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\ 自称 / 世界で一番愛らしい弟子っ!  作者: 二木弓いうる
~子供のためのサンタマン編~
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師匠、ババアに押し付ける

「分かった、今すぐボイコットを止めましょう。そうすれば全て解決」

「エトワールはそれで納得するのか?」

「させるんですよ。そのために師匠、サンタマンの居場所を吐けです」

「結局そこに戻るのか……やだよ。教えなくても来年には向こうから来るんだから、大人しくいつも通りに過ごして待て」


マージジルマは万が一来年サンタマンを見るために起きてでもいたら魔法で強制的に寝かせようと思った。

だがピーリカは首を左右に振る。


「エトワールには来年も来ないんでしょう? だったら待ってても意味がないのです」

「エトワールのサンタは死んだって言ったろ」

「えぇ。なのでお墓にご挨拶に行くです。それかせめて他のサンタマンを探して居場所を聞き出したいのですが、それですら難しいでしょう。だからサンタマンと知り合いの師匠に聞き出そうとしたですよ」

「……そういう事か」


子供達の真の目的を知ったマージジルマはこの後どうするかを考える。正直にサンタマンなどいないと言ってしまえば全てが解決するのだが、子供相手にそんな夢のない事を言うほど彼は薄情ではなく。


「サンタはあれだよ、墓とか作んねぇから探しても見つからねぇよ」

「そうでしたか……危うくまた存在しないものを探す所でした。いえ実は知ってたですけどね。ではサンタマンの仲間達を探すしかねぇですね。奴らはどこに住んでるんですか?」

「それは……あれだよ、空の上だよ」

「なら飛んで行くです」

「待て、じゃあ違う。土の中だ」

「じゃあ違うって何なんですか!?」


適当な話で誤魔化しても、そこでボロが出てしまえば結局夢は壊れてしまう。マージジルマは考えながら、優しい嘘を発言していく。


「サンタっていっぱいいるし、空にいたり土の中にいたりするんだよ。あと子供には見えないし、大人としか会話出来ないし。諦めろ」


適当過ぎてむしろ雑になってきた。それでもそんな嘘を信じてしまうくらいには、彼女はまだ幼かった。


「そうでしたね……」

「知ったかぶんなよ」

「ではエトワールには諦めさせ……待てです。会話は出来なくてもサンタマンにわたし達の言葉は聞こえてるですか?」

「まぁ聞こえてはいるんじゃないか、多分」

「分かりました、じゃあエトワールが一方的にお礼を言う事は出来るって訳ですね」

「……サンタは忙しいから、話を聞いてくれる暇なんかねぇよ」

「師匠と喋ったくらいなんですから、エトワールの話を聞く時間だってあるはずです」


もういっそ拘束させようかな、そう思ったマージジルマ。だがピーリカを拘束してすぐ脱走しそうだ。そうも思って。


「……そうだ。ババアも知ってるぞ。サンタの居場所」


全てをマハリクに押し付けた。


「そうなんですか!?」

「あぁ、ババアは長生きしてるだけあってサンタの知り合いもいっぱいいる。俺以上に仲良し。もはや親友」


押し付けた途端マージジルマは生き生きとし始めた。ババアの事は嫌いではないが、なんかムカつく。そう思っていた。


「では早速緑の領土へ戻るです。シチューはちゃんと残しておいてください」

「はいはい。でも今日中に帰って来なかったらお前の分のシチューはラミパスに食わすからな」

「ラミパスちゃんがシチュー食べる訳ないでしょう!」

「じゃあテクマに食わそう」

「なっ、なんで突然真っ白白助が出てくるんですか! 誰にもあげませんよ、わたしのシチューですもん!」

「ならとっととエトワールの事解決させて、早く帰ってこいよ」

「言われずともがな、です。行ってきます!」

「へーへー、いってらっしゃい」


ピーリカは急いで家を飛び出した。


「ラリルレリーラ・ラ・ロリーラ!」


召喚されたのはボロボロのほうき。いつものピーリカなら確実にゴミ呼ばわりして、意地でも乗らなさそうなビジュアル。だが今はそんな事気にせず、そのボロボロのほうきに跨り空を飛んだ。

