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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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計画の日

 戦友などから話を聞く間に、いよいよ計画を実行する日がやってきた。無茶な方法であるのは間違いないし、一歩間違えれば帝都に被害が出る。俺にできることは騒動が起きた直後に乱入し、すぐさま事態を沈静化することだけだ。

 どこでどういう騒動を引き起こすかは、聞いていない……というのも、下手に聞いていると動きに違和感を持たれてしまう可能性があるため、それを嫌った形だ。


 もし今回の作戦が露見されれば、特大のスキャンダルになるわけだし、俺は詳しい事情を知らない方がいい……そんなわけで俺はいつものように起床して訓練を行う。相変わらずやっているのかと戦友などから呆れた風に言われながら俺は、淡々と剣を振る。

 その時だった――城のどこからかゴウン、と鈍い音がした。戦友の一人が何事かと週を見回す中で、俺はある気配を感じ取った。


「……この魔力は」

「ジーク、どうした?」


 間違いない、これは――


「俺が最後に戦った魔王……それと似たような魔力だ」


 その言葉に、戦友や騎士達は弾かれたように駆け出した。俺もそれに追随し、気配のある場所へ向けて疾走する。

 城内は爆音によって混乱し始めた。何事かと部屋から飛び出す者もいれば、慌てた様子の侍女をなだめる兵士の姿もある。そして音の発生源に近づくにつれて混乱の度合いが増してくる。


 それはどうやら、城に併設する施設――研究施設からもたらされたものだとわかると、戦友は苛立ったように声を上げた。


「あの場所にいる連中は、どこまでも研究研究と……今回もそういった騒動か?」

「もしかすると、俺が倒した魔王の力について調査していたのかもしれない」

「だとしたら、迷惑だな」


 会話をしながら研究施設の中へ。そこで多数の研究員が慌てながら入口へ向かって逃げる光景が見えた。

 その波にのまれないよう廊下の端へ移動しつつ、俺達は現場へと向かう……やがて辿り着いたのは、爆発によって様々な機具が壊れた大きな研究室。音の根源は漆黒の塊だったが……やがて形をなし、俺が戦った終焉の魔王みたいな形をとった。


「……あれは、ヤバいな」


 戦友の一人が声を上げる。確かに、研究の暴走にしては、あまりにも強大な力。

 周辺にティナなどはいないか気配で探ってみたが、いない。これが作戦通りなのかわからないが、事前に敵が出現したら対処するようにと言われている。ならば、


「下がっていてくれ。俺がやる」


 剣を抜きながら告げる。戦友はそれを見て「わかった」と応じ、俺は足を前に出した。


 途端、雄叫びのような声を上げた。暴走する力、強大な魔力……放置すれば帝都を無茶苦茶にするであろう存在が、まさしく今ここに降臨した。

 それと共に、俺は確信する。アゼルはもう二度と研究を続けさせないために、こういうものを作るよう指示を出した……この作戦がどう作用するかは未知数だ。けれど、もう終焉の魔王という存在が作られることはないだろう……そう思いながら、漆黒へ走った。


「世界は統一されたんだ」


 俺は声を発しながら剣に魔力を集める。


「もうお前の出番はない……このまま消え去れ!」


 渾身の一撃を放つ。それに漆黒は腕をかざし、受けた。

 金属音にも似た衝撃音が耳を打った。よっぽど強力な存在が生まれたらしい……が、終焉の魔王と比べれば、大したレベルじゃない。


 ならば、俺がとるべき選択は――剣を振り抜き相手の腕を弾く。漆黒は衝撃によって少しばかり後退した。強力な魔力を秘めているが、どうやらそれを扱うことはできない……あくまで、強大な魔力を宿しているだけで、意思がないということだろう。

 俺は全力で剣に魔力を集めた。終焉の魔王に基づく力である以上、一気に消滅させなければ終わりはない。そして今の俺にはそれができる――剣を、振った。漆黒はそれを腕で再度防御するつもりだったようだが、俺の剣は……易々とその腕を両断した。


 そして漆黒の体躯へ斬撃を決める。その瞬間、俺の力によって漆黒が霧散していく。相手は抵抗しようとこちらへ手を伸ばそうとしたが……何もできないまま、目の前で手が塵へと変じた。

 勝負はまさしく一瞬だった……が、もし一撃で決めることができなければ、相当厄介な事態に陥っていたに違いない。


 作戦とはいえ、相当厄介な存在を生み出したものだ……が、これで研究者も脅威を感じ取ったことだろう。そして研究で力を暴走させたことにより、研究機関の立場は弱くなる。

 これで目論見通りにいくかはわからない……が、とりあえず作戦は完了した、ということでいいだろう。


「……何だったんだ、あれは」


 冷や汗すらかきながら戦友が近づいてくる。


「あれ、放っておいたら帝都がヤバいことになっていなかったか?」

「そうだな。場合によっては……帝都が終わっていたかもしれない」

「そんなヤバい存在を研究機関が?」

「作り出したのか、それとも分析して結果生じたのかわからないが……アゼルも事態を重く受け取るだろう。後は、アゼルの判断次第だ――」


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