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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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滅する戦い

「……そっか」


 ノーラッドから届いた書類に目を通したティナは、そう呟いた。


「ジーク……どうする?」

「まずは、終焉の魔王を打倒する手段を開発すること。これについては情報もあるから大丈夫だと思う」

「そうだね」

「残る問題は過去へ戻るか否か……俺達がいるこの世界が変わってしまうのであれば……」


 頭をかく。俺が未来へ転移し、ティナが封じられたことで……千年後の未来で俺達は顔を合わせることとなった。双方とも、オルバシア帝国が繁栄していた時からどうなったのか詳しくは知らない。だが、終焉の魔王……その存在がどこまでもついて回ったのは間違いなさそうだ。


「今いる終焉の魔王……それについては必ず倒す。その後どうするのかは……迷うところだな」


 俺はそこでティナと視線を合わせる。


「肝心の敵……幻影については?」

「動きはないよ。ただ、終焉の魔王について特性を知った時、いくつも疑問が出た」

「それは?」

「今復活した終焉の魔王を倒して良いのか」

「……どういうことだ?」

「終焉の魔王は滅んでも、復活してしまう……けれどこの屋敷に残された資料を精査すれば、対抗策はできる。ただ、幻影を倒したからといって本当に終わりなのかはわからない」

「また復活する可能性があると?」

「うん。この世界にはきっと、終焉の魔王に関する残滓がそこかしこに存在している。幻影が持っているだけじゃない。オルバシア帝国が研究していたことにより、世界各地に散らばっていると思う。そして」


 ティナは自身の胸に手を当てた。


「この私の体の中にも」

「ティナ……」

「ジークに助けてもらってだいぶ経つけど、消える気配はない……適切な手段でしか、終焉の魔王が持つ力は消せないんだと思う」

「それじゃあ……どうするんだ?」

「たぶんなんだけど、幻影を倒すことで下手をするとジークにまでその力が入り込んでしまうかもしれない」


 俺はその言葉に沈黙する……確かに、その可能性はゼロじゃない。


「終焉の魔王そのものではない以上、倒すことはできると思う。でも、もしジークが力を取り込んでしまったら? いずれ終焉の魔王になってしまうのなら……今度こそ世界が終わる」

「なら、どうするんだ?」

「過去へ戻る手段はあるのなら……もし、その方法に選択肢があるのなら、一つだけ終焉の魔王を完全に滅ぼせるやり方が存在する」


 そんなものが――驚愕している間にティナはさらに語る。


「その場合、幻影については無視することになるけど」

「……根絶するのに戦ってはまずいのなら、ここから引き上げるのも手だろ」

「そうだね」

「ただティナ、一つ疑問がある。俺は終焉の魔王を倒した。でも、力は取り込んでいないよな?」

「そこについては単純明快だよ。終焉の魔王は滅んだ後に、力を拡散することに気付いた」

「……それまでは、魔王として力を振るえば勝てると考えていたってことか」

「うん。滅ぼされたことでやり方を変え、千年後の今に至るまで生き残り続けた……この負の連鎖を断ち切るためには、最初の時点で決着をつけなければいけない」


 つまりそれは、あの最終決戦……その時に戻るということか。


「でも、戻れるのか?」

「肉体ごとではなく、意識だけならいけると思う」


 なんだか話が変わった方向に進み出したな……でも、この世界に終焉の魔王がいなくなる真の平和というものを目指す場合は、それしかないのか。


「記憶だけ引き継いで、俺が本当に滅ぼせるのか保証はないぞ?」

「そこはジークの頑張り次第だね」

「……ティナはどうする?」

「意識だけ戻れるのであれば、私も戻るよ。封印されるなんてことは絶対にないようにしたいね」

「そうだな……」


 結論に至った。ならばと俺は、


「それじゃあここまで来たけど……もう少し資料を読んでから、ノーラッドの所へ戻るとするか?」

「うん……でもここに来なければこの結論は得られなかった」

「そうだな……まずはアゼルの子孫に礼を言わないと」


 ――そして、俺達はフェリアと顔を合わせる。今後の方針についてまずはもう少し資料を精査。その後魔王を倒すためにもう少し旅を続ける言うと、彼女はそれに頷いた。


「どうぞ、ご自由にしてください」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 俺とティナは礼を述べ、再び資料を向き合うことにした。






 それから十日後、俺は新たな技法を体得して旅を再開した。今までは終焉の魔王を打倒するためにここへ来たが、今度はこれまでの旅路を逆走することになる。

 とはいえ、戻るのはここへ来たときよりも早いだろう――その予想通り、旅は順調に進んだ。そして想定よりもずっと早い日時でノーラッドがいるエルフの里へと戻ってきた。


 まず、俺達はオルバシア帝国が残した情報を見て、終焉の魔王に関する真実に出会ったことを報告。次いで今後どうするのかを伝え……ノーラッドは、深々と頷いた。


「意識だけを……その可能性は考慮していました。手法については検証が必要ですが、不可能ではありません。そうですね、一ヶ月……それだけください」


 彼の言葉に俺もティナも頷き――終焉の魔王を本当に滅する戦いが、始まった。


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