表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/110

第16話 旅行後編

 旅行2日目は最初は予定だったが、大雨が降ってる上に強風もあり、外に出るのが危険な状態になったため宿泊所で待機する。


 そこで急遽純子が所属タレント全員を集め、緊急の企画を発表する。


「まさかこんなことになるなんて予想外だったわ……。本当にごめんなさい。予定を変更して宿泊所のアリーナを借りてレッスンを一日中するわ。メニューはトレーナーさんに伝えてあるわ。それを参考にして一日頑張りましょう」


「「「はい!」」」


「それから私は……地下の部屋で仕事があるから、決して(のぞ)いたりしないように」


「「「はい!」」」


「アルコバレーノのみんなはレッスンだけでなく別メニューもあるわ。ケガだけは気を付けてね」


「「は、はい!」」


 荒天のために宿泊所のアリーナを利用して厳しいレッスンの一日が始まる。


 するとたくさんの先輩所属タレントたちが恐れるように震えていた。


 さくらは同じアイドルで先輩の茶山(さやま)くるみに、どんなメニューをしたのか聞いてみる。


「茶山先輩、合宿のメニューって何をするんですか?」


「基礎練の他にハードな体力向上メニュー……」


「それってマジっすか……!?」


「ジムがある……。そこに行く……」


「ゆかりちゃんと橙子ちゃんならお手の物かもしれないけど、私たちはどうかしらね……?」


 ポーカーフェイスで口数が少ない茶山は、普段は見せない曇った表情でレッスンの厳しさを語る。


 メニューを始めると動的ストレッチを長めにし、本格的なダンスと音域突破の発声練習、さらには心理学に基づいた演技の練習など普段はやらないメニューをする。


 ジムでは俳優やアーティスト、芸人もたくさんの汗をかきながら厳しいトレーニングをしていた。


 アルコバレーノはというと――


「アルコバレーノだね。君たちのメニューは俺たちよりキツイぞ。気を付けて鍛えろよ」


「わかりました」


 ほむらの憧れであるPhantom(ファントム)のボーカルである稲葉(いなば)マサトシが声をかけ、ほむらの心が燃え上がる。


 アルコバレーノの特別メニューはウェイトトレーニングを限界の重さから10キログラム軽くした重さを15回を3セット、マスクをつけて10キロメートルメートルのランニング、そしてエアロバイクによる全力サイクリングを20キロメートル、プールによるスイミング50メートルを5往復3セットと体力的に厳しいメニューだった。


 他の先輩たちはアルコバレーノより軽めだが、それでも厳しいレッスンだった。


 タレントたちは誰も弱音を吐かず、成長するために向上心を持ってこなしていった。


 しかしさくらたちは純子がどんな仕事をしているのか気になり、メニューを全部終えて地下にある部屋へと移動する。


「一体どんな仕事なのかな……?」


「わからないけど、自分だけ楽してるって感じじゃなさそうだよ……」


「見つからないように音を立てないようにせねばな……」


「ここだな。よし、覗くぞ……」


 ドアをこっそり開け音を立てずに部屋を覗こうとしると、突然大きな物音と、純子と晃一郎の声が聞こえてきた。


 何があったのか見つからないように覗いてみると、倒れても立ち上がろうとする純子と、純子を全力で支える晃一郎の姿だった。


 車いすから少し離れていて、手すりもない所を歩こうとしていた。


 純子の自分を鼓舞する言葉が部屋に響き渡る。


「社長! 無茶です! まだ呪いの力が……」


「はぁ……はぁ……! あの子たちやみんなだって頑張っているのだから……私も頑張らないと……! 私は私に出来る事……あの子たちだけに負担をかけないように……! 呪いに負けるな……黒田純子……!」


