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第101話 やめないで

 究極の選択をしたさくらたちは純子や事務所の社員たちと一緒にファイナルライブの準備を進める。


 さくらは『離れ離れになっても、自分たちの友情は不滅だ』と信じている。


 そんな中でアルコバレーノの卒業会見が行われ、さくらたちは純子、晃一郎、澄香の三人と一緒に記者たちに挨拶をする。


「みんな、覚悟はいいかしら? きっといろんな質問が飛んでくるけれど、理性を保って答えるのよ」


「「「はい」」」


「社長、お時間です。スタンバイお願いします」


「ええ。それじゃあみんな、行くわよ」


「「「はい」」」


 会見の時間になり純子の後をついていくように席に座る。


 たくさんのカメラの前でも純子は堂々としていて、ステージに慣れているさくらたちよりも覚悟を決めて会見に臨むつもりだ。


 さくらたちは純子と一緒に深々と頭を下げ、記者に挨拶を交わす。


「この度はアルコバレーノの卒業会見にお越しいただきありがとうございます。私、アルコバレーノのプロデューサーである黒田純子がまず皆さんにご報告があります」


「黒田社長、まずはアルコバレーノの戦いお疲れ様でした」


「ありがとうございます」


 灰崎は純子とは従姉妹の関係で、お互いの事をよく知り尽くしている仲だ。


 だからあまり失礼のないようにしつつ、ここまで一緒に歩いてきた仲間としての本音を聞こうという姿勢になる。


 灰崎はマイクを向け、メモを手に取とって質問をする。


「今回アルコバレーノを卒業するメンバーはどなたでしょうか?」


「はい。今回アルコバレーノを卒業するメンバーは――保育士を目指す赤城ほむらさん。アスリートとスポーツ会社を兼任する柿沢橙子さん。父親と同じ道である警察官になる黄瀬千秋さん。教員免許取得のために勉強する葉山みどりさん。医学の道に進み患者を救いたいと願う青井海美さん。そしてスポーツ界を支えるトレーナーになる紫吹ゆかりさんです。元々彼女たちはアイドルを志していたわけではなくモノクロ団との戦いに備えて私がスカウトした子たちです。このまま続けさせて彼女たちの夢を奪いたくないと判断し、この決断をしました」


「なるほど。では桃井さんはアイドルを続けていくという事ですか?」


「はい。私、桃井さくらはアイドルを続け白銀雪子さんとユニットを組み新たなアイドル道を進んでいきます。もう既に白銀さんとは話をしています」


「そうですか……皆さんの覚悟は伝わりました。ありがとうございました」


 灰崎は純子の覚悟とアルコバレーノの考えを尊重し、これ以上の質問は追い詰めるだろうと判断して質問をやめる。


 純子はホッと一息ついていると、今度はネガティブキャンペーンでお馴染みの悪徳記者が純子にとんでもない質問を投げかける。


「戦いに備えてスカウトしておいて、夢を奪いたくないと引退に追い込むのは無責任ではないか?」


「それは……」


 純子に対してネガティブキャンペーンをするために悪徳記者は答えに困る質問をする。


 純子は困惑しどう答えればベストなのかを考え込みうつむく。


「くっ……! そんな言い方しやがって……!」


「落ち着いて。こういう質問で本音を暴こうとするのは記者のやり方なのだから」


「何か悔しいな……」


 純子の隣にいる晃一郎はこんなに批判を受けるのは悔しいという気持ちで悪徳記者を睨みつける。


 純子になだめられて晃一郎はぐっと堪え、握りこぶしをギュッと握って震えながら耐える。


 するとみどりは突然席から立ち上がり、マイクを取って精一杯の答えを出す。


「いいえ。黒田社長はそんなわたくしたちをずっと気にかけ一緒に戦場に(おもむ)き、わたくしたちを守ろうと重傷を負ってまで助けてくださりました。そしてわたくしたちの運命を大きく変え、新たな知識と経験を積ませ、こんなに立派に成長する事が出来ました。だからわたくしたちは黒田社長や水野夫妻、そして芸能界の先輩方や応援してくださった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです」


「みどり……ふっ、やはりエリートは考える事が大きいな」


「うっ……!」


「葉山さん……!」


 みどりのこれ以上ないベストな答えに悪徳記者は黙り込む。


 同時にゆかりはみどりのエリートならではの機転に感心する。


 少しイラついていた晃一郎は溜息をついて一旦落ち着いた。


「それに私たちはアイドルになった事を後悔していません。むしろ支えてくださった皆さんにはどんなに感謝しても足りないくらいです。アイドルの経験を活かして、もっと将来を(にな)う皆さんには私たちがいなくてももう大丈夫になったんです。だって世界は……私たちだけでなく、みんなで平和を掴み取ったんですから。だから……卒業してアルコバレーノ伝説が終わっても、卒業したみんなの事を応援してください。これは私からの個人的なお願いです。どうかみんなの夢のために見守ってあげてください」


 今度はさくらがマイクを取って純子に感謝を伝え、質問した悪徳記者は気まずそうに下を向いて黙り込む。


 その様子を見て安心した灰崎記者は咳払いをして気を取り直し、場を切り替えるようにエールを送って記者会見を終えた。


 記者会見から1週間が経ち、日本中で『アルコバレーノ解散しないで』とファンの人たちがデモをしていることが世界中で大ニュースになっていた。


 全国にはアルコバレーノの解散を反対する署名活動も行われ、さくらたちは『ファンを裏切ったんじゃないか』という葛藤に悩んむ。


 するとさくらの元にあるメッセージが届く。


『桃井さん。みんなは夢のためにアイドルを卒業すると聞いたよ。随分世界中がパニックになってるね』


『うん……。まさかここまでみんなが私たちの事を想っていたなんて…。私たち…ファンを裏切っちゃったのかな……?』


『そう思うのも無理はないよね…。世界を二度も救った救世主のアイドル魔法少女だから永遠に存在してほしい、それはファンなら誰でもそう思うよ』


『だよね…どうすればよかったのかな……?』


『わかった。それじゃあ次の日曜って空いてるかな?』


『えっと……うん。次の日曜なら全員空いているよ』


『よかった。ファンクラブ会長としてファン代表としてアルコバレーノのみんなと話がしたいって思ってたんだ。昼の12時半に溝の口のカラオケの達人のパーティルームでいいかな?』


『あそこなら密室で防音だから誰にも聞かれないね。上条くんに会えるなんて嬉しいな』


『僕も桃井さんに会えるなんて楽しみだよ。それじゃあ日曜の昼に待ってるね』


 さくらの友達で一番の理解者である上条健太がアルコバレーノのことを心配し、さくらにメッセージを送り、さくらも上条に頼るように返信をする。


 そしてファンクラブ会長でファンを代表する上条と久しぶりに再会する約束をし、今後のアルコバレーノの事を話し合う事になった。


 仲間たちにも上条と会うことを話し、全員スケジュールが空いていたので参加表明を送る。


 そして日曜の昼、カラオケの達人のパーティルームに入った。


 つづく!

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