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変質

 この場における者達は全員、瞬時に理解したことだろう。すなわち、勝負は一瞬で決まると。

 それは間違いなく真実であり、迫るツェイルの部下達は迎え撃つ俺とティナへ突き進み……同時、俺達の攻撃が放たれた。


 俺の方は単純な斬撃であり、ティナの方は極めて単純な光弾。といっても着弾したら爆発するような仕様ではないだろう。なおかつ誘導式で狙った相手に当たるまで止まらない……見た目はシンプルな俺達の攻撃。ツェイルの部下達は、突破できると判断して腕をかざした。

 俺の斬撃とティナの光弾を腕で押しのけてこちらへ差し込むということだろう。もしエルフの攻撃であればこれは成功し、そのままこの場を制圧していたはずだ。ノーラッドなんかもこうなることが間違いないとして、危惧していた。


 だが、今回の結果は……俺の斬撃とティナの光弾。その二つがツェイルの部下へ叩き込まれ、相手は腕で弾き飛ばそうとした……が、俺の剣は容易く腕を両断し、光弾は腕そのものを破壊した。


「……あ?」


 その声は、俺の真正面にいた部下のものだった。刹那、俺達の攻撃が易々と相手に叩き込まれ、逆に吹き飛ばされた。そして空中で塵と化していく……終焉の魔王に関する力を僅かでも受ければ、限りなく魔物に近い性質となってしまう。

 つまり、もはやエルフと呼ぶのは……消滅していく光景を見て、エルフ達の間にどよめきが広がる。


「既に、魔物のように体が変化しているというわけだ」


 俺の発言を受けて、後方にいたエルフ達が騒ぎ出す。もはや魔物同然となってしまった。ツェイルもおそらくは……ならば、族長になど――


「貴様……」


 計画を崩されたという事実から、ツェイルが俺とティナをにらむ。怒りに任せて攻撃してくるかと思ったが、相手は動きを止めた。


「族長候補さん」


 その間に俺は、後方にいるツェイルの対立候補へ呼び掛ける。


「ツェイルは部下と同じように既にエルフという種族そのものを辞めてしまっているようだ……このまま倒しきるか? それとも捕まえるか?」

「……もう手に負えるような存在ではないようだな」


 と、諦めにも似た声が、族長候補から漏れた。


「終わらせてくれ」

「わかった」


 ツェイルが動く。それに対し俺とティナは同時に動き……斬撃と光弾が突き刺さった。


「が――」


 それは紛れもなく致命傷であった。確かに力を与えられたようだが、その量は魔王レゼッドと比べても少ない……魔族と比べ、抱えられる魔力量は少ないということなのだろう。

 結果、俺とティナならば容易に対処できるくらいであった……ツェイルもまた消滅する。そうして短い戦いが終わり、エルフの里における騒動も終結することとなった。






「本当に、感謝致します」


 頭を下げるノーラッド……場所は彼の屋敷。新たな族長候補が正式に決まり、俺とティナは再び彼と話をすることとなった。


 ツェイルの一件については、公的な理由としては禁術に手を出して魔物と化したというものとなった。誰かに力を与えられた……その事実を公表して主犯者を調べようとしたら、他ならぬその主犯者にエルフの里が目を付けられる可能性があると考え、もっともらしい理屈で煙に巻くことにした……これはノーラッドの判断だ。終焉の魔王に関する力……野放しにはできないが、それを相手に戦うというのは極めて危険だと判断し、知らないフリをすることにした。


 それに対し俺は無難な答えだと感じた。現状、エルフの里に終焉の魔王に抗える力はない。主犯者を刺激しないように動くのは、当然のことだ。


「本来なら、ツェイルに力を与えた存在について調査すべきですが……」

「やめておいた方がいい。密かにやるにしても相手は終焉の魔王……その力の残滓だ。下手に藪をつつくと蛇どころか悪魔が出現しかねない」


 俺の言葉にノーラッドは無念そうな表情を浮かべつつ、小さく頷いた。


「それで、ジーク殿は……」

「旅を続ける。ただ俺の目的は話したように過去へ戻ることだ。それに手を貸して欲しいけど」

「そこについてはお安いご用です。まあ、過去へジーク殿が戻った場合私達はどうなるのかという疑問はありますが……」

「……ノーラッドはどう考える?」

「色々な可能性があるため、はっきりとしたことは言えませんね。今の時代は影響を受けるのか、あるいは……」


 と、ノーラッドは一考した後、


「いえ、今話すべきことではありませんね。ともあれ過去へ戻る方法、これについては調査致します」

「ありがとう。なら俺は終焉の魔王……その力を与える存在を追うことに注力できるな」


 名声を得て情報を得る、という点についてはノーラッドと顔を合わせたことで問題はなくなったと言っていい。ならば俺は、終焉の魔王に関する敵を倒すことを優先すべきだ。

 それはきっと、なぜオルバシア帝国が崩壊したのかという答えにも繋がる……そんな気がしている。どちらにせよ放置はできないし、俺が果たすべき役目だと思う。


「ジーク殿はこのまま魔王ザロウドの下へ?」


 ノーラッドの問い掛けに対し、俺は深々と頷いた。


「ああ。今はまだ動きがない……なら、機先を制する形で動いて方がいいだろう――」


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