「社長……わかりました、俺も全力で付き合います!」


 純子は自分に問い詰めるように胸に手を当てて奮い立たせていた。


 晃一郎は純子の手を握ってゆっくり歩き、何度も倒れては起き上がらせていた。


 呪いという言葉が聞こえ、『純子おに何があったのか、10年前のモノクロ団襲撃の事が関係あるのか』と覗きながらさくらたちは気になって考え込んだ。


「見てしまったのですね……?」


「うわっ! 水野さん!?」


 さくらたちは澄香の声に驚き、ついにドアと接触してしまった。


 澄香の声はとても悲しそうで、何か隠していることがわかる


 ビックリして慌てたさくらたちはドアを開けてしまい、ついに純子たちに気付かれてしまう。


「あなたたち……!」


「はぁ……見てしまったか……」


 晃一郎は溜息をつき、『ついにバレたか……』と独り言をつぶやいた。


 アルコバレーノは純子に怒られることを覚悟し、覗いたことを謝る。


「その……すみませんでした! 社長が何をしていたのか、どうして物音がしたのか気になって……」


「いいのよ、いずれ見つかると思っていたから」


「社長、もう限界です。事務所のタレントや社員全員に過去の話をしましょう」


「そうね、夜月(やつき)くんの言う通り、もう隠し事をやめるわ。水野さん、今から所属タレントと社員を全員集めて。ここまで見られたら本当の事を話すわ」


「社長……わかりました!」


 純子はアルコバレーノを叱る事もなく、約束を破ったことを許した。


 澄香の呼び出しに全員集まり、『純子から何か発表があるのか』と噂になった。


 全員メニューを終え、ねぎらいの言葉なのかと期待する人もいた。


 そして純子から重大発表される。


「みんな、この歩けない身体だけど……ずっと隠していてごめんなさい。実は10年前のモノクロ団襲撃の時、魔法少女として戦ってたのは私自身なの。シロンの故郷の国王の姉であるシロガネ王女に選ばれて魔法少女として覚醒したの。何人もの魔物になった人々の心を浄化して元に戻し、長い戦いを経てついに四天王との直接対決を一人で追い込んだけど……四天王の一人に歩けなくなる呪いをかけられ、戦う事が出来なくなったの。そこでシロガネ王妃は、自らの命を犠牲にモノクロ団を封印した。でも10年で効果がなくなり、今に至るの。アルコバレーノを探していたシロンと、カラオケ動画でたまたまスカウトしようとした私とで探してる人が一致して協力をしたの。それが今の状況……」


「そうだったんだね……」


「じゃあ私たちに秘密にしてたのってリハビリって事……?」


「その様デスネ……」


「夜月専務は知ってたんですか……?」


「本当にすまない……! 社長からは『みんなをこんな大事件に巻き込みたくない』と言われて、黙っておくことを誓ったんだ。責めるなら社長ではなく、グルだった俺を責めてくれ……!」


 事情を知ってた晃一郎は純子の代わりに謝罪し、所属タレントや社員たちは少しだけ間を取って黙り込む。


 すると通天閣の有田を筆頭に、主力のタレントの先輩たちが純子に声をかける。


「水臭いな社長、ワイらはそんな自分に厳しく他人を思いやれる社長やからついて行くんねん。アルコバレーノの戦いやったらワイらで支えるで!」


「そうだな、俺たちが全力でサポートするぞ。ただし、社長が全部背負いこもうなんてしたら許しませんよ?」


「アタシたちだってあなたを慕っていますから、どこまでもついて行きます」


「だから社長……顔を上げてください……。一緒にアルコバレーノを支え合いましょう……」


「みんな……本当にありがとう……。水野さん、全員で写真撮影するわよ。事務所の創立3年記念の写真を飾るわ」


「わかりました♪ ではホテルのスタッフさんを呼びますね!」


「夜月専務も今までお疲れ様でした。よく社長をここまで守り抜きました」


「デスが、もう二度と一人で抱え込んで秘密にしないでクダサイネ?」


「ありがとう、みんな……。さあスタッフさんが来たぞ、全員で写真撮影するぞ!」


 純子の秘密をみんなで共有し、アルコバレーノの命がけな戦いを支える事になった。


 2日目を終えて3日目になり、全員で新幹線に乗ってこれから帰る。


 新幹線の中でみんなで宣伝し合ったり、レギュラー番組やドラマやアニメなどの出演依頼を交換し合ったりする。


 アルコバレーノはというと――


「みんなにお知らせよ! アルコバレーノのデビューライブが8月下旬になったわ! ソロ曲のレコーディングも終え、残るはグループ曲のみとなり、ライブの準備が忙しくなるけど、みんなで乗り切るわよ!」


「「はい!」」


 他にもさくらが声優の大山奈緒も出演するアイドル学園というアニメに出演することが決まる。


 千秋は通天閣さんとジョーカーズも出演するお笑い番組に出演。


 みどりと海美(うみ)によるラジオの開局。


 橙子とゆかりは芸能人対抗マラソン大会に出場。


 ほむらは子ども番組のアシスタントに選ばれる。


 一歩ずつ前進しているが、いつか困難が訪れるかもしれないと考える。


 純子の苦しかった想いを背負って、アルコバレーノはモノクロ団の野望を止めなければならない運命がある。


 負けられない戦いと、芸能界の厳しい試練を乗り越えなくちゃと心に決める合宿だとさくらたちは感じた。


 つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