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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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首謀者

 俺と魔王の攻防は、文字通り瞬きをする程度のわずかな時間で行われた。俺もまた相手の剣に応じるように一閃する。

 そして勝敗は――まず俺の剣が、魔王の剣をしかと両断、破壊する。


「……あ?」


 疑問の声を告げた魔王に俺は容赦なく追撃を仕掛けた。切り返しの一撃が剣を持つ魔王の右腕に触れ――切り飛ばす。


「が……ああああああっ!?」


 わけもわからず叫ぶ魔王。俺はすかさず今度は左膝を狙い剣戟を見舞う。相手は防御しているはずだが、俺の剣は紙でも斬るように容易く両断することに成功した。

 魔王はバランスを崩して仰向けに倒れ込む。終焉の魔王の力を持っているなら再生だって余裕だろうが、そんな余裕を与えることなく俺は魔王レゼッドの首筋に刃を突きつけた。


「痛みはあるだろうが、喋ることはできるだろ? これ以上苦痛に苛まれたくなかったら、話した方がいいぞ」


 膨大な魔力がなおも渦巻く中で俺は告げる。魔王は何も答えない。自分の身に起きたことを理解できない……なおかつ痛みがあり困惑しているという感じか。

 とはいえ、俺は攻勢の手を緩めるつもりはない……と、魔王のピンチであると認識したらしい配下の魔族達が、魔法を放とうと動いた。俺はもちろんそれは把握したが、動かないまま魔王を見据える。


 なぜなら――魔族達が魔法を放つより先に、ティナが動いたからだ。


「――穿て、精霊の刃!」


 放たれた魔法は極彩色の剣。それが高速で放たれ、相手が攻撃するより先に、その頭部を撃ち抜いて滅ぼした。


「もう一度問うぞ。その力、どこで手に入れた?」


 再度魔王レゼッドへ問い掛ける。それと共に俺は体に内にある魔力をわずかに露出させる。俺は人間なので、目前にいる魔王のように膨大な魔力を噴出して威嚇するようなことはできない。だが、間近にいる相手になら……俺の魔力を感じ取った魔王は、顔を引きつらせる。


「何だ、その力は……!?」

「お前が持っている力に対抗するためのものだよ。もう一度質問するぞ、その力はどこで手に入れた?」


 魔王は何も答えない。誰かから力を提供されて喋れないよう制約でもあるのかと思ったが……魔王がその辺りのことを話さない限り答えが出ないので、現状を維持する。

 さて、相手はどう出るか……とはいえ魔王はまだ抵抗するつもりだった。切り飛ばされた右腕と左足を再生するべく魔力を集めようとして――俺はそれよりも先に剣を振り、右肩と左足の付け根に刃を通し、切り飛ばす。


「がああああっ!?」

「お前が再生するよりも俺が剣を振る方が速いよ。なおかつ、俺の剣はあんたがどう防御しても確実に通る」


 その言葉の瞬間――魔王は痛みを忘れたかのように表情をなくした。それはまさしく、死を確信した時の絶望。


「馬鹿な……なぜ、貴様……」

「エリュテ王国の人達にとって、お前の出現はそれこそ不運以外の何物でもなかっただろう。精鋭部隊が全滅ではなく捕虜にされてしまうだけの実力者。それこそ、自然災害と同義の出来事に違いない」


 俺は淡々と、感情を殺すように語る。


「お前は国を滅ぼせる存在だった……が、俺が現れたことにより覆った。そうだな、お前もまた、不運に見舞われた。ただそれだけの話さ」


 魔王は何も答えないし動かない。ただ俺を凝視し……けれどその表情が苦悶に満ちたものへと変わっていく。


「苦痛が広がっているだろ? まだ抵抗するか? 話してくれたら終わりにするが――」


 提案する間にも動こうとしたので今度は右足首を両断。それで再び魔王は声を上げる。


「どうする?」


 そして俺はさらに魔力を露出させる。それは魔王にしか感じることができない程度のもの。けれど、どうやら理解したらしい……エリュテ王国の精鋭部隊は魔王に勝てないと絶望しただろう。だが今度は他ならぬ魔王が、絶望を感じる番だった。


 だからなのか……魔王はとうとう話し始めた。


「……名前は、知らぬ。ただ放浪している私に、力が欲しいだろうと渡してきた。それだけの話だ」


 嘘は、言っていないだろうと俺は直感する。


「容姿は?」

「わからん……白いローブにフードまで被っていたからな。声音は男のようだったが、得体の知れない気配を持っていた以上、容姿が当てになるのかも……」

「なるほどな、そいつから力をもらって、この砦を建造したのか」


 魔王の表情がさらに苦痛に染まっていく。限界が近いかな?


