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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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過去を変える

 ティナの杖を作成する間に、俺はエルフの里に存在する歴史資料を漁ることにする。人間の町で購入した本よりも詳しい歴史が載っているが、無論のことオルバシア帝国崩壊の原因に繋がった帝都壊滅については何一つ情報がない。


「生き証人が、いないということか……」


 よっぽどのことが起きたのだろう。やはり終焉の魔王に関連することだろうか。

 もし俺が千年後に来るようなことがなかったら、未然に防ぐことができたのだろうか? そんな疑問を一瞬掠めたが、すぐに首を左右に振る。未来で起きることなんてわからない。千年前を生きていた俺では、止められなかっただろう。


「でも、今なら情報を集め対応できる……のか?」


 先日遭遇したアゼル――奴の目的は不明だが、間違いなく終焉の魔王の力は残っている。であれば、その力を悪用した誰かが……あるいは、ティナへ付与したように魔王の力を研究していて暴走したとか? なんとなく、こちらの可能性の方が高そうだな……。

 そうした理由が明確となったら、俺が過去に戻った際に解決できるだろうか……問題は、俺が過去へ戻って過去を変えると、今いる現代はどうなるのか。そういえばノーラッドもそのことについて言及していたな。


「変える、というのはまずいのか? それとも、いくら変えても未来は何も変わらないか?」


 色々と可能性はあるけど……俺はなんとなく思い立ち、ノーラッドへそのことを尋ねてみた。すると、


「可能性としては二つでしょうね」

「二つ?」

「一つは、現代の改変。オルバシア帝国は既に消え失せ、既に影も形もありませんが、ジーク殿が過去へ戻り崩壊を防げば、オルバシア帝国が存続している状況に変化するかもしれません」

「……ノーラッド達からすれば、現状が変わる以上たまったものじゃないな」

「かもしれませんね。しかし、私達の意識まで心配する必要性はないでしょう」

「どういうことだ?」

「この仮定の場合、おそらくジーク殿が過去へ戻った瞬間、私達の営みそのものが否定されることになり――別の未来へと変わる。そこに苦痛などはなく、一瞬の内に変化することでしょう」

「……つまり、過去を変えることで意識が瞬時に変わってしまうと」

「ええ、もしかすると大陸のありようなども変わる……帝国が存続するならば当然でしょうね。帝国崩壊によって生まれた命もあるでしょうから、そうした人々もまた消え、代わりに帝国が存続したことによって生まれた命が大地に根付く」


 俺はその話を聞いて無言となる。過去を変える――言葉では簡単だが、その影響は甚大だ。正直、俺一人でどうにかできるような……いや、していい問題ではないように思える。


「この可能性の場合、少なくとも現在の世界とは姿を変えるでしょうね。ただ意識も記憶も変化するでしょうから、気に病む必要はないと思いますが」

「そういう、ものか……?」


 疑問ではあったが、ノーラッドは頷いた。正直、納得しきれる話ではないのだが。


「そしてもう一つの可能性ですが、私達の世界に変化はなく、平行世界……別の世界線の中に、帝国存続の未来が描かれる」

「別の……?」

「私達の世界においては別の世界線……平行世界というものが存在しています。これはまあ、時空関係の魔法による検証でおぼろげにわかったことなのですが、例えばジーク殿が魔王ザロウドを倒した世界と、倒さなかった世界……そういう様々な可能性が存在し、同時並行で世界は進んでいます」

「なんだか複雑な話だけど……」

「完全に理解する必要はありません。私が言いたいのは、ジーク殿が過去へ戻って歴史を変えても、私達には影響がなく、別の平行世界が生まれそちらに影響する、という話です」

「その場合、この世界に影響はなし?」

「まあそうですね」


 そんな都合良くいくのだろうか……などと考えてしまうが、ノーラッドは笑みを浮かべる。


「個人的には後者である可能性が高いかと。ただこの場合、過去を変えても現実は何も変わらない、という悲しい事実に行き当たりますが」

「……とはいえ、前者である可能性も否定はできないんだろ?」

「ええ。けれど、ジーク殿は真実を知りたいと考えているでしょうし、何よりオルバシア帝国を救いたいと考えている、でしょう?」


 ……俺は黙ったまま頷いた。確かにそこについては間違いない。


「であれば、ジーク殿はジーク殿のしたいようにすれば良いかと思います」

「そんな気軽に言っていいものなのか?」

「私自身、気にしていても仕方がないことだと思っています。まだまだ時空関係の現象については未解明な部分も多いですしね」

「……最大の問題は、本当にそうした魔法があるのかということだけど」

「そこについては調査中です。まあ今は、アゼル皇帝の顔を持つ存在……幻影とでも呼びましょうか。その幻影を追うのを優先しましょう」


 俺はそこについては深々と頷いた。優先的に解決しなければならない問題。そこについては間違いなかった。


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