんな!」


「何か恥ずかしいな……」


 さくらには人を惹きつけるカリスマ性があるとほむらたちは話し、さくらは自覚こそないが紗枝を惹きつけた事実があり少しだけ照れる。


 千秋もさくらの笑顔を見てニコニコし、アイドルとして才能が開花しつつあることを感じている。


 話が盛り上がっているとスタッフの男性が楽屋のドアを叩いてさくらを呼ぶ。


「桃井さくらさんいますか?」


「はい、私です」


 スタッフの男性がさくらを呼びさくらが出ると、そこには紗枝とその母親が楽屋を訪れていた。


「さくらおねえさーん!」


「きゃっ! 紗枝ちゃん来てくれたんだ!」


「桃井さん、うちの子に勇気を与えてくれてありがとうございました! うちの子は挑戦する事が苦手で、できないと思い込んでしまうクセがあったんです。それでもさくらお姉さんのおかげで挑戦する勇気を持つことが出来ました。本当にありがとうございます。紗枝、さくらお姉さんにお礼を言える?」


「うん! さくらお姉さん、ありがとうございました!」


「紗枝ちゃんもおめでとう。また会おうね」


「またね!」


 訪れたのは紗枝とその母親で、紗枝はさくらに会うと嬉しさのあまりに思い切り抱きついた。


 そして紗枝の母親は紗枝のこれまでのことを話し、さくらと出会ったことで挑戦する勇気を覚えてくれたことに感謝を示す。 


 紗枝が笑顔で手を振ったのでさくらも手を振ってお別れする。


「アタシさ、やっぱ子どもっていいなって思う。いろんな事に挑戦して学習して、そして将来有望な大人になるんだなって思うとワクワクするんだ。だからアタシは保育士になって小さい子を育てたいって思った。だがアイドルをしていれば交流することもある。もっとアイドルとしてアタシも頑張るぞ!」


「私も警察官になるためだけに頑張ったけど、アイドルをやって違う景色が見えた。いろんな人の笑顔を見てもっと見たい、もっと笑顔を守りたいって思うようになったよ。やっぱりそう思わせてくれるさくらちゃんって私たちのリーダーなんだなって思うよね!」


「だな、さくら! 今日は成功を記念してスターライツコーヒーでお茶会しようぜ!」


「うん!」


 今日の収録を終えた三人はスターライツコーヒーでお茶会を開き、今日の思い出を忘れないと誓い合う。


 挑戦する心は大人になるほど忘れていき、いつの間にか普通の日常に慣れてしまう事が多い。


 もちろんリスクを避けるのも大切だが、それでも挑戦する事で成功すれば自信になり、たとえ失敗しても経験値になる。


 さくらたちはもっといろんな事に挑戦し、紗枝たちにの応援を背負い、どんな困難にも負けないアイドルになろうと誓った。


 つづく!

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