難攻不落の城
俺とティナはその後、魔王ザロウドが本拠としている場所へ向かうべく準備を始める。とはいっても、たった二人で行動するため大層な物資は必要がない。
「問題は配下とかにも力が付与されていて、逃げられる可能性だよな」
「まあ色々と方法はあるけど」
ティナが俺へ告げる。それは何かと尋ねてみると、
「使い魔を遠隔で操作し、城を包囲しておくよ」
「……退路を断つほどの使い魔だぞ?」
「そのくらいなら、まあ」
そういえば彼女、使い魔生成で時に千を優に超える存在を生み出していたな……。
「わかった。ならその方法で頼む。ただそれを生み出す場合、戦うことはできるのか?」
「遠隔操作による命令ならどうにか……でも、さすがに全開で魔法を使うというのは難しいかな」
「なら俺が前に立ってひたすら敵を倒し続けるというわけか……」
それでもまあ別にいいか……別に敵を侮っているわけではないけれど、俺はそれをやる自信がある。
そんな会話をしつつも準備については余念なく……やがて俺達は魔王ザロウドがいる山岳地帯へ向かうべく歩を進める。
色々と情報収集をしていたのだが、ザロウドはずいぶんと慎重派なのか動きがまったくない……魔王がいる居城でもっとも近い町へ入ったのだが、警戒はしているにしろ町への被害などもない……酒場などで確認してみるが、出現はしているが攻撃してきたことはないらしい。
「国の調査でいつの間にか城ができていたらしいよ」
酒場の店主はそう告げる。
「魔物の侵攻とかもないから、正直魔王がいるって自覚がないんだよな」
……どこか牧歌的な雰囲気さえ見受けられる町だったが、どうやら現実感がないことが要因らしかった。確かに魔王は出現したけど魔王レゼッドのように実害がない限りは、本当にいるのかと疑ってしまうくらいだろう。
むしろ魔王ザロウドは密かに城を建造してギリギリまで姿を見せないつもりだったのかもしれない……が、その目論見は崩れ去ったか。
俺はティナと話し合い、翌日には行動開始をすると決めた。一つ懸念があるとすれば、俺達の存在を知っているのかどうか。
魔王レゼッドとエルフのツェイル……俺達は出会って即座に倒した以上、俺とティナの存在を把握しているとは考えにくい。
ただ、力を与えた存在が情報を提供するなら話は別……不安要素ではあるのだが、さすがにそれを恐れて攻撃をしないわけにはいかない。
魔王ザロウドの能力が魔王レゼッドと比肩しうるものであれば、おそらく対抗できる存在はいないかもしれない……俺達だけが、倒せる相手である可能性は高い。
終焉の魔王という存在がどれほど強大であるかを改めて認識させられる事実ではあるのだが、そうであったらむしろザロウドが動いていないことは幸いと言える。被害が出る前に対処する……決意し、俺達は町で一泊した。
翌日、俺とティナは山岳地帯へ踏み込んだ。二人であるため移動速度はかなりのもので、あっという間に奥へと踏み込んでいく。ティナが山の麓で使い魔を生みだし、それを山岳全体に広げるように展開することで、敵の動きを捉えながらの移動であった。
「ティナ、動きはないか?」
「今のところは」
ふむ、ザロウドは気付いていないのだろうか? 疑問はあったが俺達は突き進んでいく。そうこうしている内に城塞を見つけ出した。あれが間違いなく魔王ザロウドの城である。
「結構強固だな」
「使い魔で調べた限り、相当防備を固めているね」
ティナの発言により、防御は盤石と言えるかもしれない……人間の軍があの城を攻略しようにも、まずここまで来るのが大変であることに加え、士気を維持しながらあの城塞を突破しなければならない。城門を抜けるだけでも相当なリソースを消費することだろう……平地でさえ攻略が難しそうな城塞なのに、さらに攻めにくい山奥である。もはやあの城は絶対に陥落することはない、難攻不落の城と言ってもいいだろう。
あれを攻略するには、魔王に比肩する実力を持った存在でなければ厳しいだろう……俺とティナはどんどん近寄っていく。使い魔もさらに展開して厚みを増す。敵側はこの動きに気付いている可能性は高いが……それでも城の周辺に動きはない。
使い魔の気配は感じ取れるはずだが……明らかに罠の気配だが、俺達は足を止めなかった。さらに歩を進め、とうとう俺達は城門が見える位置に到達する。
岩陰に隠れて様子を窺うのだが……門番らしき魔物はいる。だがそれ以外には誰もいない。
「……正面突破でもよさそうだけど。ティナ、使い魔の展開はどのくらいやっている?」
「既に城は取り囲んだよ。少なくとも魔王やその配下は外に出ていない」
「籠城するつもりなのか……? 使い魔の数を見て警戒したか?」
数を考えれば大軍勢がやってきたと考えてもおかしくはない。であれば索敵などを行ってもおかしくはないが……そういう動きもない。
何か思惑があるのか……とはいえ、ここまで来た以上は戦う。俺は決断しティナへ目配せした後、城門を向け走り出した。




