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\ 自称 / 世界で一番愛らしい弟子っ!  作者: 二木弓いうる
~チョコレート・クライシス編~
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弟子、飛ぶ

ピーリカの行く手を、別のロボットが阻んだ。その間にピピルピを連れたロボットは海の上を飛び始める。


「邪魔するなです、バカ!」


ロボットに対して罵倒をするも大して意味はない。

グワッっと、両手を広げピーリカを襲おうとしているロボット。

そんなロボットに、巨大な手の形をした炎が殴りかかる。殴られたロボットはガガガっ、と音を出し、動きを止める。


「大丈夫かピーリカ」

「おぉ黒マスク。大丈夫ですけど、痴女が誘拐されてるです。あんな変態連れ去ってどうする気なんでしょう」

「ピピルピの、桃の魔法が狙いかもしれない。あの魔法は桃の民族が使ってるからこそエロのための魔法にしかなってないけど、広い目で見たらどんな人間でも操れる魔法だ。バルス公国にとってはカタブラ国支配するのにすごい便利な魔法になるから」

「変態のくせに実は強いとかズルくないですか?」

「変態だけども連れて行かれたらマズいの。行くぞ、レルルロローラ・レ・ルリーラ!」


シャバが呪文を唱えた瞬間、巨大な炎の手が海面に突っ込む。

一部の水が蒸発し、海に一本の道が出来る。魚が跳ねて、湿った砂も表に出てきた。

シャバとピーリカは海の間に出来た道を走りピピルピを連れたロボットを追いかけるも。ロボットはこちらの事など一切気にせず空高く飛んで行ってしまっている。


「ラリルレリーラ・ロ・ロローラ!」


ピーリカは走りながら両腕を前に伸ばし、間違った呪文を唱えた。

ロボットの額部分から大きな花が咲いた。以上。


「と、突然変異なのです!」


咲かせるつもりもなかったが、失敗したと認めたくもなかったので誤魔化したピーリカ。

だが不幸中の幸いと呼んでいいのか、彼女の出した花はロボットのプロペラ部分に絡まり、ゆっくりと降下してきている。


「ピーリカ偉い!」


ピーリカを褒めたシャバは狙いを定めて、高くジャンプ。一気にロボットとピピルピに近づいた。


「レルルロローラ・レ・ルリーラぁっ」


ロボットの顔面に当てられる、小さな炎の拳。ロボットはバランスを崩し、ピピルピを離し海へと落ちる。

共に落ちそうになった彼女を抱きしめたシャバは、道の上へ着地する。

ピピルピはシャバの体を触りまくった。


「はっきりお顔が見えないのだけれど、この胸板にこの背中。分かったわ、シーちゃんね」

「そうだけどさ、もうちょっと危機感持ってもいいと思うんだよピピルピ。怖かったとかないの?」

「あら。だってシーちゃん言ったじゃない。何があっても守ってくれるって」

「オレそんな事言ったっけか……まぁ、守るけどさ」


その言葉を聞いて、ピピルピはにっこり笑った。

対してピーリカは地団駄を踏んだ。


「イチャついてる場合じゃねーのです。とっととロボット倒すですよ!」

「あらピーちゃん、やきもち?」

「違う!」


岸へ戻る三人。まだまだロボットの数は多い。各魔法使い達が攻撃しているも、圧されている。中には怪我をし、端の岩場で手当を受けている者もいた。

シャバはピピルピを岩場へ連れて行き、手当を施している赤の民族の女へ寄りかからせた。


「ほらピピルピ。ちょっと休んでな」


ピピルピは少しだけ顔を俯かせて。悲しそうな顔をしている。


「怪我人の手当しようと思ったのに、私が怪我人になっちゃったわねぇ。役立たずの上に怪我なんてしちゃって、代表として恥ずかしいというか、申し訳ないわぁ」

「ピピルピにもそんな感情あったのか」

「失礼しちゃう」

「じょうだ……レルルロローラ・レ・ルリーラ!」


視界を奪われているピピルピは、ただ自分の背後で機械が砂上に倒れた音と熱気だけを感じていた。


「シーちゃん、また守ってくれたの」

「いつまでも何度でも。けど安全な方が良いから、ここは逃げといて。気にするなよ。出来る時に出来る事をすれば良いから。ピーリカもここにいてくれ」


シャバはピーリカに大人しく待っているよう伝えたつもりだった。だがピーリカはここを守るように言われたと思い込んでいる。

ピピルピを支えていた女にアイコンタクトを取り、シャバはその場を離れた。


「シーちゃん……シーちゃん?」


視界を奪われたピピルピはシャバが離れてない事に気づいていない。

手当をしていた女はそっと、ピピルピの肩に腕を回した。


「大丈夫ですかピピルピ様」

「その声はシーちゃんの部下の子ね? 今貴女のかわいいお顔がはっきり見えないのよ。悲しい」

「目をやられたのですね。急いで医者に見せましょう」

「……そうね。このままだと視姦もできないものね」

「それは回復してもやらなくていいです」


ピピルピを背負い、ピーリカに手を差し伸べる部下の女。


「ピーリカ嬢、危ないから。一緒においで」

「いえ、わたしは大事な戦力ですから。素晴らしい魔法を使って差し上げましょう。ラリルレリーロ・ラ・ロリーレ!」


間違った呪文を唱えたピーリカの足元に浮かび上がった魔法陣。その瞬間、ピーリカの体が勢いよく浮き上がった。


「うわーっ!」


そして黒の領土の方へと飛んでいく。一部始終を見ていた女は声を上げた。


「大変です! ピーリカ嬢が勝手に魔法使って勝手にどっか吹っ飛んで行きました!」

「ピーリカぁ……!」


次々と襲い掛かってくるロボットを殴っていたシャバが、どこに飛んで行ったかも分からないピーリカを助けに行く事は難しかった。



          ***

 


 ピーリカは黒の領土の、自分の家の前へと顔面から落ちた。顔以外にもあちこちに擦り傷を作って「かわいそう」と呟き自身の頬を撫でた。


「何故ここへ……まぁ良いでしょう、早く戻るです」


バサバサと聞こえてきた翼の音。見れば器用に玄関の扉を嘴で開き、ピーリカの元へ飛んできた白フクロウ。


「ラミパスちゃん? ダメじゃないですか、師匠を見てるように頼んだでしょう」


その時だ。


ドカァアアアアアアアアン!


「なーっ!?」


大きな音を上げて、そこら一体に土が散らばる。マージジルマお手製の畑が爆発によって消滅した。

地面に大きく開いた穴。ピーリカはその中を覗き込んだ。


「師匠がお金の次に大事だって言ってる畑が! 一体どうし、て……」


彼女の目に映ったのは、機械を背負ったシャマクに首を絞められているマージジルマの姿。彼は薄目を開けて、自身の首を掴んでいる両手を外そうとしていた。

目と目が合うピーリカとシャマク。


「何してるですか貴様!」

「またお主か。まぁいい、そこで見ていろ。師匠が朽ちるのをな」

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