「何か最後に、言い残すことはあるか?」

「……私がより力を使いこなせていれば、貴様など――」

「そうかもしれないな。だが力を得て増長し、俺へ向かってくる未来は変えられなかった。勝負は決まっていたさ」


 ヒュン、と風切り音が一つ。それで魔王の首が胴体から離れ……消滅した。


「これで終わり、だな。さて、牢屋にいる精鋭部隊を解放して終わりか」

「どう説明する?」


 ティナが質問してくる。そこで、


「砦に人がいるとわかった時点で決めたよ。俺達二人は誰もいなくなった砦に忍び込んだってことにする」

「え? なら魔王は――」

「どこかに行った、という説明になるな。さすがに精鋭部隊でさえ歯が立たなかったのに俺達二人で倒したなんて言っても、彼らには荒唐無稽だろうからな」

「でも魔王がどこかに行ったというのなら、エリュテ王国の危機は去っていないという説明がいるよね?」

「そこだよ、問題は。魔王を倒して終わりというわけではなさそうだからな」

「……さっきの、力を与えた存在のことか」

「そうだ」


 彼女の言葉に俺は深々と頷いた。


「何者かわからないが、終焉の魔王の力を所持しているのは確定だ。遺跡から取り出して魔族に与え実験でもしているのか、それとも……理由はわからないが黒幕がいるのは確定。そいつを倒さない限り、危機はいつ何時起きてもおかしくない。それに」


 俺は魔王が消滅した広間を見回しながら続ける。


「ティナと出会う前、俺は魔物の群れを駆逐した……それが魔王レゼッドのせいなのか、あるいは他に何か別の差し金か……裏があることは間違いないから、エリュテ王国には警戒していてもらおう」

「そういうことなら私も賛成するよ」

「よし、後は残党だけだが……残っている魔族は何をしている?」

「動いていないね。魔王が消えて警戒しているのかも」

「そいつらを倒さない限り終わらないか。なら、倒して回るか」

「ん、わかった」


 返事を聞いて俺とティナは移動を開始する。そして残る魔族達を倒しにかかった。






 残党については、およそ十五分ほどで撃破することに成功した。全力で逃げるかと最初は思ったのだが、相手は退くことなく俺達に襲い掛かってきた。

 配下は全て魔王から力を与えられていたことで、それなりに忠誠心があった様子。その全てを俺とティナは倒し、ようやく砦は沈黙した。


 そしてエリュテ王国の精鋭部隊を救い出す前に、もう一つやっておくことがあった。それは砦にある研究資料などの確認。魔王の力について調べたとか、あるいは魔王自身が力を受け取った相手について調べていないとか……手がかりを求めてみたが、そういう資料は見つからなかった。


「会話をした様子だと、もらった力だと魔王は語っていなかったみたいだし、情報はなさそうだな」

「みたいだね。問題はその力を渡した相手がどこにいるのか……」

「たぶんそいつは魔王レゼッド以外にも力を与えていると思うから、とにかく終焉の魔王の気配を頼りに探すしかないな」

「……戦う、つもりなんだよね?」


 確認するように問い掛けるティナ。それに俺は、


「当然だ……あの力がどれだけ危険なのかはティナもよくわかっているはず。それが、千年後まで残っている……もしかするとオルバシア帝国崩壊に繋がっているのかもしれない。だから、首謀者を見つけ出して倒す」

「わかった。私も、全力で協力する」


 ティナの言葉に俺は頷き返し……俺達は、エリュテ王国精鋭部隊の所へ向かうことにした。


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