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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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30/56

実験

 俺達はずいぶんと尊大かつ、幅の広い廊下を進んでいく。魔法の明かりに照らされた魔王ザロウドの居城内は、装飾過剰とまではいかないにしろ、豪華絢爛という言葉が似合うような内装ではあった。自らの手でこれを作り上げたとなったら、相当こだわりがあるように見受けられる。


 で、そんな魔王の姿はどうなのか……俺とティナはとうとう玉座の間を訪れる。そこにいたのは、既に大剣を携え俺達を見下ろす魔王の姿があった。


「お望み通り来てやったが」


 声を発しつつ俺は魔王を観察する。燃えるような赤い髪を持つ御仁であり、精悍な顔つきは三十代半ばくらいに見える。


「ここまで招き入れるってことは、それなりに自信があるってことでいいのか?」

「貴様達を倒すために、か?」


 ザロウドは魔力を発する。そこには間違いなく終焉の魔王……その力が宿っている。だが当然、本物とは比べるべくもない。


「勝負はどうなるのかは実際にやってみなければわからないな」


 そう語りながらも、表情は自信に満ちている……ここまでの攻防で俺とティナの実力をつぶさに観察できた、という風に解釈したのだろうか。

 実際のところは……俺は剣を構える。こちらが臨戦態勢に入ったのを見計らい、ザロウドは笑みを浮かべる。


「では始めるとするか……とはいえ、互いに長期戦などやりたくはないだろう……勝負は、一瞬で決めるとしようか」


 魔力を噴出するザロウド。建物が鳴動し、ザロウドの気配が一層濃くなる。

 そうした中で俺は、ある事実に気付く。気配を探ってみて……城内に魔物や魔族の気配がほとんどない。いや、皆無と言っていいかもしれない。


 先ほど攻撃を仕掛けてきた魔物や魔族で全てだというのか……疑問に思っているとこちらの表情に気付いたらしい魔王は、


「不思議がっているな、城の規模と比べ妙に配下の数が少ないと」

「……何か理由がありそうだな」

「貴様らのことは既に知っていた。圧倒的な力……それによって魔王レゼッドを叩き潰したことも」


 やはり、どこからか情報が……。


「故に、こちらも相応の手段を取る必要があると考えた」

「……元々お前は、誰かから力をもらった」


 俺は剣を構えながらザロウドへ告げる。


「そいつから情報を得て備えをしていたというわけか」

「いかにも」

「お前に力を与えた存在について、教えてはくれないか?」

「素性は知らんが、単なる人間に見えたがな」

「……人間に、力を与えられて凄んでいるのか?」


 問い掛けにザロウドは表情を崩さない。


「力は単なるきっかけに過ぎないと私は考えている。要はどのように扱うのか……どうやら力を私に託した存在は、上手く利用できないらしいからな」

「なるほど、魔族に力を付与して色々と実験しているというわけか」


 仮に力を与えた存在が人間だとすれば、終焉の魔王の力がどのように作用するのか……そういったことを調べている、ということか。

 ではなぜ力を与えた存在は――色々と疑問は出てくるが、まずは目の前にいる魔王だ。


「で、お前は俺達のことを知り……力を与えた配下を吸収したのか」

「その通り。入口を守っていた者達は一応残していた配下だ。それなりに力を持っていたからな。貴様達がどこまで戦えるかを調べていたわけだ」

「で、調査は十分だとして自らの手で、というわけか」


 俺は魔力を発しない。こちらが意図的に力を隠していることは魔王ザロウドも気付いているはずだ。しかし、


「そうだな……では、終わらせよう。この力を使い、私は世界を支配する」


 魔王が動く。一気に間合いを詰めた魔王に対し俺は剣に力を込める。

 間違いなく勝負は一瞬……魔王ザロウドは勝利を確信し間合いを詰めた。おそらく、俺達が意図的に力を隠しているにしても、こちらの力には及ばないという推測をしているのだろう。


 果たして――俺は剣を振る。直後、その刀身に終焉の魔王を打倒した力――それを全力で乗せる。

 魔王ザロウドは一瞬驚いた顔を見せた――そして、俺の剣がどういうものなのかを、深く理解したらしい。


「き――」


 貴様、とかそういう言葉を発しようとしたのだろう。けれど声は続かなかった。攻防は魔王の言うとおり、一瞬で終わった。魔王の刃は俺へと届くことはなく、俺の剣が、魔王の体を薙いだ。

 それで勝負はついた。魔王ザロウドは俺へ刃を決める寸前の体勢で固まり、


「……馬鹿な……何故だ」

「単純な話さ」


 俺は極めて冷厳に告げる。


「単純に力で、俺が上回っていた」

「――が、あああああっ!」


 魔王ザロウドが消える……まだ何一つ事を成していない、惨めな魔王の消滅だった。

 とはいえ、もし大々的に動き出していたら心底ヤバかっただろう……俺は息をつく。次いで、


「……魔族や魔物がいないのであれば、力を渡した存在について調べられるかもしれないな」

「そうだね」

「――その必要は、ないよ」


 その声は、玉座の方から俺達へ向け放たれた。


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