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覇業の大地~未来転移から始まる無双戦記~  作者: 陽山純樹


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光の魔法

「お疲れ様」


 魔物や魔族を倒した直後、ティナは近づき俺へ呼び掛けてくる。


「大丈夫?」

「ああ。能力はちゃんと使えている。問題ない。このままの状態を維持して、魔王のところへ向かおう」


 周囲を確認。一挙に敵を倒したわけだが、増援の気配はない。

 あるいは、警戒しているのだろうか? まあ敵が出方を窺っているのなら好都合。このまま魔王の所へ向かうとしよう。


 俺達は砦の中へと入る。外観とは異なり、内装は砦というより王城のようだった。

 そして通路奥、真正面に両開きの扉が。あそこから魔力を感じ取れるし、魔王がいるのは間違いなさそうだ。


「よし、それじゃあ――」


 と、言いかけたところで通路からわらわらと魔族が出現した。さらに言えば多数の魔物を伴っており、


「貴様ら、何者だ――!?」

「ジーク」


 叫ぶ魔族の発言を遮るように、ティナは俺へと発言する。


「ここは私に任せてくれない?」

「どうするつもりだ?」

「さっきの戦いを見て私も触発されたというか……この辺りで私の魔法についても検証しておきたいな、と」

「わかった」


 立ち位置を入れ替える。思わぬ行動に魔族達は訝しげな視線を送りつつも、


「奴らを、殺せ!」


 魔物に号令が掛かった。直後、ティナは右手を魔物達へ突き出した。


「――出でよ、光竜の残滓!」


 手の先から魔力が溢れ、彼女の真正面に金色の魔法陣が形成された。魔族達はそれに一瞬警戒した様子だったが、それでも魔物へ命令を下して、大量の敵が押し寄せてくる。

 砦の入口は広いが、迫る魔物はこの空間を埋め尽くすほどの数。それをティナはどう対処するのか――


 魔法陣が、光り輝いた。同時、魔力が発せられ――それは砦のエントランス内の空間を震わせ、きしませるほどの影響を及ぼす。

 力の大きさは、魔族を震撼させ魔物が声を上げ立ち止まろうとするほど。近寄ってはならない――本能がそうやって警告してしまうほどの、濃密な魔力。


「き、貴様――!!」


 魔族が何事か叫ぼうとした矢先、ティナの魔法が発動した。途端、俺の真正面に生まれたのは魔物の姿をかき消してしまうほどの、圧倒的な白い光。俺はこの魔法を何度も見たことがあるため、それが何なのか理解できていた。あれは、光の矢だ。それが想像を絶するほどの数密集し、光の壁のように形成されているのだ。


 刹那、魔物が迫ろうとする中で彼女の魔法が炸裂する――室内にもたらされたのは、広間を見えなくするほどの光の奔流に圧倒的な爆発音。密集した光の矢は着弾すると弾け魔力が飛び散る仕組みになっている。これにより魔物の動きを阻害して、後続の敵を足止めする効果があるのだが……正直、そんな副次的な効果は意味がないようだった。


