エピローグ
――帝国辺境の小さな村。そこには元気にはしゃぎ回る子供達の姿がある。朝になれば農夫達が仕事に出て、村の人々も各々の仕事を始める。それはこの村ができてから何一つ変わらない光景。
幾度となく繰り返されてきた営みが破られたことは一度もない。それはもしかすると英雄の加護かもしれない、などといつしか言われるようになった。
その英雄の姿は、村の入口に像となって今も鎮座している。この村に伝わる歴史書によれば、英雄となった彼が三度目に帰郷した際、像を造らせて欲しいと村の人が願った。最初英雄は全力で拒否したらしいのだが、最終的には折れた。
さすがにこんな小さな村で英雄が生まれたのは後にも先にも一度きり。彼は最終的にこの村へは帰ることがなかったためこの村に子孫がいるわけでもない。けれど、村の人々は入口に存在する像を見て思う。世界を統一した英雄が、この村から出た。それは自分達の誇りである、と。
帝国歴史書 改訂第五版
――オルバシア帝国。
それは、史上初めて世界統一を成し遂げた人間の国家。人の繁栄が始まった最大の契機であり、また同時に様々な種族が手を取り合って交流する時代の幕開けだった。
世界統一前において、まず人間の国家を統合。そこからエルフ、竜、天上の神々、そして魔王――様々な種族と帝国に入るよう交渉、時に戦い着実に併合していった。
その中で際立って貢献した人物は二人。一人はジーク=ウィステン。帝国統一を成し遂げたアゼル皇帝に召集された剣士。彼の剣によってあらゆる種族は帝国に従った。
もう一人は魔王ティウェンナール――通称ティナ。元々は地方に存在していた魔王の配下であったが、元々持っていた膨大な魔力から魔王と呼ばれるようになった。けれど彼女は帝国に忠誠を誓い、帝国のためにジークと共に戦場に立ち続けた。
世界を統一した後、アゼル皇帝は内政に注力し、ジークとティナはそれぞれアゼルの治世を維持すべく戦い続けた。特にジークは旅をしながら様々な問題を解決し、そうした功績が目に見える形となって千年後の今も残っている場所がある。
やがてジークは魔王ティナと結ばれ、それが帝国の礎となるウィステン家の始まりとなった。皇帝アゼルは世界統一後およそ五十年という長い歳月在位を続け、生前退位を行った。そこから帝国は皇帝という存在の下、今も統治を続けている――
完結となります。お読み頂きありがとうございました。