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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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索敵魔法

 過去へ戻るという魔法の調査とティナの武器開発……それを同時並行で続け、後者の目処が立ったのはエルフの里に滞在して十日後のことだった。最強の魔法使い――そんな称号を持つに至った彼女が使う以上は、とノーラッドは相当気合いを入れて作成したらしい。


「ティナ様が持っていたのは、それこそオルバシア帝国が技術を結集して作り上げた杖でした」


 と、完成した杖を差し出しながらノーラッドは語る。


「それに比肩している物かと言われると自信はありませんが……個人的な今できる限りのことはしたつもりです」

「ありがとう」


 礼を述べながら杖を受け取るティナ。その見た目は木製でありながら、活力に満ち淡い魔力を湛えていた。


「うん、十分過ぎる一品だと思う。これならいけそう」

「なら早速、索敵だな。ただ大陸中の調査をする以上は、それなりに準備をしないといけないか?」

「そうだね。魔力を発する魔法だし、エルフの里の中で使うと察知されて怪しまれるかも」

「なら、里を出るとしようか」

「――お二方が滞在した部屋は残しておきます」


 そうノーラッドは俺達へ述べる。


「いつでも戻ってきてください。それと、使い魔を用いて定期的に連絡はしましょうか」

「そうだな。過去へ戻る魔法についても進捗を聞きたいからな」


 ――そうして俺とティナはエルフの里を離れた。森を出るとティナの足は山の方角へと向けられる。


「どこへ向かう?」

「人がいなさそうな場所に」


 彼女の言葉によって、俺達は再び山へ足を踏み入れることにした……その道中で俺は改めて今後のことを話し合う。


「ノーラッドは幻影と呼んでいたが……オルバシア帝国の崩壊について、奴が情報を持っているとは思えないけど……何か、糸口になるようなものは見つかるかもしれない」

「幻影との戦いによって、何かしら手がかりが出るかもしれない、と?」

「あくまで可能性の話だ……ただまあ、千年前の出来事である以上、果たしてどこまで真相を追うことができるのか」


 いや、そもそも情報が得られるのか……? そんな疑問も掠めたが、今はとにかく前進あるのみだった。


「ま、今は幻影を見つけ出して倒すことが優先だな」

「そうだね」


 頷くとティナ。彼女と共に、俺は旅を再開した。






 やがて山へと入り、人気の無い場所に到達するとティナは準備を始める。彼女が魔法陣を描いて魔法の準備を始める間に、俺は野営をする準備を始める。こちらが全て作業を終えた時、ティナもまた準備を終えた。


「それじゃあ、始めるよ」

「ああ」


 俺の返事と共に彼女は――魔法を行使する。といっても魔力が満ちるような魔法ではなかった。彼女から発露した魔力が一瞬で拡散した……表現するなら、そういう感覚であった。

 あとは彼女の能力と魔法によって見つけ出せるのかどうか……俺は黙って見守るしかない。しばらくの間、鳥のさえずりから始まり森の中で発生する様々な音に耳を傾ける……穏やかな光景ではあるのだが、その中で唯一ティナだけが魔力を発露し意識を集中させている。


 俺は念のため周囲を見回す。魔物の気配は皆無。魔王ザロウドも滅んだことで、この大陸は見かけ上脅威は去った……はずである。

 とはいえ、幻影と俺達が呼称した存在が暗躍しているのは確実であり、現在進行形で力を付与している可能性だって考えられる。


 あるいは既に力を渡した存在がいて、まだ表立って動いていないか――


「……終わった」


 やがてティナが呟いた。時間にしてものの数分。俺は少し驚きつつ、


「もう? ずいぶんと早いな」

「そういう風に魔法を組み上げたからね」


 ……もしかすると、杖を作成している間に色々と考えたのかもしれない。


「ひとまず大陸内に幻影の力はないね」

「本体の姿もなしか?」

「終焉の魔王……その力については今のところない」

「ふむ、だとすると敵の本体はそもそも大陸にいないという可能性もあるのか……」


 こうなると非常に面倒だが……。


「幻影の居場所とかわかればいいんだが」

「もう少し時間を掛ければ、割り出せるかも」

「……そういう魔法もあるのか?」

「うん。けど時間は掛かるよ。世界中を調べるわけだし」


 そもそも世界中を調べるのに時間が掛かるだけで済んでしまうのも恐ろしい話ではあるのだが……。


「わかった。試してくれ」

「うん」


 頷くと再びティナは作業を始める――その間に俺は、これからのことを考える。


 もし幻影のいる場所がわかればそこへ急行する。見つからない場合は、色々な場所へ赴き終焉の魔王に関する気配……それを探して情報を集めるしか無いだろう。

 後者は長期戦ではあるが……それに、俺達の対応が遅れると甚大が被害が出る危険性がある。可能であれば動き出す前に対処したいが、敵の居場所が世界のどこかわからない以上は後手に回っても仕方がないか――


 色々と思案を巡らせる間にティナの魔法が終了する。時間が掛かる、という割にはやはり早い……と思っていると、彼女が口を開いた。


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