 なぜなら――光が消える、目前に見えた光景は……先ほどまで存在していた魔物や魔族が、跡形もなく消え失せていた。


「相変わらず無茶苦茶な魔法だな……」


 苦笑混じりに俺は言及。しかしティナはそう思っていないようで、


「魔力の練りが甘いね……杖なしでも以前の私ならもっと上手く扱えたはず」

「腕が鈍っているのか?」

「そうだね。封印によって私の体は千年前とほとんど変わっていないけど、終焉の魔王が持っていた力を入れられて、魔力制御が上手くできないのかも」


 彼女の方は、全盛期の力を取り戻すのに時間が掛かりそうだな。いや、そもそも終焉の魔王の影響を受けていたことを踏まえると――


「魔法使うことで体に影響とかはでないのか?」

「今のところは……だけど、体に残る魔王の魔力で何が起きてもおかしくないし、注意は必要かな」

「魔王の影響を完全に消した方がいいのか?」

「時間が解決してくれると思うし、ジークが気を揉む必要はないよ」


 ……他ならぬ彼女が言うのだ。俺はそれ以上の言及は避けた。


 で、状況を確認する。通路に新たな敵が現れる兆候はない。魔族がいなくなったのか、それともあまりの事態にここへ来るのが怖くなったか。


「ティナ、敵の気配は魔王以外にあるのか?」

「あちこちに点在している……けど、放置していいレベルかな」

「主力部隊は全滅したってことか。魔王を倒したらどう動くかわからないし、念のため倒した方がいいのか?」

「対策は立てられるけど」

「……砦全体を結界で覆って退路を塞ぐのか?」


 なんとなく先読みして問い掛けると、ティナはおもむろに片膝をついて右手を床に当てた。


「――紡げ、悠久の世界」


 ズン、と空気が少し重くなった。彼女がよく使用していた結界魔法だ。結界を構築した内外を遮断する。


「うん、これでよし。生き残っている魔族は取りこぼしもないよ」

「なら、魔王を倒すか」


 軽い感じで会話をしながら砦の奥へと向かう。そして両開きの扉に手を掛けて、勢いよく開けた。

 そこにいたのは……玉座に佇む魔王の姿。先ほどの光景は当然、何かしらの手段で見ていたことだろう。周囲にいる配下は既に戦闘態勢に入っており、当の魔王……レゼッドは最大限の警戒を込めて、俺達へ問い掛ける。


「貴様ら……何者だ?」

「通りすがりの剣士と魔法使いだよ」


 レゼッドの顔つきが険しくなる。先ほどまでの惨状を考えると、内心憤慨しているに違いない。とはいえ、俺達の実力を目の当たりにして、怒りを表に出さず警戒している……さて、相手はどう動くのか。

 こちらは沈黙を守って反応を待つ構えでも良かったのだが……、


「あんたに一つ聞きたいことがある。その力、どこかで手に入れてこの砦を拠点に、エリュテ王国へ攻撃しようとしているだろ?」


 ピクリ、と魔王が反応を示す。あの様子だと、配下には元々所持している力だと説明しているのかもしれない。


「その力をどこで手に入れたのか、教えてくれないか?」

「……何を馬鹿なことを言っている? この力は――」

「お前のものじゃないことは、知ってるんだよ」


 強い口調で告げる俺に、魔王は不快感のためかさらに顔を歪ませた。


「まあ馬鹿正直に質問して返ってくるとは思っていないけど……教えてくれれば、比較的穏当な形で終わらせてやるけど」

「……どういう意味だ?」

「正直に話してくれるのなら、少しの痛みで滅ぼしてやろうかと思ったんだが」


 ――その言葉の直後、哄笑が響いた。


「ははははは! 何を言い出すかと思えば……貴様、配下を倒したくらいで私など取るに足らないと思っているな?」


 こちらは何も答えない。すると、魔王レゼッドはゆっくりと立ち上がると、傍らに置いてある剣をつかみ、抜き放った。


「よかろう、ならば教えてやる……貴様らの世迷い言を聞く必要はない。教えてやろう、私の力を!」


 魔力が生まれる。魔王の周囲にいた配下さえ小さく呻き、大きく退くほどの力。

 おそらく、この力を受けたら牢に入れられている精鋭部隊でさえ、心が折れるに違いない……が、俺とティナは別だった。


 なぜなら――こんなものよりも遙かに大きい力と、千年前に出会っている。


「……ティナ、魔王の近くにいる側近と、広間外にいる敵に警戒してくれ」


 念のため、というつもりで指示を出しつつ俺は一歩前に出る。次いで、体に魔力を込める。


 ――魔王が持つ力の大きさは、終焉の魔王本体に対し微々たるもの。だが、相手がその力を所持し世界を破滅へ導こうとしているのであれば、加減はしない。ティナと戦った時と同じように、本気で戦う。


 ギシリ、と大気がきしむような音を上げた。それにより生み出された魔力は、広間を満たす魔王レゼッドと比べたら大したことはない。だが、


「一撃で、終わりしてやろう!」


 魔王が向かってくる。一瞬で間合いに到達し、その腕が――限界まで魔力を収束させた剣が、俺へ向かって振り下ろされた。


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