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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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魔王との戦いの終わり

 かつて、ティナの記憶を読んだ時のように、頭の中に思考が雪崩れ込んでくる。俺はこれまで、魔族などに対しても思考を読んだことはあったが……前回、いくら終焉の魔王と視線を重ねても記憶を読めることはなかった。


 これはつまり、俺の力が終焉の魔王を討てるだけのものとなったためなのか……そんな推測を抱きながらも俺はその光景を目に焼き付ける。

 それはどこかの部屋――城の中なのか屋敷なのかは不明だが、高級感のある内装から、貴人の類いが主である部屋だろうか。


「――事情については理解した」


 そうした中で声がした。頭の先から足下まで漆黒で覆われた存在。声から間違いなく終焉の魔王で間違いないが、俺の視点からは後ろ姿しか見えない。


「だが、なぜこんなことをする? 帝国を繁栄させるためであれば、こんなことをする必要性はないはずだ」


 そして終焉の魔王はなおも告げる……その口ぶりから、俺はとある推測をした。終焉の魔王は帝国の所属する誰かと手を組んでいた。


「……ふん、語らずか。この力を用いれば、確かに世界を蹂躙できるだろう。目的がわからないため不気味ではあるが」


 ――その言葉で、終焉の魔王に関する力は、オルバシア帝国由来のものであると推測できた。正直、驚愕する内容ではあったのだが……、


「ならば、そちらの思惑に乗ってやろう。この力で帝国を……世界を、壊せばいいのだな?」


 それに返答はなかった……が、確実に漆黒の存在の向こう側に誰かがいる。


「帝国だけでなく、国というのは繁栄することを望むものだろう。何故こうして魔王に力を分け与えるのか……理解に苦しむが――いや、そうか」


 終焉の魔王は、僅かに肩を震わせた。もしかしたら、笑ったのかもしれない。


「もう既に貴様は――狂っているというわけか」


 意識が遠のき始める。戦場に引き戻されると思い、俺はすぐさま思考を戻そうとした。

 その時だった。漆黒が突如消え……終焉の魔王と会話を成していた相手が見える。


「――な」


 呻く。それと同時、視界が晴れ俺の剣が振り抜かれ魔王の体に刃が刻み込まれた。


『が、あ――!』


 声を上げながら魔王は抵抗しようとする。俺は混乱する思考を振り払いながら追撃するべく魔王へ向け足を踏み出した。

 地面を破砕するような勢いで足を前に出した俺は、どうにか逃げようとする魔王へ追いすがり――そこで、ティナの魔法が入った。これこそ、修行によって得た力。十数本もの光の槍が一瞬で魔王を取り囲み、その体へと突き刺さった。


『ぐ――』


 逃げられない、と悟っただろう。魔王は即座に俺へ向け剣を構え反撃しようとした。まだ相手に勝ちの目はある。俺の攻撃が通用し滅びへ向かっているのは事実だが、終焉の魔王が持つ力をまともに受ければ俺の存在なんて一瞬で消滅する。

 だからこそ、俺は全身全霊で魔力を剣へ叩き込み、放った。魔王の剣が受けようとする。そして両者の刃がかみ合い、


 ――俺の剣が、魔王の剣を砕きながら再びその体躯へ斬撃を叩き込んだ。






 そこからの戦いは、一方的なものだった。


 倒れ伏した魔王を逃がそうと魔族や魔物が奮戦したが、俺とティナは迫る敵を片っ端から倒し始めた。そこへ仲間の援護が加わって数を減らしていく。一方で魔王は動かない。俺の剣戟によって滅びようとしているが、膨大な力を抱えているために多少猶予があるらしかった。


 魔族との交戦は、およそ一時間ほどで終わった。俺とティナ――修行によって得られた力で、とうとう魔族達をも捻じ伏せた。


「ちょっとヤバそうな相手だったが」


 殲滅が終わった後、戦友の一人が俺へ話し掛けてくる。


「ジークの剣でどうにかなったな」

「ああ……とはいえ、紙一重だったさ」


 全てがわかっていた状況ではあったが、何かの拍子に戦況が変わる可能性はあった。前回の戦いみたいにはならないにしても、大量の犠牲者が生まれていたはずだ。

 けれど、今回は怪我人はいれど犠牲者はゼロ……終焉の魔王を相手にしたのだから、奇跡的な戦果と言っていいだろう。


 とはいえ、この時間軸では終焉の魔王についてその恐ろしさが日の目を見ることはなく終わるわけだが……俺はボロボロになった終焉の魔王へ近づく。その体は既に肩から上しか残っていなかった。


「何か言い残すことはあるか?」


 魔王へ問い掛ける。仲間達は後方にいる。この会話が聞かれることはない。


『……貴様、どういう手品を使った?』


 そして魔王はそんな質問をしてきたので、俺は小さく肩をすくめ、


「手品、か。理由はわからないにしても、俺が何かしら裏技を使ったと考えたわけか。まあ、その指摘は正解だ。とはいえ、語るつもりはないな」


 肩をすくめつつ応じた俺は、逆に一つ質問する。


「魔王、お前の裏には力を分け与えた存在がいる……そうだな?」

『なるほど、視線を通し心を読んだか。ならばその存在が誰なのかはわかっているはずだろう。貴様の戦いは終わっていない。どうなるのか……冥界で、見させてもらおう』


 魔王が消える。戦いには勝利した……が、まだ終わっていない。戦友達が喜び合う中、俺はただ無表情に空を見上げたのだった。


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