何が何でも早く帰って来て、師匠と真っ白白助を合わせないようにしなくては。なんて思いながら緑の領土へと向かう。。誰にもあげないのは、シチューだけではない。



 スピードを上げて飛んできたピーリカは、勢いあまって穴の中に突っ込んだ。文字が小さくぶ厚い本を読んでいたエトワールが顔を上げる。


「おやピーリカさん、お帰りなさい」

「た、ただいまですよ」


口調は冷静そうに見えるエトワールだが、少し驚いた表情をしていた。

ピーリカは風圧でボサボサになった髪を手で少し整え、急いでエトワールに説明した。


「エトワール、ボイコットは終わりです!」

「終わり? マージジルマ様がサンタマンの居場所を教えて下さったのですか?」

「空とか土の中とか、語彙力がない師匠の説明は賢いわたしでも理解出来ませんでした。でも安心しろです。ばーさんもサンタマンの居場所を知っているらしいですよ」

「ばーさんって……まさかお師匠様の事でしょうか?」

「それです。ばーさんとサンタマンはとても仲良しらしいですよ」

「そんなお話一度も聞いた事がありませんが……もしや今回亡くなったサンタマンは、お師匠様にとって本当に大切なお友達だったという事でしょうか。私にも何も教えてくれなかったのではなく、思い出すのも辛かったのかもしれません。だからマージジルマ様がお師匠様のせいで、なんて言っていたのでしょうか。だとしたら、そんな悲しい思いをしているお師匠様に対して私ってばなんて無神経な事を!」


知識がありすぎるが故、逆に考えすぎているエトワールはピーリカにとって都合のいい思い込みをし始めた。最も、ピーリカはそんな都合のいい思い込みをされているとは気づいていないけれど。


「それはよく分かんねーですけど、ボイコットは終わりにするです。んで、とっととばーさんに話を聞きに行きましょう」


とにかくピーリカは早く帰りたい。ただそれだけだった。

悲しそうな顔になったエトワールは少し俯き、首を左右に振った。


「いいえ、お師匠様にはもうサンタマンの事はお聞きしません。それにそんな寂しい思いをしていらっしゃるお師匠様を置いて旅に出るのも心苦しいです。お師匠様だってもう一万歳を超えてるお方。いつどうなるか分からないのに、いつ帰って来られるかも分からない旅に出るのはやめます。今でもサンタマンにお礼は言いたいですが、私はそれ以上にお師匠様が大切です。サンタマンだってきっと理解してくれるでしょう。サンタマンには大人になれば会えるかもしれませんし、その時に言う事にします」

「分かりました、じゃあ帰ろうです。送ってやってもいいですよ」


しんみりした様子のエトワールの想いなど気にせず、ピーリカは再びほうきにまたがる。エトワールはピーリカの後ろにまたがり、そっと彼女の肩に手を添える。ふわっ、と浮かび上がったほうき。穴の中を出て、そのまま木の上を飛び越える。少し早めのスピードで、二人は緑の領土の奥へ進む。


 ピーリカ達は家のように窓や扉がついた木が並んでいる場所へたどり着いた。エトワールは中でも一番大きな木を指さした。


「あちらがお師匠様と私が住んでいる家になります」

「ふむ。前にもチラッと見た事があったですけど、面白い形の家ですね」

「はい。緑の領土伝統の造りをした家です。ピーリカさんも将来いかがですか」

「わたしは多分一生あのボロ家に住むので、師匠の意見も聞いてやってからにするです。わたしってば心が広い」

「一生あの家って、ピーリカさん一生弟子でいるおつもりなんですか?」

「そんな訳ないでしょう、わたしは天才ですから。いつまでも弟子でいるはずがないのです」

「では何故一生マージジルマ様の家に住むとおっしゃるのですか?」


エトワールは賢くはあるものの、自身が恋をした事はまだなく。ピーリカのマージジルマに対する想いも分かっていない。よく懐いてるな、くらいに思っている。

ピーリカはその点においてはエトワールよりほんの少し大人だった。


「そりゃほら、あるじゃないですか……お嫁さん、とか」

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